186.冬の天気予報

 天気予報を見ていると、やれ不快指数だの洗濯指標だの紫外線予想だのと続いたあと、最後にはおよそ今日の生活には関係なさそうな世界の天気なんてのまで出てくる。
 ぼくはそれをぼんやり眺めながら「シカゴは晴れで気温は4度か。あそこは寒い土地だからなぁ。シカゴの伯父さん、元気かな」なんて思ったりするのが好きだ(そんな親戚がいればの話だが)。

 天気予報というのは、基本的には晴れ・雨・くもりの三つの手駒しかない。春夏秋はこれだけ。バリエーションが少なすぎる。視聴者が退屈する。そこで、あんなにいろんな項目が開発された、とぼくは見ている。
 しかし、冬になるとそこへ雪が加わるのだ。あの雪だるまマークの表示で、天気予報の画面は一気に賑やかになる。雪は、みぞれ・あられ、という子分まで連れている。そしてそのバックには「シベリヤ寒気団」が控えている。この、いかにも寒そうなネーミング! シベリヤは「しばれる」に通じ(そう思うのはぼくだけか?)、しかもそれが単独ではなく「団」なのだ。寒気が団体でやってくる! あぁ、白くたちのぼる冷気の中、無言でズンズンと進軍してくる全身黒装束のシベリヤ寒気団員たちの群れが見えるようだ。
 このように、冬の天気予報は選択肢が増えるので、もう視聴者を退屈させない。きっと関係者は、「やっと、手駒が三つしかなくて苦しかった長い、冬の時代が終わった」
 と喜んでいることだろう(これからが冬なんだって!)。

【モンダイ点】
◎天気予報をよく見るくせに、家にビニール傘があふれているのはなぜだ?

(2001/12/5)

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