もんじゃのマサ

『一芸を究めない』という本に入れるつもりだったがページの関係で入れられなかった原稿を、いくつかUPしている。
これを書いたのはだいぶ前だが、そのあとでコロナ禍になってしまった。なので、新年会はその後一度も実施されていない。

もんじゃのマサ
 
オードリーの若林さんが、
「このチームは、『なにか作業のある店』の方がいい」
と言ったことから、私はある発見をした。

番組で、忘年会や新年会をやることがある。景気がよかった頃は、ビンゴ大会で豪華景品が当たる盛大なケースもあった。が、最近はあまり聞かない。まあ、私が景気のいい番組に加わっていないだけかもしれないけど。

しかし放送業界の場合、年末は特番や年末進行の録り溜めで忙しく、忘年会なんかやってる場合じゃない。なので、新年会の方が多いかもしれない。
それにしたって、世間よりだいぶ遅い時期に「いまさら新年会?」というスケジュールで行われることも多い。まあ、この業界、「遅い夏休み」という名目で十一月くらいに休む人もいるので、それはどうってことはない。

私が担当しているオードリーのオールナイトニッポンも、「新年会」を行う。ただし、その「新年ぶり」がひどく、毎年とても遅い。三月や、ひどい場合は桜の季節も終わって、「新年度会」みたいになって開く。
ある年、その席で若林さんが、
「このチームは、『なにか作業のある店』の方がいい」
と言ったのだ。
どういうことか?

世間の人はおそらく、
「放送業界の宴会というのは、座持ちがよく、盛り上げ上手な人たちが多く、みんなでワイワイやってるんだろう。ましてや芸人さんが参加してるんだから」
と思っているだろう。実際、そういうケースの方が多い。

ところが、この番組の場合はまるでそうではない。宴会を開いても、座持ちのトークがない。そういう点では、若林さんも春日さんも芸人らしからぬところがあって、私はそれが好きなのだ。二人に限らずだが、私は芸人さんは宴会で無理に盛り上げ役をしなくてもいいと思っている。
ならば、スタッフが盛り上げトークをするのが普通だ。ところがこの番組のスタッフもそういうのが苦手で、メンドクサイときている。

私は「ザ・業界」みたいなパーティーや宴会が苦手で、だからその手の会には滅多に出ない。なのにオードリーのオールナイトニッポンの新年会に毎年参加しているのは、「そういう宴会ではない」からだ。
とはいえ、あまりに静かでみんなが言葉少ない宴会というのは(参加者がそれで満足しているとはいえ)、いささか不気味だ。お通夜じゃないんだから。
さすがに見かねた若林さんからの、
「このチームは、『なにか作業のある店』の方がいい」
という提案なのだ。

そこで選んだのが、「お好み焼き・もんじゃ焼き」のお店。これなら、みんなが鉄板とヘラでカチャカチャして、ジュウジュウやって、ソースを塗ったり、混ぜたりして、ひっくり返す作業があり、失敗もしたりして、切り分けて……と作業が多く、派手な音もする。
静かな私たちでも、なんとなく盛り上がっている雰囲気は作り出せるんじゃないか、というわけだ。

***

ある年の新年会。ここでもんじゃ焼きを食べて、私はビックリした。

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