121.しばらくお待ち下さい

 ある年齢以上の方なら記憶があると思うが、子供のころ楽しく見ていたテレビの映像が突然ストップし、
「しばらくお待ち下さい」
 という、動かない一枚の画面になってしまうことがあった。
 昔はまだ送信設備が安定していなかったからだろう。なんらかの機械トラブルでテレビ映像がとぎれてしまうことがたまにあったのだ。その場合が「しばらくお待ち下さい」であり、あるいはテストパターンのカラーバーになることもあった。
 あ、いま思い出した。映像は「しばらくお待ち下さい」だが、なぜか音声だけはちゃんと届いている場合もあったぞ。
 時間にすれば数秒から、せいぜい長くて数十秒だろうと思う。みんな素直に、しばらく待っていたのだから世の中ものんびりしたものだった。
 今となればそんな部分が人間臭くて、懐かしい。だから、現在でもたまには映像が切れて「しばらくお待ち下さい」になってみるのもいいかな、なんて思ったりもする。

 そんなことを思い出したのは、パソコンで仕事をしていた時だ。
 すべての機械技術は進歩する。手動だった調整は自動になり、不安定だったものは安定する。おそらく、パソコンもあと十年もしたら、
「そういや最近『予期せぬ問題がおこりました。再起動して下さい』というメッセージを見かけなくなったなぁ」
 なんてことになるんだろう。
 あぁ、こっちの方は別に人間臭くなくてもいいから、早くそうなって欲しいものだ。

【モンダイ点】
◎今テレビで「しばらくお待ち下さい」をやると、何があったんだ? という好奇心で視聴率が上がるんじゃないだろうか。

(ステラ/2000/8/23)

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