95.穏やかな改善

 ご存知のように、現在日本の景気はあんまりよくない。ちょっとはよくなったんじゃないか、と言われつつもやっぱりよくない、けど少しはよくなってるのか? ……という、なんだかわからない状態。
 経済企画庁が出す経済報告というのがあって、去年一年間のそれは、まさにそういった現実を表していた。

99年年初「変化の胎動」
99年春「下げ止まり」
99年夏「やや改善」
99年秋冬「穏やかな改善」

 さすが作家の堺屋太一長官。たいして進展のない状態を、手を変え品を変え、いかにも前進をしているかのように表現している。たいしたもんだ。
 この手は使える。たとえば、学生なら。

――ちゃんと勉強してるのか?
「いま変化の胎動が感じられる」
――成績が上がらないじゃないか!
「ここが下げ止まりです」
――やる気あんのか?
「やや改善しています」

 ぼくの仕事にも使えるぞ。
――藤井さん、アイデア出ました?
「変化の胎動を感じている所です」
――このままじゃ締切りに間に合わない!
「ご心配なく。やや改善しています」
――本当に進んでるんですか?
「穏やかな改善をしています」

 次はどう言ってくれるのかと期待していたが、先日ニュースで発表されたのは、
2000年初「穏やかな改善が続いている」
 工夫がないぞ、堺屋長官。ただ「続いている」をつけただけじゃないか。ぼくの締切り逃れの言い訳のためにも、他のあいまいな表現を発明してくれ!

【モンダイ点】
◎「やや」と「穏やかな」では、どっちの方がより改善してるんだ?

(ステラ/2000/2/17)

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