120.結局海に入れませんでした

 いま、沖縄に来てこの原稿を書いている。
「うらやましい!」
 と思うかもしれないが、そうじゃない。この号が出るころにはもう終わっているが、沖縄サミットの取材で来ているのだ。仕事、仕事。

 これまでバラエティーだ、ドラマだという番組はさんざん書いてきたが、今回はじめて本格的に報道といっしょに仕事をしている。これが大変なんですね。
 いちばん意外だったのが、「現場には情報がない」ということ。朝早くからあちこちを取材してまわっていると、もうそれだけで手いっぱい。いま世間で何がおきているのか、ほかの現場ではどんなことがあったのか……ということがわからない。
 天下のテレビ局の報道クルーに同行しているのだから、何か最新の情報機械が装備されているんだろうと思っていたが、とんでもない。我々の行動原理は、
「とりあえず現場に行ってみよう」
「とりあえず相手と交渉してみよう」
「とりあえず電話してみよう」
 ……の、とりあえず主義。やみくも方式。いきあたりばったりシステム。
 あとでテレビとか新聞を見て「え? そんなことがおきてたのか」と驚く始末だ。

 世間はIT革命だなんだと騒いでいるけど、結局のところ情報の一番はしっこは、こんなふうに人間臭いやりとりなんだなあ……と、まだ一度も入ってない青く美しい沖縄の海を見やりながら、珍しく感慨にふけるのでありました。

【モンダイ点】
◎これで東京に帰ると「沖縄に行ってたんだって? いいねえ、楽しそうで」と言われるんだろうなあ。

(ステラ/2000/8/9)

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