女神のスプリンター

最近読んだエロコメディ略してエロコメのタイトルの中のひとつ『女神のスプリンター』というコミックが結構面白かった。

かつてのトップアスリートにして主人公の兄貴の嫁が、『マスをかくと血中のテストホルモンが減少するためオナ禁が必要だが、オナ禁を9日以上続けると今度はテストホルモン濃度が減少してしまう。そのためアスリートは9日周期でのオナ禁をすることが望ましい(なお9日周期なので9日目には抜く)』みたいな超理論のもと、陸上コーチとして高校陸上選手である主人公の射精管理をすることになった、みたいな話。

この作品のエロチカポイントは、オナ禁中にテストステロンを分泌させるためには性的興奮をあおる必要があるという理屈のもと、この超絶美人のコーチが主人公に見せつけオナニーをしてきたり、全裸になって足コキ寸止めをしてきたりするため主人公は辛抱たまらんみたいな感じになるところと、9日目の強制射精日の描写。ちなみになぜ足コキなのかというと、主人公の兄貴の嫁は本人自身が元陸上選手なので足のフォルムがよく、その都合も相まって足主体のフェチズムで主人公を開発する計画を立てているため。こういった行動は一般的にいってある種の浮気なので、旦那にバレたときヤバいことになると思うのだが、かつ兄貴は海外赴任しているという設定のため修羅場はまぬがれてるみたいな感じ。

 このコーチ役の兄の嫁の行動は完璧に痴女だが、しかし彼女はストイックなアスリート痴女なので、主人公を鍛えるためには自分も鍛える必要がある(そして鍛え上げた肉体を主人公のズリネタとして提供するのだ)みたいな使命感に満ちたマインドで山籠もりし、出会った野生の熊と命をかけたランニング勝負みたいなことまでする。普通に考えるとやってることはギャグであり、この設定をギャグな雰囲気で表現するか、真面目な感じで表現するかという二択があったと思うのだが、『女神のスプリンター』は真面目な感じで表現されている。この作品のクリエイターは、原作者と原画家に分かれており、おそらく、原作者としてはギャグっぽいテイストも視野に入れてネームを書いていたのだろうが、それをコミックとして絵にするにあたって、真面目テイストでやろう、という方針に落ち着いたのだと思う。なにせ絵がめちゃくちゃうまいので、真面目テイストでも違和感なく読める説得力がある。

ちなみに、『女神のスプリンター』は、表紙が超キレイだから買った。そのあとで、原作者に原田重光がクレジットされてることに気づいた。原田重光の作品は、ユリア100式とかゆりきゃん!とかの作品を過去に読んだことがあるから読み方が分かる。

具体的にいうと、以下のような感じ。

・物語の中心に、長期的に解決されるストーリーがある。巻数を追うごとに何かしらの真実が少しづつ提示されてゆき、最終的に真実が解決される。

・各作品ごとにテーマがある。たとえばユリア100式ではダッチワイフ、ゆりきゃんでは上流階級+同性愛、女神のスプリンターでは陸上競技。

・作品のテーマの関連情報に関してはかなりしっかりリサーチされており、ディテールがしっかりしてる。

・話は基本的に一話完結型で、各話ごとにテーマの一側面(サブジャンル)について扱う

・作画担当の作風によってギャグマンガになるかどうかが決まるっぽい。ユリア100式はノリがギャグマンガテイストだったが、女神のスプリンターではあまりギャグっぽいテイストは出ていない。かろちーという作画の人の絵が超激うまなせいもあり、ユリア100式のようなノリは出ないのだろう。

『女神のスプリンター』を読んでくと、主人公はオナ禁の結果、血中テストホルモン濃度増加のほかにモテフェロモン分泌能力を獲得し、はじめは超ストイックな態度で厳格に射精管理をやっていた鬼コーチが、このフェロモンに当てられて次第にエッチな感じになっていく。みたいな過程がある。そういうありがちな寝取られツンデレみたいな感じの展開が、すげーベタなのに絵がめちゃくちゃうまいせいか、全然新鮮に感じられたのが面白かったし、この、オナ禁→モテホルモン分泌→ハーレム状態(→射精するとフェロモン濃度が下がるためハーレム解除) というコンボは『アマダスの魔女』でも似たような描写があったので、密かに最近のトレンドなのかなとも思った。


あと、記事の構成を途中で変えたので、最初冒頭に書いてた以下の文章が余った。

エロコメの面白さの基準についてだが、読んだときに共感性羞恥を覚えなければ面白い作品として認識できる。共感性羞恥が発動するトリガー自体は不明確だが、経験的に、作者の意図が自分の価値観から大きくズレてると共感性羞恥が発動するっぽい。たとえば自分は『未成年のヒーローが自分を犠牲にして献身的に世界を救う』みたいな話が苦手なのだが、その理由として『未成年の仕事は世界を救うことではなく学校に行って勉強すべき。趣味で世界を救うならいいけど、精神状態に障害が出るくらい献身的に世界を救うのは間違い』という意識が自分の中にある。なので、未成年のヒーローが悲痛な感じで世界を救おうとしている作品を見ると、『思想性が痛々しくてやだ』という感じになり、それが共感性羞恥のトリガーになる。しかしよくよく考えると、コミックで読んだ鬼滅の刃は未成年が悲痛な感じで世界を救う話だったのに共感性羞恥は感じなかったな。なので共感性羞恥には別トリガーもあるっぽい。

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