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試写会レポート『インスペクション』(登壇:映画ライター/よしひろまさみち氏他)

※本記事は2023年7月に参加した試写会レポートです。
※試写会では作品紹介や制作エピソードがたくさん書かれた制作資料も配布されたので併せて紹介します。

あらすじ

あらすじ:ゲイであることで母に捨てられ、16歳から10年間ホームレス生活を送っていたフレンチは、自らの存在意義を追い求め、海兵隊への入隊を志願する。だが、訓練初日から教官の過酷なしごきに遭い、さらにゲイであることが周囲に知れ渡るや否や激しい差別にさらされてしまう……。(引用:filmarks

アフタートーク

トークゲストは、よしひろまさみち氏(映画ライター)、奥浜レイラ氏(映画・音楽パーソナリティ)でした。アフタートークのなかではアメリカに根付いている価値観や文化についてメインで語れ、映画への理解が深まる話が多く聞けました。以下、アフタートークの内容です。

アメリカの文化形成

アメリカでは、それぞれの文化が特定のエリアで発展していく特徴がある。例えば移民であれば『チャイナタウン』『コリアンタウン』のように、そのエリアのなかで発展していく。セクシャルマイノリティに対しても同様で、特定の地域に例えば『ゲイタウン』と呼ばれるエリアがあって、BARなどにいくとむしろノンケの人のほうが珍しかったりする。逆に言えばものすごく保守的、伝統的なエリアもある。

LGBTQの最大の雇用先

LGBTQにとってアメリカの軍隊は最大の雇用先と言われている。それはLGBTQへの差別や偏見などで雇用先に困窮することが多いためである。

アメリカ軍の歴史

アメリカでは、同性愛者の入隊が禁止(※映画でも同性愛者ではないか?という問いがある)されていたが、時代とととに緩和されていき、のちにDADTが定められた。DADTとは『Don't Ask,Don't tell』の略で、同性愛者について聞かない・言わないというもの。LGBTQを公言しなければ容認する、という規程になる。

監督の経歴

この映画は監督の実体験がベースとなっていて、ほとんどが実話であるとのこと。少し違っているのは母親から家を追い出されたわけではなく、母親と折り合いが悪くて監督自身が家を飛び出したということ。10代の頃の監督は、高い美術本を盗んでは転売してお金を得ていたらしく、転売する前に美術本を読んで学び、それが後に映像関係の仕事をするときに役立ったと語っているそう。

監督とプロデューサー

本作のプロデューサーは、監督のパートナー(※同性の配偶者)が担っている。

監督と母親

今回の映画化にあたって、母親の好きな女優さんに''母親役''をオファーすることで、母親にこの作品を観てもらえるんじゃないかと思った。残念ながら母親はこの映画が完成する前に亡くなってしまったが、母親が監督のメディア記事などを集めていたことが亡くなったあとの遺品整理で判明した。なので母親は息子(監督)に対して愛情がなかったわけじゃないけど、どうしても受け入れられない部分があったのかもしれない。

A24

A24の幹部たちはメディアに出ることがほとんどなく、日本の取材でも『顔出しなし』『記事は日本語のみ(英訳しない)』などが条件に挙げられ、ようやくほんの少しのインタビューが叶ったという逸話があるらしい。ここまで徹底して身バレを防いでいる理由は不明で、すごく謎めいてます。


※ここから先は試写会で配布された制作資料からの抜粋になります。

引用:公式サイト

配布資料からの抜粋

監督のホームレス時代

16才から25才までホームレス生活をしていた。ホームレスの仲間たちは若くして亡くなったり、刑務所に入ったりして、自分も黒人でゲイ(※つまり監督も同じ属性)の彼らと同じ道を辿るに違いないと思っていたし、自分には何も価値がないと思っていた。

映画の成り立ち

最初に脚本を書いたのは2017年。A24に勤めていた友人に見せたが映画化の答えはNOだった。その後、脚本を練り直したり、5年くらいかけて映画関係者に売り込みをして、ようやく念願の映画化に至った。

撮影期間

撮影場所はミシシッピ州、撮影期間はわずか19日。毎日気温が40℃くらいの猛暑で倒れる人がいたり、コロナ禍で撮影が中止になるなど大変なことだらけだった。

アメリカ軍と性的マイノリティの歴史

アメリカでは、同性愛者の入隊が禁止(※映画でも同性愛者ではないか?という問いがある)されていたが、1992年にクリントン大統領が同性愛者による服務禁止を撤廃すると公約したが、軍の幹部などから反対の声があがり、結果としてDADTが定められた。DADTとは『Don't Ask,Don't tell』の略で、同性愛者について聞かない・言わないというもの。LGBTQを公言しなければ容認する、という苦肉の策でもある。その後、オバマ大統領がDADTを撤廃しLGBTQへの配慮を見せたが、次のトランプ大統領では再びLGBTQの入隊を禁止し、さらにバイデン大統領が再びオバマ同様、LGBTQを容認するなど、時の大統領によって一転二転している。なお、アメリカ軍には約1万5000人のLGBTQが所属していると言われている。

この作品をきっかけに、アメリカでのLGBTの扱いを知り、色々と考えさせられました。こうした背景を知っていたほうが本編も理解しやすいかもしれません。

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