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レッズレディース三題        その二 遠藤による清家貴子の変化

 高橋はなの負傷を知って「なんでセンターバックばかり…」と思った人は多いだろう。
 レッズレディースのセンターバックは、元日本女子代表の長船加奈が中心だったが、昨年8月に負傷し長期離脱中。昨季は南萌華と高橋はながDFラインの真ん中を務めていたが、その南が欧州へ移籍。今季は新人の石川璃音が早くも定位置を得ているが、今度は高橋はなが日本女子代表参加中に負傷離脱してしまい、12月3日の大宮戦は誰が石川の相棒になるのだろうかと思っていた。

 大宮戦当日のスタメンを見ると安藤梢。驚きはしなかった。昨季、チーム事情で初めてのボランチを見事に務めた安藤。センターバックもできないはずはないと思っていたからだ。しかも、困っている監督に「私やりましょうか?」と志願したというから恐れ入る。これで両サイドバックをやればフィールドプレーヤーのポジションはコンプリートするな。

 実は密かにセンターバックに入るかな、と思っていた選手がいる。大宮戦のあと、本人に質問してみた。

 監督に言わなかったの? 「わたし、ユースまでセンターバックもやってました」って。

 すると清家貴子は人差し指を口の前に立てて
「隠れてました(笑)」。

 清家はジュニアユース、ユース時代、センターバックで先発して、点が必要な展開になるとFWにポジションチェンジすることが多かった。FWに上がったときは、スピードとシュート力を生かして、かなりの確率で得点していたので、この選手はどっちが向いているんだろう、と思ったものだ。年齢が上がるにつれて、FWでプレーすることが多くなったが、なでしこリーグではどう使われるのか楽しみだった。

 昇格後は前めのポジションで出場していたが、昨季までは右サイドバックでの出場が続いていた。チーム事情による起用だったが、持ち前のスピードを生かして、簡単に相手DFを抜き去りチャンスを作る場面を1試合に何回も見せてくれ、そこから味方のゴールにつなげていた。中継のアナウンサーが「右サイドバックが本職の清家が今日はFWで先発しています」と言うのを聞いて、おいおい、と突っ込みたくなったが、確かに右サイドバックが長かったし、それで成功しているのだから「本職」と言われても仕方ないと思った。

 だが若いころ、かなり長い間センターバックをやっていたことを知る人は少ないだろう。大宮戦で起用されたら安藤以上に驚かれたのではないだろうか。
「もしかして、(自分に回って)来るかな、と思ったんですが、梢さんがやってくれたので…」と、点を取りたい清家は安藤のように志願してセンターバックをやるにはまだ早いようだ。

「その1」で書いたように、遠藤優が右サイドバックに定着することで、清家はFWまたは左サイドハーフに回ることになる。右サイドバックと左サイドハーフ、どちらがいいのか聞くと
「右の方が慣れた景色なんですけど、監督には左から行って右で(シュートを)打ってくれと言われてます」

 そうなのだ。右サイドバックだとクロスには良いがシュートを右足で打つと角度が難しくなる。2月のWEリーグカップ決勝では、左サイドで先発し、見事右足でゴールを決めて0-3から追いつく反撃の狼煙を上げた。相手守備陣にとってやっかいな存在になることは間違いないだろう。

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