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【英語】PIP

今日ご紹介するビジネス英語は、"PIP"(読みは「ピー・アイ・ピー」)。

これは、"Performance Improvement Program"(「パフォーマンス・インプルーブメント・プログラム」=「業績改善プログラム」)、または、"Performance Improvement Plan"(「パフォーマンス・インプルーブメント・プラン」=「業績改善計画」)というフレーズの略語だ。

これは、外資系企業でよく用いられる人事に関する手法で、業績の良くない従業員に対し、一定の期限を設けて集中して業績改善を促すプロセスだ。私の知る限り、大変多くの外資系企業において導入されている。

このPIPは、次のような要素で構成されていることが多い。

①目標とアクションプランの設定:従業員の問題点を特定し、その問題点を改善するための具体的な目標やアクションプランを、期限(通常は数か月程度)を区切って設定する。これを、従業員の上司(多くの場合人事部も含め)合意する。

②面談:上記で設定した目標やアクションプランに関して、上司と部下(人事部が入ることもある)が期間内に定期的に面談を行い、フィードバックや指導を行う。

③評価:上記の評価を受けて、会社として、当該従業員に対する対策を検討する。

多くの外資系企業の人事部では、PIPに関する内規を持っている。しかし、大部分の従業員に関しては、このPIPが発動されることは、ほとんどない。PIPが発動されるのは、会社が、特定の従業員の業績が悪く、改善が困難であり、特別に集中して改善に取り組む必要があると考える場合に限られる。そして、通常は、限られたメンバー(対象従業員と、そのラインの上司たち、人事部の担当者など)の間で静かに秘密裡に進められ、他の同僚などに共有されることはない。だから、外資系企業に勤めていても、通常は、PIPに関わることはないし、同僚に対してPIPが行われるていることを知ることもない。

PIPの結果、業績が改善され、従前どおり同じ業務に従事できれば、結果オーライだ。しかし、PIPを発動しても、業績が改善されなかったという結果に終わる場合は多い。そのようなときにどういう対処がなされるかについては、対象従業員、上司、人事部にとって、大きな問題となる。たとえば、対象従業員の配置換えなどが行われることもある。現状の業務よりも、より難度の低い業務が与えられ、降格を伴うこともある。そして、最も深刻な場合は、解雇だろう。

従業員の降格や解雇は、法的トラブルにつながりうる深刻な問題だ。一般的に、日本の労働法は、米国の労働法などと異なり、労働者の保護が手厚いと言われている。とりわけ解雇については慎重で、労働契約法16条は、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と定めている。実際の裁判例でも、PIPの結果に基づき従業員を解雇したところ、解雇が無効とされたものがあるようだ。そして、PIPにまつわる会社の対応が裁判で争われると、従業員にとっても、上司や会社にとっても、金銭面でも精神面でも、とてつもなく大きな負担となる。

あなたが業績不振の部下を持つ上司である場合や、PIPを指導する人事部の担当者である場合、PIPを適用する場合には、きわめて慎重に行う必要があると覚悟したほうがよい。特に、目標やアクションプランの設定にあたっては、達成不可能な計画を作らないことが肝要だ。そして、達成度合いについて、定期的な面談などにおいて詳細に従業員にフィードバックし、詳細な面談記録を残しておくことが重要だ。

逆に、あなたが従業員の立場で、PIPを適用されるとなると、PIPの成否が、今後、勤務先での働き方に大きな影響を及ぼすと認識したほうがよい。PIPの策定や実施にあたり、到底達成不可能な業績目標を設定されたり、見当違いの評価をされていると感じる場合には、労働基準監督署や、弁護士に相談することを検討したほうがよいかもしれない。

本記事の読者の方が、PIPとは無縁の生活を送られることを祈っているが、もし「PIP」という言葉を耳にしたり、このプロセスに関与することになったときには、この記事を思い出していただければ幸いだ。もし当事者になってしまった場合には、是非とも、慎重に臨んでいただければと思う。

ご参考になれば幸いです!

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