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150歳でようやく大人!? 戦国時代から生きているサメもいる

サメマニアの「めかぶ」(@shark0037)さんが、全身全霊をささげて描いたサメ図鑑『世界のサメ大全』ができました。125種のサメをすべてイラストで解説していて、 サメ雑学も満載の一冊です。この連載では、その中から選りすぐりのサメを1匹ずつ紹介していきます。第2回目は、超長寿のサメ、ニシオンデンザメを紹介します。

提供:SBクリエイティブ

ニシオンデンザメ

チャームポイントは目から飛び出た寄生虫?

 ニシオンデンザメは、水温0.6~12℃の寒冷な海域に生息する。「世界で最も泳ぐのが遅いサメ」とされており、最高速度は時速2kmほど。極寒の海で生きているので、筋肉を早く動かすことが難しいと考えられている。

 寄生虫が目に寄生していることが多く、ほとんどの個体は片目または両目を失明している。獲物をおびき寄せるために、光る寄生虫に寄生させているのではないか、ともいわれている。

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めかぶのヒトコト
「推定500歳以上のニシオンデンザメ発見」の記事に無限の可能性と神秘を感じる。織田信長(1534年~1582年)もびっくりだろう。

こぼれ話
貪欲で大食らい。胃の中からトナカイやホッキョクグマの骨も見つかっている。長寿で、成魚になるまでに150年ほどかかり、400歳ほど生きる。

■DATA
ツノザメ目オンデンザメ科
学名:Somniosus microcephalus
全長:5.5~6.5mほど。最大で7mになることもある
捕食:硬骨魚類、頭足類、軟骨魚類、哺乳類、鳥類など
繁殖:卵黄依存型の胎生。約10 匹ほどの仔を産む

大陸棚と水深2200m までの大陸斜面
大西洋北部、北極海など

【サメ雑学】サメは「海の絶対王者」ではない

「サメ」は海洋生物の頂点に君臨する「絶対王者」と思うかもしれないが、サメにも天敵が存在する。サメは食物連鎖の「海のピラミッド」の上位ではあるが、頂点ではない。

 頂点はシャチだからだ。

 シャチは知能が高く、泳ぎも速い。また、高い攻撃性を持ち、群れをなして狩りを行うため、サメの王者ホホジロザメでもシャチにはかなわない。筋肉質な肉や脂肪分の多い肝臓を持つ大型のサメは、シャチにとって「ごちそう」なのである。

 サメには内臓を守る肋骨がないので、シャチに体当たりされると内臓が破裂し、死ぬこともある。サメは一度ひっくり返ると、しばらく動けないことがあるが、シャチはそれを知っていて、この弱点を狙われることもある。

 米国カリフォルニア州の沖にあるファラロン諸島の近辺では、ホホジロザメを「ビーチボール」のように投げて弱らせた後に捕食するシャチが確認されている。

 まったく、「食うか、食われるか」という弱肉強食の世界である。ちなみに、大型のサメは中型や小型のサメを捕食する。

 シャチを超えるサメの天敵は人だ。サメは、漁のときに混獲されてしまうことがあるが、サメを狙った乱獲も相次いでおり、多くのサメはレッドリスト(絶滅のおそれのある野生生物の種のリスト)に載っている。サメは約600種類いるが、人を襲う危険種とされているのはその1割以下でしかない。サメに襲われる人よりも、人に殺されているサメの数のほうが圧倒的に多いのである。

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著者:めかぶ
大阪府出身。奈良芸術短期大学グラフィックデザインコース卒。高校時代からデザインを専攻し、現在はフリーランスのイラストレーター。「絶滅した」といわれるメガロドン(サメの一種)の記事に偶然出会い、古代ザメに関心を持ち始め、サメの虜に。小さなころから水族館が大好きで、今でもサメの水槽から動かず、ずっとサメを見ているタイプ。サメグッズやサメ関連にも弱く、すぐ買ってしまう。1番好きなサメはシロワニ(強面だから)。2019年には、海とくらしの史料館開館(鳥取県)の25周年イベント『サメ祭』でポスターやチラシのデザインを担当。

監修者:田中 彰(たなか・しょう)
1952年、神奈川県生まれ。1975年、東海大学海洋学部水産学科卒業。1980年、東京大学大学院農学系研究科博士課程修了。同年より本学海洋学部水産学科に勤務し、1994年から教授、2014年から大学院生物科学研究科長。1990~1991年に、米国ウッズホール海洋研究所の訪問研究員として、海洋動物の行動調査を行う。専門は海洋動物学、保全生態学、特にサメ類などの高次捕食者の生態、生活史の研究。駿河湾を眼前にした海洋学部のメリットを活かし、深海に生息するサメ類の研究をライフワークとし、そのほか熱帯の河川に生息する淡水産サメ・エイ類の研究を世界の未開な地域で行ってきた。国際自然保護連合(IUCN)種の保全委員会サメ専門家グループ、日本水産学会、日本魚類学会、日本板鰓類研究会などに所属。著書に『美しき捕食者 サメ図鑑』(実業之日本社)、『深海ザメを追え』(宝島社)など。