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ネコ派? イヌ派? ペットではなくサメの話です

サメマニアの「めかぶ」(@shark0037)さんが、全身全霊をささげて描いたサメ図鑑『世界のサメ大全』ができました。125種のサメをすべてイラストで解説していて、 サメ雑学も満載の一冊です。この連載では、その中から選りすぐりのサメを1匹ずつ紹介していきます。第1回目は、書籍の発売を記念し、ネコザメ、イヌザメの2匹を紹介します!

提供:SBクリエイティブ

ネコザメ

卵の形は強そうな「ドリル状」

 ネコザメは、目の上が盛り上がっており、正面から頭を見たとき、その形が「ネコ」のように見えることから、この名前をつけられた。臼状の頑丈な歯で硬い貝類を噛み砕くことができることから、「サザエワリ」という別称も持つ。英名の「bullhead」は「雄牛の頭」を意味する。

 ネコザメの体の形状は、原始的なサメと現生のサメの進化の中間に当たる特徴を残している。

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めかぶのヒトコト
かわいい顔をしているのに、硬い貝殻をアゴの力で粉砕してしまう怪力。「ネコ」という名前と「ウシ」(英名)という名前の両方を持つこのサメは、よく水族館の底などに沈んでいる。

こぼれ話
特徴的な歯の形状は、硬いものを噛み砕くのに特化している。

■DATA
ネコザメ目ネコザメ科
学名:Heterodontus Japonicus
全長: 最大1.2mほど
捕食:貝類やエビ・カニなどの甲殻類、ウニなど
繁殖:卵生(単卵生)。2 個の卵を産む

浅海の岩礁や藻場など
南日本から台湾にかけて。東シナ海、太平洋など

イヌザメ

実はペットとしても大人気!

 イヌザメという名前の由来は、泳がずに地面をはいながら移動したり、海底で獲物を探すときに吻先を当てたりする様子が「イヌに似ている」から、とされている。

 幼魚は黒と白のシマ模様でウミヘビのようだが、成魚になると徐々にシマはなくなり、暗褐色になる。

 昼間はサンゴ礁のすき間などや海底でじっとしているが、夜になると獲物を探すため活発になる。

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めかぶのヒトコト
大きな水族館では、よくネムリブカやネコザメと重なり合っていて、その姿がかわいい。

こぼれ話
幼魚のシマ模様には「猛毒をもつウミヘビに擬態して身を守っている」という仮説がある。

■DATA
テンジクザメ目テンジクザメ科
学名:Chiloscyllium punctatum
全長:90cm~1m弱ほど
捕食:硬骨魚類や頭足類、甲殻類など
繁殖:卵生。2 個の卵を産む。

サンゴ礁や岩場、潮だまり、浅海の海底など
西太平洋、インド洋など

【サメ雑学】サメという名のサメ「ではない」魚

 サメやエイなどは、骨がやわらかい骨でできた「軟骨魚類」というグループに属している。それに対し、一般の魚類は、骨が硬い骨でできた「硬骨魚類」というグループだ。

 サメは、約4億年以上も前から存在しており、現在までに600種前後が確認されていて、その特徴ごとに「9目37科106 属」に分けられている。

 現在でも1 年に5~10 種ほどの新種のサメが確認されており、その種類は、どんどん増えている。

 まれに「サメ」という名前がついているのに「サメではない」魚がいる。例えば、以下のような魚だ。

●サカタザメ
●ギンザメ
●コバンザメ
●チョウザメ

 サカタザメは、エイの仲間に分類される。エイとサメは、エラ孔の位置で見分けることができる。サメは体の側面にエラ孔があり、エイは腹面にエラ孔がある。

 ギンザメは、サメやエイと同じく軟骨魚類に分類されるが、サメとエイは「板鰓(ばんさい)類」に分類されている。一方、ギンザメは「全頭類」に分類されている。

 コバンザメはスズキの仲間であり、軟骨魚類ではなく、硬骨魚類に分類される。

 チョウザメは、その卵がキャビアとして有名だ。キャビアは「サメの卵」ともいわれるが、チョウザメもコバンザメと同様に硬骨魚類に分類されるので、サメの仲間ではない。チョウザメは、体の形状がサメに似ているのでサメと名づけられたが、古代魚の一種である。

 これらの魚は、サメという言葉が名前に入っているが、サメではない。

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著者:めかぶ
大阪府出身。奈良芸術短期大学グラフィックデザインコース卒。高校時代からデザインを専攻し、現在はフリーランスのイラストレーター。「絶滅した」といわれるメガロドン(サメの一種)の記事に偶然出会い、古代ザメに関心を持ち始め、サメの虜に。小さなころから水族館が大好きで、今でもサメの水槽から動かず、ずっとサメを見ているタイプ。サメグッズやサメ関連にも弱く、すぐ買ってしまう。1番好きなサメはシロワニ(強面だから)。2019年には、海とくらしの史料館開館(鳥取県)の25周年イベント『サメ祭』でポスターやチラシのデザインを担当。

監修者:田中 彰(たなか・しょう)
1952年、神奈川県生まれ。1975年、東海大学海洋学部水産学科卒業。1980年、東京大学大学院農学系研究科博士課程修了。同年より本学海洋学部水産学科に勤務し、1994年から教授、2014年から大学院生物科学研究科長。1990~1991年に、米国ウッズホール海洋研究所の訪問研究員として、海洋動物の行動調査を行う。専門は海洋動物学、保全生態学、特にサメ類などの高次捕食者の生態、生活史の研究。駿河湾を眼前にした海洋学部のメリットを活かし、深海に生息するサメ類の研究をライフワークとし、そのほか熱帯の河川に生息する淡水産サメ・エイ類の研究を世界の未開な地域で行ってきた。国際自然保護連合(IUCN)種の保全委員会サメ専門家グループ、日本水産学会、日本魚類学会、日本板鰓類研究会などに所属。著書に『美しき捕食者 サメ図鑑』(実業之日本社)、『深海ザメを追え』(宝島社)など。