マーケティングは社会を豊かにする ソーシャル・マーケティング

広告デザイン専門学校、マーケティングの講義では、最後の回で社会とマーケティングについて考えます。
先日、とある場でその話をしたとき、「ソーシャル・マーケティング」について話すと、「SNSマーケティング」と勘違いしていたという言葉が出ました。

う〜ん、まったくもう!(笑)

ということで、今回は、ソーシャル・マーケティングについて考えます。

・ソーシャル・マーケティングの成り立ち
第二次世界大戦中、連合国で唯一の生産国となったアメリカは、多くの産業が、戦争特需によって急速に発展しました。しかし終戦後、特需が終了します。これまでのように、「作っただけ儲る」というわけにはいきません。そのため「とにかく売る!」という、利益追求のためのマーケティング、「マネジリアル・マーケティング」が発達しました。しかしこれによって、強引なセールスやプロモーションが横行したことから、消費者主義や消費者保護の考え方、「コンシューマリズム」が台頭します。
その後、この考え方をさらに発展させたものがソーシャル・マーケティングです。

・ソーシャル・マーケティングの考え方
ソーシャル・マーケティングは、簡単に言えば、社会全体で求められる価値や方法を生み出し、消費者の行動に影響を与えるという考え方です。
ソーシャル・マーケティングは、「マーケティング活動」ですから、企業の「利益(≠利潤)」を追求するこういです。ここで考える「利益」は、勿論売上利益も含みますが、それだけではありません。自社製品の安全性や環境性を定着させ、企業評価を高めることに繋がります。企業評価の向上は、企業のビジョンを明確に伝え、その企業が求める優れた人材の確保にも繋がります。それによって、さらに優れた製品を生み出し、単なる知名度以上の差別化を図ります。

例えばサントリーは、「水」のイメージを大切にしており、森を守る活動をしています。
サントリーは、お酒や飲料が主力製品ですから、主たる原料となる「水」は、文字通り生命線です。森を守る活動は、主原料の水の確保に欠かせません。また同時に、製品の品質を確立することになります。そしてこの活動を理解し、賛同する人材が集まれば、やり甲斐や熱意を持った社員によって、より良い製品を生み出すことができます。

このように、ソーシャル・マーケティングは、すぐに目の前の利益をもたらすものではありません。しかし企業がビジョンを実現するための、戦略を実行するためには不可欠です。
また近年では、こうした企業の活動が、企業の評価に大きな影響を与えます。東京オリンピックでは、多くの大企業がCMの放送を中止し、経営者が開会式への出席を見送りました。
これもある意味では、企業の考え方や態度を示す、ソーシャル・マーケティングの一環と言えるでしょう。

そして現在、ソーシャル・マーケティングの考え方は、非営利マーケティングや公共マーケティングにおいても活用されています。

・どんどん利益の追求しよう
ところで少し話が脱線しますが、僕は広告デザイン専門学校の講義だけでなく、これまで担当したどの講義においても、「社会貢献」という言葉を使っていませんが、これには明確な理由があります。

ソーシャル・マーケティングについて調べると、よくCSR(企業の社会的責任)との違いを述べているものがあります。CSRについては、以前の記事で記しましたので、説明は割愛しますが、本来の意味を理解していれば、不要な説明でしょう。

ソーシャル・マーケティングに限らす、CSRにも言えることですが、これらの活動の目的として、「社会貢献」や「業イメージ向上」といった説明が少なくありません。しかしここで断言しますが、こうした考え方は適切ではありません。

企業は慈善団体てはありません。事業を通じて収益を得ることが唯一最大の目的です。ですから、安易に「社会貢献」などと言う企業は危険だと考えます。なぜなら、市場競争はとても厳しいものだからです。

しかし、だからこそ、ソーシャル・マーケティングやCSRが不可欠なのです。

より多くの消費者から評価と信頼を勝ち取るためには、社会に必要とされる、優れた製品やサービスを生み出し、適切な価格で、市場に提供しなければなりません。また目の前だけでなく、将来的な価値を提示できなければ、選ばれる企業にはなれません。
最初に述べたように、ソーシャル・マーケティングは、マネジリアル・マーケティングへの反省から生み出された考え方なのです。

僕が講義で、「社会貢献」という言葉を使わないのはこのためです。

社会の将来の姿を考え、より良い製品やサービスを提供し続けることが、企業がより多くの利潤を得る唯一最良の手段です。より多くの利潤を得て、より多くの人を雇用し、より多くの税金を収めれば、それだけで社会は豊かになります。

つまり、企業のやるべきことは、より良い方法で、どんどん儲けることなのです。

このための重要な方法の1つが、ソーシャル・マーケティングです。

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