年のはじめに考える 学ぶということ

僕が初めて教壇に立ってから、今年で20年になります。最初は大学で、その後一般向けのセミナーなどで講義を行い、現在は広告デザイン専門学校の講師の他、勉強会も開催しています。専門学校の講義や勉強会では、皆さん熱心に受講して頂いていて、とても嬉しく思っています。

とはいえ僕もまだまだ勉強中です。

例えば広告デザイン専門学校の教壇に立ったことは、教員としてかなり成長させて頂きました。また今開催している勉強会でも、実務に携わる経営者の方などに講義を行い、質問に答え、議論をすることで、学問としてだけでなく、中小企業が求める、実務に結びついた講義をすることを学びました。

SBE-Laboの主要な業務として、企業などへの教育を提供しています。価値観が大きく変化、多様化する中で、単に何かの方法を知ったからといって結果には繋がりまけん。

そこで今回は、あらためて「学ぶ」ということについて考えます。

・ラーニングピラミッド
教育の世界で知られている考え方に、ラーニングピラミッドがあります。これは教育内容と教育効果を示したものです。

■ラーニングピラミッド
1.講義 5%
2.読書 10%
3.(動画やテレビラジオ番組などの)視聴覚 20%
4.デモンストレーション(実演) 30%
5.グループ討論 50%
6.自ら体験する 75%
7.ほかの人に教える 90%

近年、アクティブラーニングが注目されているのは、この考え方に基づくもので、グループ討論や体験、教えるといった、アウトプットを伴うことで、教育効果が高まるというものです。大学で言えばゼミなとがこれにあたるかと。また僕自身、教壇に立ってから、より理解が深まったということは何度もありました。

この考え方は、実はそれほど新しいものではありません。例えばOJTで「作業」を教えるとき、4段階職業指導法という、以下の手順があります。

やって見せる→説明する→やらせてみる→補修指導

これは第1次世界大戦下のアメリカで考案された方法ですが、アクティブラーニングの1種と言えるでしょう。

もちろん、講義や読書が役に立たないわけではありません。ただ、学ぶ人自身の「学ぶ能力」や姿勢、考える技術が伴わないと、なかなか効果があがりません。

この中で、1番重要になるのはやはり学ぶ姿勢ではないでしょうか。

・学ぶ姿勢
最近、「タイムパフォーマンス」という言葉を耳にしました。これはコストパフォーマンス以上に「時間」を重視することだとか。
例えば、若い方はスマホでドラマや映画などを観るとき、1.5倍速でみるそうです。短い時間で観ることができるので、たくさんの作品を観られるからだとか。
また、大学の講義など、余談が含まれた90分の講義を聞くより、同じような内容で、自分が良いと思うYoutubeを、20分観る方が価値があるという考え方だとか。

これは1つの考え方として、知っておいても良いのかもしれません。しかしこうした方法は、実は学習効果がとても低いという研究結果があります。

この現象について、僕は「学ぶ姿勢」の問題だと考えています。

他にも、日本のビジネス書(?)に多いハウトゥ本なども効果が低いと言われます。
なぜなら、タイムパフォーマンスの考え方と同じで、単に「聞いたことがある」や「知っている」だけでは、学んだことにならず役に立たないからです。

そういえば、ある出版社の方に聞いた話ですが、お金儲け、料理、ダイエットなど、常に売れ続ける本があるのだとか。これらの本を常に買う人は、結局努力をしないので、いつまでも実現しないからだそうです。

・「学ぶ」ということを考える

昨年の1月から始まった勉強会では、参加者の方が学びたいという要望に、可能な限り応えるようにしています。昨年12月の締めくくりでは、参加者の方の強い要望から、哲学について講義をしました。
この方は僕が経営のお手伝いをしている企業の経営者の方で、「先生の話をちゃんと理解する力をつけるために、哲学を理解したい」というお言葉を頂き、開催に踏み切りました。

ありがたいことに、僕の勉強会にご参加下さる方々はとても熱心です。目の前の仕事の問題を何とかしたいという要望もあるので、できるだけその方の問題に合うよう努めています。しかし同時に、「ちゃんとした勉強がしたい」という声も多く、僕もついつい熱が入って、大学院レベルの内容になってしまうこともしばしば。

参加者の皆さんには、ご満足いただけているようです。

・なぜ学ぶのか

社会の価値観や常識が大きく変化している中で、多くの方から「勉強したい」という言葉を聞きます。しかし「勉強したい」にも色々あるように思いました。

例えば、「儲かる方法」を知りたい人には、僕は役に立ちません。そんな方法は知りませんから。

ここからは、僕の考えです。

「学ぶ」というのは楽しくもあり、苦しくもあります。純粋に知らないことを知るのは楽しいことです。しかし同時に、自分の無知を自覚させられます。ても実は、自分の無知を知ることが、「学ぶ」ということの第1歩であり、本質ではないでしょうか。

学びの段階として、僕はいつも「知っている」「理解している」「実践できる」「教えられる」という説明をしています。

皆さんがどのような人間になりたいのか、何を成したいのか、こうした目的を明確にすることで、「学ぶ」ことの意味が変わるのではないでしょうか。


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