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困った時に逃げ込める「自分だけの小さい部屋」

僕の頭の中には「小さい屋根裏部屋」がある。
そこにはたくさんの段ボールと古い一人がけのソファ。
小さな小窓が二つ。床にはおもちゃも本も転がっている。

こいつなにいってるんだ?と思うかもしれない。
でも、子供の頃、嫌いな勉強を乗り切るために自分で作った小さな部屋なんです。それが子育てして、会社をやってる36歳のおじさんになっても、まだその部屋がある。定期的にその部屋に行ってソファに座って考え事をしたり、小さな窓から外を眺めたりしている。


僕は子供の頃、勉強が嫌いだった。(厳密にいうと今も嫌いだ)
今学んでいることが一体なんの役に立つのだろう。子供ながらの純粋さが勉強嫌いを加速させた。先生たちは納得する回答をもっていなかった。
それでもテストはやってくる。何より「高校受験」や「大学受験」というものがあり、そのために塾なんかに通わなくてはいけない。そんな事実が見えてきた頃、ふと眠れない真夜中、布団から見える天井に想像を描いた。

何の意味がわからない勉強と、大好きなゲームや漫画。
このどちらも意味なんかないのだとしたら、なぜ勉強だけ嫌悪するのか。
子供の純粋さが産んだ結構芯をついた問答が数時間、窓の外が明るくなるまで続いた。行き着いた答えは「ゲーム性がないから」だった。
だったら、ドラクエやファイナルファンタジーのように成長が目に見えたらいいんじゃないか。それに気づいて、なぜか早朝6時ごろに苦手だった英語の教科書を開いて試しにやってみた。すると勉強が面白く感じた。それはどの教科でも同じ手応えがあった。目を覚ました親がギョッとして驚いていた。寝不足そうな息子が早朝に勉強しているのだ。頭がおかしくなったのかと心配しただろう。


この時、頭の中に屋根裏部屋が生まれた。部屋には段ボールがいくつか、そこには英語・国語とか教科が書かれている。勉強をしていくと、この段ボールがうまっていき積み重なっていく。そのシンプルな想像の世界を頭に作った。教室で授業が変わると、頭の中で段ボールを開く。この中に学んだことを詰め込んでいく。貯まれば溜まるほどレベルが上がるように段ボールが増えていく。勉強にゲーム性が生まれた。テストでは成績が上がった。この方法は正解だと実感を得ると同時に大学までエスカレーターでいける高校の推薦を得た。


大学生になると、なぜこれがうまくいくの考えるようになった。
少し大人になると理由はシンプルだった。人はとりあえず全てを脳みそに突っ込む行為を”当たり前”としているということ。
そして、それが人を苦しめていること。僕らはゲームをする時、ソフトをいれる。そこから広がる時間は全てゲームソフトの中で完結していく。魔王も世界平和も全部だ。ソフト=段ボール。この整理をすることで、どの段ボールがクソゲーで、死にゲーか見極められる。どの段ボール(ソフト)をやるべきで、やらないべきかを判断できるようになる。

でも、それを自分という段ボールにごちゃ混ぜに入れると…人生全てがクソゲーに感じてくる。ほんとはごく一部の難題だったものが、人生全てに影響を与えいく。そのシンプルな構造に屋根裏部屋で気づくことができた。
そして、大学では自分で何を学びたいか選ぶことができる。苦手だった段ボールは断捨離で捨て去って、興味のあるものの段ボールを増やす。だって人生そんなたくさんの段ボールはもてない。捨てるならば「不要なもの」から。自分にとって何が好きで・嫌いかを考えて捨てていく作業。僕の人生はどんどん軽くなり、そして大学生活で新たなたくさんの段ボールを得ることにつながっていった。


今では好きなものに溢れた秘密の屋根裏部屋になっている。
家族や、会社といった年齢相応の段ボールもある。
もう国語とか算数、社会の段ボールはない。だいぶ前に捨て去っている。
屋根裏部屋でソファに腰掛け、冷静に考えることがある。
二つの窓から見えるのは僕の体が見る外の風景と、遠くのまだおぼろげにしか見えない風景。ここで思考し、目を凝らして未来を見つめる。僕の操縦席だ。

もちろん人生は山あり谷あり。
うまくいかないことだってある。すごく嬉しいことだってもちろんある。
もし人生に少し疲れている人がいたら、何歳からでも遅くないので自分だけの秘密の部屋を頭の中に建設するといいと思います。
ここは誰にも邪魔されない自分だけの空間。人の意見とかは置いておいて自分はどうなの?と向き合える場所。そして、逃げ場でもあります。


子供の頃おもっていた以上に大人は自由で楽しいなと思っています。
それと同じくらい生きにくいところでもあり、重たい場所でもある。
あの頃のように純粋無垢では生きていけないのが大人なんだなと思うんです。そして、今という時代はなんというか感情が溢れ出すぎて、それにさらされることでどっと体が重たくなる。受験や勉強より、もっと怖いなと思ったりもします。

こういう世界で自分らしく生きていくには、たぶん少し工夫が必要な時代なんだなと思います。お盆休みに入ったけど、考えることがたくさんあって、決断すべきことも山盛り。一つの判断ミスが大きな失敗に繋がる時期でもあるなぁ〜なんて布団で考えながら「明日、屋根裏部屋いこう」と思っています。こうやって僕は自分と向き合う場所を頭の中にもっています。

もし、ちょっと人生に疲れたり、困ったりしている人がいたら、目を閉じてあなただけしか入れない小さいお部屋を想像してみてください。
いつかその部屋はあなたを救うことになると思います。

いただいたお金は子どもに本でも買おうかと思ってます。