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揺れ動く世界の観察方法

時間軸で物を見る目線ってとても大事。よく仕事でリサーチするんですが、一時的な状態をそれが永続的に続くと勘違いしてしまうことがあります。
四季が移り変わるように世の中のあらゆる事象も常に変化し続けている、そんな当たり前なことをうっかり忘れることがあるんです。

例えば、ワンタイムな受託案件をしている場合、実はオールシーズン必要性があるプロダクトやプロジェクトでは一時的なリサーチでは不足していて、通年でどのような変化が起きるかの予測や出来ればシーズンごとのリサーチが必要になります。

と同時に人も時代とともに価値観が変動し、流行り廃りなどでも日々移り変わっていきます。状況が土台とするなら人はその上に立つ流動する存在。実は物事のほとんどが流動的に動くためリサーチからの未来予測はとても難しいとも言えます。

そこで時間軸です。例えば、状況で行けば人の往来が激しいシーズンとそうでないシーズン。これらは波を打つようにパターンがあります。その両方のパターンに対応できるような柔軟性を求めるか、どのシーズンでも土台変わらない価値観で勝負するかの選択が迫られます。

これらを選択をする際に状況を時間軸で捉える作業が必要になり、わかりやすいのは春の時期の桜、秋の時期に紅葉で人が動く。人と自然の相互関係で誰でも予測可能です。

それ以外にも祭りなどの行事は誰でも予測可能。
もう少し高度だと、あの地域に外国人旅行客が増えてるということは、その反発で別の地域にローカル向けのコミュニティが形成されるとか。これは人が起因なようでいて、大きくトレンドがスライドしていくので無意識に人の動きが変わっていく「現象」と僕はとらえます。大きな天災があった際に、スーパーやコンビニで日用品が売り切れになるのも人が生み出す無意識の現象ととらえます。

そして、人の時間軸でいくと、天気がいい週末は人は意識的に外出をします。例えば今週、雨が続き週末までもつれ込むので飲食の数字は三連休ながら落ち込むことが予想されます。かつ、2週連続の三連休。前半が晴天で後半が雨天となるとお金の排出も最初の週で出し切っているので今週は控えようと意識的にセーブします。

ほとんどの物事はある程度、合理性を伴って推移していくのですが、状況で言えば天災、人で言えば非合理性での判断が実は圧倒的に多かったりするので全てが合理的に証明できることはできません。

しかし、唯一人で行くと時間軸に感情を掛け合わせた見込みを立てることができます。僕がお手伝いした崇仁新町は飲みに行くついでに毎回客層を眺めます。大体が決まって夜の時間で、どのような人がどのような割合でいて、どんな対話が偶発的に発生しているか。ワンタイムで観察するだけでもその頻度は全体に同じ割合で分布される傾向があるので、1の出来事は実は100の出来事とイコールということがあります。

崇仁新町では定期的に見ているとこうでした。
横丁のような世界観なのに少しおしゃれ。想定より若い女性客が多く見受けられました。その女性の多くが同性の友達ときてるケースが多く、それ以外はカップル、サラリーマン、年配の方々、家族連れ。
全体の割合を見ると男性が生きやすい世界観にも関わらず、女性の割合が高い。なので、いずれ男性の割合が増えるだろうと見込みが立ちます。

想定通り、ナンパ目的かあわよくば仲良くなれるかなという狙いで男性客が増えます。しかししばらく平行線かなと予想します。今の時代、男性の方が弱い状況が多く、そう簡単にはこのパワーバランスは変わりません。このタイミングぐらいから外国人旅行客がこの場所を認知しアジア圏以外の欧米人の来訪が増えてきました。これは観光都市京都なのでほったらかしにしていてもそのうち流入するだろうと見込んでいた客層です。で、アジア人はこない。なんでかというと、この風景は本国で見慣れた風景だから。

次に予想したことが異性目的で来た人が、日本人ではなく外国人女性にコミュニケーションをとることが頻発するだろうと考えてました。同じ言語の人をナンパするより、異国の言語も通じるかギリギリのところの人の方が対話しやすいからです。で、案の定、そのような現場が多く見受けられるようになりました。あわよくば同性同士の異国間同士の対話が増えるともっと風景としては狙いに近いのでもう少し時間がかかるかもしれません。

この状況が生まれたタイミングで外国人に話しかけれる日本人はある程度のコミュニケーション力が高い人に限られると考えました。となると、コミュニケーション能力が低い人が孤立する状態が生まれる。割と今それが起きています。なので、ここで起きることは停滞しかありません。

考えられる方法として、個人の孤立した人間を巻き込む装置を施設側に儲けるか、スタッフ側にそれをキャッチアップする人材を補強するか。そして、ここでもう1パターン期待に外れるグループが生まれます。

それは最初の起爆剤ともいえる女性陣のグループです。
当初は対話が多かったものの、外国人客との対話が原因で頻度が減ります。
それを補完できる客層は、外部からのイカしたおじさん層。でもここはもっと値段のグレードは上でいい店にいきます。活気ある場より静かなバーを好むかもしれません。なのでこの可能性は運に任せすぎなのでパターンから落とします。

残るはスタッフでの補強で、男性で若いが大人っぽくどの世代とも対話ができるキャラが一人はいるだけで場のニーズを徐々に解消して行くことができ、お客さんがそのスタッフに着きます。そして、女性陣が常連として固定客化することが理想とも言えます。ここが整うと次に起きる問題は多国籍/若者だらけの客層となり、地域の人たちにとって賑やかにはなるが少し遠い存在として思われるブランドの方での損失です。

好きだったインディーバンドがメジャーにいくときの寂しさに近いです。
理想的な状態は上記の客層が入り乱れ、地域の人たちや老人たちと席を囲む状態です。とくに年配の方は誰にとっても人生の先輩であり、かつこれまではここに若い人が集まることがなかった状況で、老人たちの存在はとても重要になります。それを外国人や若い男女、サラリーマン、そしてご老人といった年齢を10個ずつ跨いだテーブルが生まれることが、あのプロジェクトの本当に欲しい風景だったりします。

このように人は揺れ動く存在ではあるが、その揺れを作るのは本能だったりします。これらを掛け合わせて次に起こるであろう状況を先読みし、理想的な風景へ引っ張って行く。これをするには時間軸で人の感情の起伏を見たり、状況の変化を見ながらプロジェクト自体を可変して行く必要があります。それくらい今の時代は全てが流動的でマネジメント可能なものでなければ時代に即したものが生み出しにくいとも逆説的に言えます。

しかし、僕らが受託で受ける仕事のほとんどは流動性・可変性を持たせたものが生み出しにくいです。大きな予算を投下するのにこの計画はあまりに不確定な要素が多いから受理されにくいのです。なので大きな予算が動くものほど、期待を超えず時代に即せず埋もれて行くものや見たことがあるものとして終わっていきます。

今、時代は大きくうねり高速で改変されていっています。
その速度と変化に企業自体が瞬発力を示すのが難しい状況です。
その瞬発力をもちながら大きな結果を出したのがNIKEのこの事例です。

詳しくは、上記サイトを参照してください。
大きな状況のうねりを見ながら、人の変容もしっかり見ていないとできない判断だとわかるはずです。最近のプロジェクトの中でこれほど時代にマッチしたコミュニケーションはないように思います。

では、私たちは日々どのように生きてるでしょうか。
出勤や通学で同じ道を通るときに同じ風景だと思って歩いてませんか。
その微細な変化に気づくことなくいつもと変わらぬ風景のデスクに座ってませんか?同僚が髪を切ったことに気づきましたか。自動販売機の売り物が変わったことに気づきましたか。街ゆく人々の服装が一枚厚着していることや、日の入りがどんどん早くなっていること、家族や恋人の微細な変化に気づいていますか。

ほとんどのことは揺れ動き変動しています。
むしろ、変わらないことの方が不自然な世界に生きながら、
今日振り返っていつもと同じ風景だったと思えますか?
実は多くの物事にささやかな変化が起きている。そのことに気づきましょう。僕は仕事柄世界を眺めているけれど、毎朝猫が外の世界をじっくり見ている風景を見て、僕もしっかり世界の変化を見届けようと毎日思っています。

いただいたお金は子どもに本でも買おうかと思ってます。