永遠に

それは許されない夜だった。それはそれは。
法がないのであれば、モラルがないのであれば、ひいては日本でないのであればきっと許されたのかもしれない。果たして僕はどうすれば許されるのだろうかと自問したが結果六法全書の片隅の一文で僕は贖罪の人生にシフトしなければならなそうだった。諦観しながら知らない天井を見た。実際には自宅だがもう知らない天井のようだった。

あなたは帰り際に石鹸をくれた。
あなたの匂いのする石鹸を。

一日目、僕は嬉々として石鹸を全身に纏った。
二日目、僕はまた嬉々として石鹸を全身に纏った。
あの夜を足し算すると三日間はあなたでいられた。
いた。

三日目(四日目)、四日目(五日目)、
五日目(六日目)、六日目(七日目)。猿のように。

七日目(八日目)、石鹸が割れた。
真冬日の水たまりのような薄氷と化した石鹸は僕の手を滑り浴室の床へ落ちて割れてしまった。泡に戯れて無邪気に動く石鹸を一瞥するしかなかった。
石鹸は二つになり、あなたの分身がさらに増えた。
掛け算すると七日目(八日目〈十四日目[十六日目]〉)になった。僕は無限の力を手に入れたように不思議とムクムクとした。

八日目(九日目〈十六日目[十八日目]〉)、
九日目(十日目〈十八日目[二十日目]〉)、
十日目(十一日目〈二十日目[二十一日目]〉)、
猿のように。

十一日目(十二日目〈二十二日目[二十四日目]〉)、石鹸は僕の手を滑り落ち排水口に流れていった。僕の汚れし肉体を美化した泡と共に流れいく石鹸を一瞥するしかなかった。僕は煌めいた。
石鹸は海になり、あなたの分身がさらに増えた。

無限算すると永遠日目になった。
僕は間違いなく無限の力を手に入れた。

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