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カメラの維持費

少し前のことになります。

ある日、散歩に持ち出そうとRolleiflex 2.8F Planarを手にした時、裏蓋の貼り革の縁が剥がれてきていることに気付きました。手元にある接着剤でテキトウに貼り付けてしまおうかと思ったのですが、以前どこか(確か、カメラ修理を職業としている方のブログだったと思います)で、「貼り革を不適当な接着剤で貼り付けてしまうと、修理の際に上手く剥がすことができず、その結果貼り革を傷めてしまう」といった内容の文章を目にしたことを思い出しました。そこで、長年Rolleiflexの修理をお願いしている修理工房にどのような接着剤で貼り付けたらよいかメールで質問してみることにしました。すると間もなく先方から返信が来ました。貼り革の貼り付けには、特殊な接着剤を溶いて使用しているとのこと。また、接着剤の種類によっては、やはり修理時にうまく剥がすことができず、貼り革を傷めてしまう可能性があるとのことでした。

「う〜ん、どうしよう...」としばらく考えた後、2.8F Planarを前回修理してもらってから7〜8年経っていることに気付きました。ここらでひとつ、貼り革貼り付けついでに健康診断に出そうと決め、修理代は誕生日プレゼントにしてもらうことにしました。すぐに梱包して発送すると、2.8F Planarの健康診断結果は間もなく返ってきました。主にシャッター周りの修理が必要とのこと。この7〜8年のシャッター回数を考えれば、まあ当然だろうと思ったので、謹んで修理をお願いすることにしました。

3週間ほどで2.8F Planarは無事修理を終え、手元に戻ってきました。手にとるとオイルの匂いがプ〜ンと漂ってきて、まるで新品のカメラを手にしているようです。このカメラの操作感は最初に手にした時からスルスルと滑らかで、Xenotar 2.8Fよりも更に柔らかい感じだったのですが、それが更にスムーズになっているような気がしました。そして驚いたことに、今までズブズブと深いと感じていたシャッターボタンが、元々浅かった2.8F Xenotarのシャッターボタンと同じくらい浅く軽くなっています。これには本当に驚きました。これでスローシャッターも若干切りやすくなります。修理に出して良かったと思いました。

...と、話がここで終わると「めでたし、めでたし」なのですが、今回はふとした弾みで請求書の金額を目にしてしまったんですよね...。オドロキノキンガク。古いカメラを定期的にメンテナンスして良い状態で使うには、ものすごく維持費がかかるのだということを改めて実感しました。2.8F Planarの修理は誕生日プレゼントじゃなくて、誕生日兼クリスマスプレゼントだわ、こりゃ。もはや私にとっては財産であり、なおかつ生活に欠かせないカメラとなっているRolleiflexは、ドイツの有名なカメラ修理工房にお願いしているため、通常より割高なのかもしれませんが、いや、それにしても衝撃の金額でした。そうそう、Wetzlarから届いたM2オーバーホール代請求書以来の衝撃。

WetzlarといえばLeica M2。Leicaといえば、未だに懲りずに時折「M3を一度使ってみたいな」と思うことがあります。しかし、無理してM3を買っても、その後調子が悪くなったり、更にグッタペルカがモロモロ剥がれてきたりした場合には、誇張ではなく莫大な金額がかかること、確実です。それを考えれば、とても手を出すことができません。現在手元にある2台はどちらも一度具合が悪くなりWetzlar送り(何しろ、ここが最寄りのLeica修理店なもので)になっており、その都度隅々まで修理・調整されて戻ってきています(1台はグッダペルカがモロモロと剥がれたため、完全皮膚移植済み)。どちらも現在は問題なく動いているので、この2台を今後も大切に使っていこうと思っています。維持費を考えると、古いカメラには迂闊に手を出せません。いや、ホントに。

カメラ修理代請求書でも壁に貼っておいて、性懲りもなく「新しいカメラ...」と思ってしまった場合は、それを見てその都度反省しようと思います。

後記

これは2022年2月17日にかいた記事です。この記事を書いた後もしばらく私は他のカメラに目移りしていましたが、結局、eBayのアカウントは完全に削除しました。フィルムの価格も値上がり、中古カメラの相場も値上がり、限られた予算は今後カメラのメンテナンスとフィルム購入代に回そうにと決めたこと。それから、手元にあるカメラ(やレンズ)の操作に年月をかけて慣れていくうちに、「手に馴染んだこのカメラやレンズが一番良い」と思えるようになったこと、この2点がeBay完全卒業に踏み切った理由です。
この時にRolleiflexを修理に出して以降、幸い私のカメラは全て調子良く動いています。故障具合によっては修理代の打撃は笑えないくらい痛いので、どうかこのまま、みんな元気に動き続けてくれますように…。

なお、今回投稿した写真は、Rolleiflex 2.8F PlanarとPRO400Hを用いてイタリアのヴェローナにある庭園(Giardino Giusti)で撮影したものです。ドイツを代表する文豪ゲーテも18世紀末にこの庭園を訪れており、その様子は彼の『Italianische Reise(イタリア紀行)』に記録されています。

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