私の新年度初授業


私が初任の初授業で行ったレクリエーションの内容を紹介します。

授業の展開は大まかに下記のような構成となっております。

A.簡単な自己紹介:5分

B.グループワーク:35分

C.生徒に関するアンケート:10分

今回は、主にBのグループワークの内容・ネタおよび私が伝えようとした事について書いていきます。


1.グループワークの内容

2.グループワークで伝えたかったこと

3.なぜ授業ではないのか



1.グループワークの内容

グループで話し合って、課題を解決してもらいます。解決してもらう課題として、以下の2つを提示しました。

①容器の底に寄ったマヨネーズを、瞬時にキャップ側へ寄せる方法を考えよ

②洗濯したてのシャツを30分で乾かす方法を考えよ


展開1

・最初に①のテーマを与え、4~5人グループ一斑で答えを考えてもらう。

・10分後くらいに、答えを黒板に書きだす。(私の勤務校はICT環境が整っているので、「ロイロノート」を用いて集約・映示しました)

・私の用意した答えを生徒に示します。私の用意した答えは、「ボトルの底の部分を持ち、キャップの軌道が半円になるように振り下ろす」です。(実際はこんな説明しても理解されない可能性が高いので、演示しました)これをやると、遠心力でマヨネーズが全部フタの方へ寄ります。本当に一瞬です。下図の矢印のような軌道で一気に振り下ろします

・この答えを演示したあと、「遠心力によってマヨネーズがフタの方へ寄った」事を教える。高校生なら多くが知っているあの遠心力、意外と日常で使える機会があるんだぜ!!みたいな話をします。


展開2(展開はほとんど同じです)

・②のテーマを与え、グループで答えを考えてもらう。

・10分後くらいに、答えを黒板に書きだす。

・私の用意した答えを生徒に示します。私の答えは、「電子レンジで温めたあと、ひたすらアイロンをかける」です。(なお、電子レンジは下手をすると発火する場合もあるため、これはできればマネしないでねという注意を加えています)レンジでもアイロンでも、水を含むものを100℃以上まで熱する事ができます。水の沸点は100℃。乾燥していない=水分が残っている ということなので、100℃以上に熱すれば水は気体となってなくなっていき、乾燥します。(厳密には100℃以上でなくても乾燥しますが)水の沸点が100℃なんて耳が痛くなるくらい学んできたことだけれども、それもまたこういう所で活用できるんだぜ!という話をします。

この後、以下の2.グループワークで伝えたかったことの内容 を生徒に話して、Cのアンケートへ移り、初回授業終了です。


 なお、このシャツの話は実話をもとにしています。ある体育祭前日に私は体操着を洗濯したまま干さずに寝てしまいました。翌朝びしょ濡れだった体操着を前に、「どうすればこれを瞬時に乾かせるか?」という命題に対する解として、このアイロンレンジが生まれました。こういう自分の経験談を話すと結構ウケます。

 また、このグループワークで生徒が考えている間、机間巡視を行いつつできる限り全ての生徒に話しかけます。理由は後述しますが、最初の授業で生徒と打ち解けることが大事です。


2.グループワークで伝えたかったこと

 私がこのグループワークを通じて生徒達に伝えようとしたことは、

「知識とは役に立つか立たないかが大事なのではなく、いかに役立てるかが大事」

ということです。私は勉強をただの丸暗記ゲームではなく、自分の人生を豊かにするためのツールとして活用してほしい!と思っていた(今も思ってます)ので、こうしたグループワークを行いました。

 私自身、中学生の頃は勉強が大嫌いでした。「こんな勉強が将来何の役に立つの!?」「何で勉強なんかしなきゃいけないんだよ!!」なんて言って教員に強く反抗したのを今でも覚えています。(勉強したくなかっただけというのもありますが)

「水の沸点は100℃である」「回転する物体には遠心力が生じている」こんなことを覚えるのは生徒にとってただの丸暗記で、いったい何の役にたつのだろうという疑念を抱く事もきっとあるでしょう。しかし、こんな何の役に立つか分からない知識でも「洗濯を忘れていても、素早くシャツを乾かせる」「残量の少なくなったマヨネーズをいとも容易く取り出せる」という小さな幸せにつなげる事ができるというわけです。なので、どこで何が役に立つかは分からない、人生を幸せにするための知識を一緒に学ぼうぜ!と、この導入を用いて生徒へ勉強の話をしました。



3.なぜ授業ではないのか

 新年度最初の「授業」で上記のグループワークをやったので、中には「授業なんだからちゃんと教科書を基にした講義等をするべき」という考えの方もいらっしゃるかと思います(そしてそれは正しいと思います)。しかし、私は授業を「生徒との会話」だと考えています。そのためまずは生徒としっかり打ち解けて、自分がどういう考えや熱意をもって授業をする人間なのか、どういう風に自分の授業を受けてほしいのか、これを生徒に理解してもらうことが最も大事です。したがって、「生徒との相互理解を深めるため」にこのようなグループワークをしたという事になります。

 特に、自分が初めて受け持つ生徒の場合、生徒からしたら自分は「どんな性格でどんな事を教えてくれるかもわからないただの見知らぬ大人」です。その見知らぬ大人の状態で授業を始めるということは、「朝の電車で隣に座った見知らぬ人が急に生物学をアレコレ教えてくれる」という状態に等しいと考えており、これでは生徒との対話が成立しづらいことは火を見るよりも明らかです。だからこそ、私の授業ではまず最初に「生徒と知り合いになる」必要があったのです。

 こうした理由より、私は最初の授業は必ず一時間まるごとガイダンスに使います。最後の10分でとるアンケートも、生徒の性格や志望校、価値観などを聴取するようなアンケートです。形式ばった言い方をすると、この授業は

生徒観を明らかにするための時間

といったところでしょうか。


以上、私の実践例でした。特に、今年初めて教壇に立つ先生方、参考にしてみてください。ベテランの先生方、参考にしていただくとともに、改善点などあればぜひご教示いただきたいです。

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