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エネルギーから時間へ:コウノトリの渡りの優先事項が年齢とともにシフト


コウノトリの渡りの発達メカニズムを解明する研究


コウノトリの若鳥から成鳥までの渡りの習性を長期追跡した興味深い研究結果が発表されました。

ドイツの研究チームは、2013年から2021年にかけてGPSと加速度計を使って、南ドイツで生まれた258羽の若いコウノトリの渡りを追跡しました。その結果、コウノトリは年齢とともに渡りのパターンを変化させることが明らかになりました。

若鳥は、エネルギー効率の良い飛び方で新しい場所を探索しながら、渡りのルートや時期について学習します。一方、経験を積んだ成鳥は、既知の最適ルートを使って素早く目的地に到達します。特に春の渡りでは、成鳥はこれまでのルートから新しいショートカットを編み出す様子も観察されました。

また、若鳥は渡りの期間が長く、途中の立ち寄り地で多くの時間を過ごすのに対し、成鳥は渡りの期間が短く、休息時間も少ないことがわかりました。成鳥は、繁殖地の良い場所を確保するために早く到着する必要があるためと考えられます。

さらに加速度計のデータから、成鳥の飛翔はエネルギー消費が大きいことも示されました。若鳥の学習と探索は、エネルギー効率を重視した渡りから、時間短縮を重視した渡りへの移行に重要な役割を果たしていると考えられます。

今回の研究は、長距離渡りをする鳥類が、個体学習によって徐々に渡りの習性を洗練させていく様子を詳細に明らかにしたものであり、渡りの発達メカニズムの理解に大きく貢献するものです。渡り鳥の保全を考える上でも重要な知見となるでしょう。

コウノトリとは

コウノトリは、コウノトリ科に属する大型の渡り鳥で、長い脚と首が特徴的です。彼らは白、黒、灰色の羽を組み合わせた独特の外観を持ち、多くの種は鮮やかな色の嘴を持っています。コウノトリは南極大陸を除くすべての大陸に生息しており、ほとんどの種はヨーロッパ、アジア、アフリカの温暖な地域に生息しています。北米に生息するのはウッドストークのみです。

コウノトリは肉食性で、魚、カエル、昆虫、カタツムリなど、水中またはその近くに生息する幅広い動物を餌にしています。狩りの方法は種によって異なり、敏感な嘴を使って水中の獲物を探すものもいれば、獲物を見つけてつかむものもいます。コウノトリは、踊るような動きや大きな嘴の音を立てるなど、ユニークな求愛行動で知られています。両親は協力して、木の枝を使って高い場所に巣を作り、平均5羽のヒナを育てます。若いコウノトリは、3〜5歳で自分の家族を持つ準備ができます。

コウノトリは、人間の文化や神話において重要な役割を果たしています。ヨーロッパの民間伝承では、白いコウノトリが赤ちゃんを新しい親のもとに運ぶことで有名であり、幸運と繁栄のシンボルとして見られることが多いです。また、コウノトリは様々な文化の物語、神話、民話にも登場します。

資料

https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2306389121


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