科学雑学

科学の雑学や知識を紹介していきます。

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最近の記事

サルの自由なエサ探し行動から脳の意思決定メカニズムに迫る

はじめに 動物にとって、エサを探すことは生きていくために欠かせません。どこでエサを探すか、見つけたエサ場をいつ離れるかを、常に決めなければなりません。これまでの脳研究では、サルを椅子に座らせて頭を固定し、決められた手順で反応させる実験しかできませんでした。これでは、エサ探しの連続的な判断の仕組みは分かりません。体が拘束されると、サルの時間の感覚もゆがむかもしれません。そこでこの研究では、サルの頭に電極を付け、無線で脳の活動を記録しながら、2か所のエサ場を自由に行き来して

    • 馬とのパートナーシップがロボット開発の鍵を握る

      人間と馬の関係から学ぶ、ロボットとの効果的な協働フロリダ大学の研究者たちは、人間とロボットの関係構築に役立つ洞察を得るために、人間と馬の関係に着目しました。馬は約1万年前から人間と強い協働関係を築いており、食料生産、輸送、戦争などに大きな影響を与えてきました。 研究者たちは、フロリダ大学の馬の訓練施設で1年間のフィールドワークを行い、馬と人間の特別な相互作用を観察しました。その結果、ロボット設計者や人間-ロボット相互作用の研究者に応用できる知見が得られました。 例えば、

      • 人間社会に適応する都会のキツネ:その大胆な行動の裏に隠された真実

        ベルリンのキツネ、都会で生き抜くための予想外の戦略とは? ドイツの首都ベルリンに住むキツネは、田舎のキツネとは大きく異なる行動パターンを示していることが、最新の研究で明らかになりました。都会のキツネは、人間の活動に適応するために、より大胆で機敏な行動を取っているようです。 しかし、驚くべきことに、彼らは人通りの多い安全な道を避け、事故のリスクがある高速道路や鉄道沿いを好んで移動しているとのこと。一体なぜこのような危険を冒すのでしょうか? 研究者は、長年の狩猟の歴史が、キ

        • 野生のネコの進化を解明:社会性だけが脳に影響を与えるわけではない

          ライオンからチーターまで:ネコ科の脳構造に隠された進化の秘密野生のネコたちの脳についての最新研究が、我々がこれまで信じていたこととは異なる驚きの事実を明らかにしました。ミシガン州立大学の神経科学者、Sharleen Sakai博士が率いるこの研究は、野生のネコの脳は人間やその他の霊長類とは異なる進化のプレッシャーを受けていることを示唆しています。 例えば、ライオンやチーターのような社会的なネコ科の動物と、ヒョウのような単独行動を好むネコの間で、脳の前頭葉のサイズに顕著な違

        サルの自由なエサ探し行動から脳の意思決定メカニズムに迫る

          重力波が解き明かす宇宙の新たな謎:中性子星と質量ギャップ天体の衝突

          重力波で宇宙の「ミッシングリンク」を発見!?中性子星と謎の天体の衝突が観測される2023年5月、重力波検出器が中性子星と謎の天体の衝突を捉えました。この謎の天体は、「質量ギャップ天体」と呼ばれる、ブラックホールと中性子星の中間に位置する天体です。 質量ギャップ天体は、理論上その存在が予測されていましたが、これまで観測例がほとんどなく、宇宙の進化の謎となっていました。中性子星は太陽の約2.3倍までの質量を持ち、ブラックホールは通常5倍以上の質量を持つとされていますが、その中

          重力波が解き明かす宇宙の新たな謎:中性子星と質量ギャップ天体の衝突

          恐竜時代の化石が明かす哺乳類の進化の謎

          1億6400万年前の化石研究が進化の謎に新たな光 ジュラ紀の地層から発掘された1億6400万年以上前の化石が、現生哺乳類の進化の謎を解き明かすカギとなるかもしれません。中国、アメリカ、オーストラリアの研究者たちによる2つの新しい研究により、当時ネズミ程度の大きさだったシュオテリウム類と呼ばれる生物の化石が分析されました。 シュオテリウム類の歯と耳の特徴を詳しく調べたところ、これまで考えられていたよりも、ドコドンタ類と呼ばれる別の生物のグループに近いことがわかりました。この

          恐竜時代の化石が明かす哺乳類の進化の謎

          約3000年前のオーストラリア先住民 ー 土器作りと島々との交流の証拠

          オーストラリア北東部の島で土器発見オーストラリア北東部の沖合に浮かぶリザード諸島で、約3000年〜1800年前に先住民が土器を作っていたことが分かりました。 オーストラリアの研究者たちが島の遺跡を発掘したところ、2950年〜1815年前の土器の破片82点が見つかったのです。調べてみると、土器は島で取れる砂や粘土で作られていました。オーストラリアの先住民が土器を作っていたという発見は、これが初めてのことです。 また、約6500年前には先住民がすでに島に渡っていたこともわか

          約3000年前のオーストラリア先住民 ー 土器作りと島々との交流の証拠

          魚類の祖先の起源と進化の謎が解明

          魚の祖先はどこから来たのか? 進化の謎が明らかに魚は私たち人間の食卓に欠かせない存在ですが、その起源と進化の歴史についてはまだ分かっていないことが多くあります。しかし、このたびフランスの研究チームが画期的な発見をし、魚の進化の謎の一部が解明されました。 これまで科学者の間では、現在の魚の大部分を占める「真骨魚類」の中で、「アロワナ」と「ウナギ類」のどちらがより古いグループなのかで意見が分かれていました。アロワナは、観賞魚としても人気の高い魚で、ウナギ類には、ウナギやアナゴ

          魚類の祖先の起源と進化の謎が解明

          霊長類社会の進化を探る:ペア生活が起源だった可能性が浮上

          霊長類はもともとペアで暮らしていた?長年、サルやチンパンジーなどの霊長類の祖先は1匹で暮らしており、そこからペアや群れを作る生活へと進化したと考えられていました。ところが、この定説が覆される研究結果が発表されました。 フランスとスイスの研究チームは、200種以上の野生霊長類を詳しく調べました。1つ1つの種だけでなく、同じ種でも生息地によって社会の形が違うことにも着目しました。すると、霊長類の祖先はペアで暮らしていた可能性が高いことが分かったのです。 従来の研究では、夜行

          霊長類社会の進化を探る:ペア生活が起源だった可能性が浮上

          紀元前3000年頃のヤムナヤ文化で馬の騎乗が行われていた証拠が発見される

          ユーラシア草原の覇者ヤムナヤ人、その成功の鍵は「馬の騎乗」ヤムナヤ文化の人々は紀元前3000年頃から馬に乗っていた ルーマニア、ブルガリア、ハンガリーの古墳から発見された人骨が新たな証拠に ヨーロッパの研究チームは、ルーマニア、ブルガリア、ハンガリーのヤムナヤ文化の古墳から出土した人骨を分析し、紀元前3021年~2501年の個人が頻繁に馬に乗っていた証拠を発見した。馬の家畜化は紀元前3500年~3000年頃に始まったとされるが、実際に騎乗していた確実な証拠はこれまでなかっ

          紀元前3000年頃のヤムナヤ文化で馬の騎乗が行われていた証拠が発見される

          エネルギーから時間へ:コウノトリの渡りの優先事項が年齢とともにシフト

          コウノトリの渡りの発達メカニズムを解明する研究 コウノトリの若鳥から成鳥までの渡りの習性を長期追跡した興味深い研究結果が発表されました。 ドイツの研究チームは、2013年から2021年にかけてGPSと加速度計を使って、南ドイツで生まれた258羽の若いコウノトリの渡りを追跡しました。その結果、コウノトリは年齢とともに渡りのパターンを変化させることが明らかになりました。 若鳥は、エネルギー効率の良い飛び方で新しい場所を探索しながら、渡りのルートや時期について学習します。一方

          エネルギーから時間へ:コウノトリの渡りの優先事項が年齢とともにシフト

          ハエトリグモの生物の動きに対する認識能力について

          ハエトリグモの視覚メカニズム最新の研究で、ハエトリグモが生物の動きを認識し、無生物の動きと区別できることが明らかになりました。イタリアのパドヴァ大学の研究チームが行った今回の実験により、これまでヒトや他の脊椎動物でしか確認されていなかった「バイオロジカルモーション(生物の動き)」の認識能力が、無脊椎動物であるクモにも備わっていることが初めて示されました。 研究チームはハエトリグモに対し、点のみで構成された様々な動く図形を見せる実験を行いました。その結果、クモは歩くクモの関節

          ハエトリグモの生物の動きに対する認識能力について

          サメも睡眠で体を休める研究チームが代謝と行動を分析

          サメの睡眠、代謝を初めて測定ニュージーランドの研究チームが、サメの睡眠中の代謝を初めて測定し、睡眠が省エネルギーに役立つことを発見しました。 研究対象となったのは、ニュージーランド北東部のハウラキ湾に生息するドラフトボードシャークです。7匹のサメを捕獲し、屋外の水槽で飼育。48時間の絶食の後、呼吸代謝チャンバーに入れ、24時間にわたって酸素消費量を測定しました。同時に、ビデオ録画で目の状態と体勢も観察しました。 研究チームは、サメの活動状態を「遊泳中」「5分未満の休息」

          サメも睡眠で体を休める研究チームが代謝と行動を分析

          ワニの驚異的な潜水能力の秘密がヘモグロビンの特殊な性質にあることが明らかに

          ワニの潜水能力の謎を解明!ヘモグロビンの新機能は複雑な進化の産物だった ワニは1時間以上も息を止めて水中に潜ることができる驚異的な能力を持っています。この能力により、ワニはシマウマなどの大型の獲物を水中に引きずり込んで溺死させることができるのです。米国の研究チームが、ワニのこの能力の秘密が、酸素を運ぶタンパク質・ヘモグロビンの特殊な性質にあることを突き止めました。 ワニのヘモグロビンは、重炭酸イオンという物質と結合することで、酸素親和性を変化させることができます。潜水中は

          ワニの驚異的な潜水能力の秘密がヘモグロビンの特殊な性質にあることが明らかに

          鳥類の脳の進化における新発見 ー 恐竜から現代の鳥類への壮大な旅

          鳥類の脳の進化の謎を解明 ー 恐竜時代からの大変身 米国とアルゼンチンの研究チームは、現生の鳥類約2000種と、化石の鳥類や恐竜を含む過去の鳥類の脳と体の大きさの関係を詳細に分析しました。その結果、鳥類の脳の進化の道のりには、これまで考えられていた以上に複雑で劇的な出来事があったことが明らかになりました。 約6500万年前の白亜紀末に起きた大量絶滅は、鳥類の脳の進化に大きな影響を与えました。絶滅を生き延びた鳥類の多くは体のサイズを小さくすることで、相対的に脳を大きくしたの

          鳥類の脳の進化における新発見 ー 恐竜から現代の鳥類への壮大な旅

          クジラの歌声が明かす驚きの日周移動 ―マウイ島沖で発見された新たな生態―

          ザトウクジラのオスが求める「最高の歌声空間」ハワイ州マウイ島の沖合では、冬の間、ザトウクジラのオスたちによる歌声が海中に響き渡ります。最新の研究で、この歌声のパターンを詳しく調べたところ、ザトウクジラたちの驚くべき生態が明らかになりました。 研究チームは、マウイ島沖の5か所に水中マイクを設置し、ザトウクジラの歌声を記録しました。その結果、歌声のレベルが日中は沖合で上昇し、逆に海岸近くでは低下することが分かりました。さらに、目視調査の結果、子クジラを連れていないクジラのグル

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