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霊長類社会の進化を探る:ペア生活が起源だった可能性が浮上


霊長類はもともとペアで暮らしていた?

長年、サルやチンパンジーなどの霊長類の祖先は1匹で暮らしており、そこからペアや群れを作る生活へと進化したと考えられていました。ところが、この定説が覆される研究結果が発表されました。

フランスとスイスの研究チームは、200種以上の野生霊長類を詳しく調べました。1つ1つの種だけでなく、同じ種でも生息地によって社会の形が違うことにも着目しました。すると、霊長類の祖先はペアで暮らしていた可能性が高いことが分かったのです。

従来の研究では、夜行性の霊長類は1匹で生活していると思われがちでした。しかし実際のデータを見ると、多くが夫婦のようにペアで行動していました。霊長類の祖先が小さな体だったことも考え合わせると、最初はペアで暮らしていたとするのが自然な解釈だと研究チームは述べています。

また、同じ種の中でも、1匹で過ごしたり、ペアになったり、群れを作ったりと、暮らし方は実に様々でした。霊長類は周りの環境に合わせて、暮らし方を柔軟に変化させてきたのでしょう。

体の大きさと昼夜の生活リズムが、霊長類の社会の進化に大きな影響を与えてきたことも分かりました。夜行性の小型種はペアで、昼行性の大型種は群れを作る傾向があるようです。

霊長類の進化の物語

霊長類が地球に現れたのは、恐竜が絶滅した約6600万年前と考えられています。最初の霊長類は、虫を食べる小さな夜行性の哺乳類から進化しました。

約5600万年前、北米とユーラシアで原始的な霊長類の化石が見つかっています。当時の温暖な気候のおかげで、霊長類は北の地域にまで広がることができました。しかし、その後の寒冷化で北米とヨーロッパの霊長類は絶滅し、アフリカとアジアで生き残りました。マダガスカルには、植物でできた「いかだ」に乗って渡ったと考えられています。

約3400万年前、原猿類が登場しました。原猿類がどこから来たのかは分かっていませんが、中国の化石「Eosimias」が有力な候補です。それから約2300万年前、類人猿が多様な形に進化しました。代表的なものが、ケニアとウガンダで見つかった化石の「Proconsul」です。

中新世の後期に地球が冷え込むと、ユーラシアとアフリカの類人猿のほとんどが絶滅しましたが、ヒト上科は生き残りました。アフリカでは森林が減ったため、代わりに旧世界ザルが大繁栄しました。そして510万年〜260万年前、ヒト上科が多様な形に進化し、20万年前までにホモ・サピエンス(現生人類)が誕生したのです。

資料

https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2215401120


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