読書メモ:快の錬金術

快の錬金術―報酬系から見た心
岡野 憲一郎 (著)、岩崎学術出版社、2017年

何が人を動かすのかがテーマの精神科学研究者による一般向けに書かれた本である。著者は報酬系が鍵だとする。

図書館で借りたのだが、時間がなくて興味のあった線虫の部分以外は読み飛ばしてしまった。

中学校か高校だかで、動物の行動は、反射、走性、本能、学習で、学習が偉いんだというようなことを習った。そのような背景があって、哺乳動物や鳥は苦しめてはいけないが、昆虫には配慮する必要がないような意識(法律も)が広く行き渡っている。ところが、ヒトも線虫も行動の動機には共通する部分があるらしい。

土壌中に住む線虫Caenorhabditis elegansは体細胞は約1000個で、神経細胞は302個しかない。ヒトの体細胞が36兆個、脳細胞が860億個であるのと比べものにならない。2015年に九州大学のグループがこの線虫が尿に含まれるがん細胞から出る化学物質に魅かれて泳ぐことを発見した。この線虫を用いたがん検査サービスが商業化されている。

著者は、線虫は尿の中で好む化学物質の濃度勾配を感じて、薄い方から濃い方へ向かうことに報酬を感じているという。ヒトである私たちが快楽や幸福を感じることは神経の報酬系が関わっているらしい。最近よく話題に上がるのはオキシトシンやドーパミンだ。

実は、線虫の行動にもドーパミンが関わっている。嫌いなにおいをかがせるとそれを学習して逃げるがその学習にドーパミンがかかわっているという研究が大阪大学のグループによって報告されている。

幸福な人のなり方(報酬系の制御)についても書かれているようなので、そのうちに再読してみたい。

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