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ヨーロッパ文化教養講座「ダウントン・アビー」イーディスについて

2022/11/20
ダウントン・アビーTVドラマシリーズのBDボックスの特典映像に、脚本のジュリアン・フェロウズとプロデューサーのガレス・ネアムの対談があった。

それぞれ、シリーズ全体で好きなシーン、印象に残ったシーンを語り合うものだが、その一つに、かわいそうなイーディスのシーンがあった。

イーディスのかわいそうなシーンはたくさんあるが、特に、S3 E3で、サー・アンソニー・ストララン(演  ロバート・バサースト)に結婚式寸前で、「NO」と言われるシーンが、最も衝撃的だと思う。

結婚式で新婦が逃げるシーンは、直ぐに、「卒業」のキャサリン・ロスと「男はつらいよ」の桃井かおりを思い出すが、新郎ができないと言い出すのは、はじめてだ。

このシーンについては、1番最初に観たときは、「イーディスがかわいそう、ストラランは酷い」と単純に思っただけだったが、その後、いろいろと考えた。

突き詰めるところ、イーディスは何故、自分より遙かに年上の男性と結婚することにしたのか?ということである。

多分、この時代の貴族の令嬢は、家のために年上の男性と結婚すること自体は、それほど珍しくはなかったものと推測される。ただ、少なくともイーディスに関しては、家のために結婚するという必要はなかったはずなので、ある程度、相手については選択肢があったはずだ。

世の中には、本当に稀に、自分より遙かに年上の男性が好きな女性がいることはいるとは思うが、イーディスに関しては、タイタニック号沈没事故で犠牲になった、メアリーの婚約者にも気があったようだし、最終的には、同世代の侯爵と結婚したのだから、とりわけ、年上が好きだということでもないだろう。

これについては、プロデューサーのガレス・ネアムが、興味深いコメントをしていて、イーディスは、思い込みの激しい性格であるため、一度、ストラランと結婚すると決めたら、そのこと自体が目的となってしまう。ということだと言う。
なるほど、多分、ストラランと結婚するということの発想は、モテモテの華やかなメアリーの鼻を明かし、ダウントン・アビーから卒業することができるという、自分の恋愛感情以外のことから、湧き上がったものだとしても、もうそのことが目的化してしまい、ストラランを引っ張ったということかもしれない。

それにしても、結婚式の場面でダメ出しをするなんて、あんまりだと思ったが、ジュリアン・フェロウズによると、イーディスは、世の中にはたくさんいる、なかなか幸福になれない人として描きたかったということなので、残酷なシーン(の一つ)になったのだろう。

ストラランの決断を、バイオレットがちゃんと引き受けて、ストラランを大人しく、退場させたのも良かった。ストラランは、やりかたはともかく、本当にイーディスの幸せを考えて、退場したのだから、これはこれで、最終的には、賞賛されても良いと思う。

TVドラマシリーズが続いていたのなら、ストラランの死の床に、イーディスが夫のバーティ・ペラム〈ヘクサム侯爵〉を連れていき、「貴方のおかげで幸せをつかみました。」というシーンがあっても良いかなと思った。


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