見出し画像

ヨーロッパ文化教養講座(「郵便配達は二度ベルを鳴らす」ルキノ・ヴィスコンティ鑑賞記)

2023/01/18
モドローネ伯爵ルキノ・ヴィスコンティ監督の初長編作をWOWWOWで鑑賞した。

まず、驚いたのが、公開が1943年イタリア王国ということ。
第二次世界大戦の敗戦国イタリアでは、ファシスト党のムッソリーニ政権が崩壊した年なので、撮影はいつかはわかないが、よくこの時期に公開できたのだと思った。

同名の作品を、リメイクなのか、見た記憶があったが、筋書きは全く覚えていなかった。

 舞台は川沿いのトラットリア。
 行政の中心はフェッラーラ(行きたい都市の候補の一つ)なので、ポー川沿いだとわかる。

 トラットリアの主人ブラガーナ(演 ファン・デ・ランダ)は、いつも椿姫の「プロヴァンスの海と陸」を口ずんでいる、初老の肥満体だが金はある。
 かなり年下の美人妻、ジョヴァンナ(演 クララ・カラマイ)は、ブラガーナと、お金のために結婚し、今はトラットリアの台所で一日中こき使われている。

 そこに風来坊で文無しの、ジーノ(演 マッシモ・ジロッティ)が、立ち寄り、一目でジョヴァンナとジーノは恋に落ちる。

 この3人のシーンは、BGMが不気味で、観客はすぐに、「ああ、この2人でこの主人を殺すんだな」と解る。
 ジョヴァンナが使っている肉切り包丁だとか、ジーノのひげそりの鋭い刃が目に焼き付く、凶器は刃物かな?と思う。

 交通事故を装って殺したあとは、2人の関係性に変化ができてジーノがフェッラーラの若い踊り子(と、いっても多分娼婦)と浮気したり、警察も他殺ではないかと疑って捜査を続けたりと、話は続く。

 2時間ちょっとの映画だが、白黒で、音質も悪く、CGもなく、といった、かえって今にない新鮮な感じと、ヴィスコンティ監督の演出や画面づくりが上手いのか、全く冗長性を感じなかった。

 この映画でヴィスコンティ監督が何を言いたかったのか、また、題名の意味は何なのかは、残念ながら良く解らないが、
 ジーノの風来坊気質が、ジョヴァンナの妊娠を知って突然変化し、荒削りで、自由な魅力が無くなってしまったことが、とても印象的だった。
 また、ヴィスコンティ監督が、バイセクシュアルだと知っていると、ジーノと旅芸人スパニョーロ(スペイン人の意味)の友情が恋愛関係に見えてくるのも興味深かった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?