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ヨーロッパ文化教養講座(ボッティチェッリの「ダンテ神曲の挿絵」)

2023/03/22

WOWWOWのアートドキュメンタリーでボッティチェッリを取り上げていた。

ボッティチェッリ(1445年~1510年)は、フィレンツェのウフィツィ美術館に飾ってある、「春」「ヴィーナスの誕生」で世界的に有名なルネサンスの画家である。

このドキュメンタリーは、ボッティチェッリが当時のフィレンツェを支配していたメディチ家のロレンツォ・デ・メディチ(ロレンツォ豪華王 1449年~1492年)に依頼されて(というより、命じられて)制作した、ダンテの「神曲」の挿絵を中心に取り上げている、ユニークなものであった。

トム・ハンクスが主演したロバート・ラングドン教授シリーズ第3弾の「インフェルノ」で、プロジェクターに映し出された「地獄の見取り図」が、このダンテ神曲の挿絵の一枚である。

挿絵は、制作時には102枚あったとされているが、現存は、92枚だそうだ。
7枚がバチカンの美術館にあり、残りの85枚はイタリアではなく、ドイツにあるそうだ。

ボッティチェッリは、今でこそ、西洋絵画ファンで知らない人はいないが、死後は忘れ去られていたそうだ。それは、ボッティチェッリが、ロレンツォ豪華王の死後、フィレンツェの政権を取ったサヴォナローラに信奉してしまい、それ以後ルネサンスの精神を忘れたような絵を描いたことも影響しているかなと思った。

そして、近代になり再評価された。
これらの挿絵は、スコットランドの公爵家のものになっていたそうだが、その後子孫が道楽で財産を食い潰し始め保有財産の売却を始めざるを得なくなったとき、ドイツ(当時はプロイセン)の美術館館長?が購入を申し出て、現在価額1000万ユーロで買い取った。そのため、現在これらの挿絵の大部分は、ドイツにある。

7枚のバチカン保有の挿絵は、スウェーデンにあったものを譲り受けたそうだが、その中に、「地獄の見取り図」があったらしい。

残りの10枚は果たしてどこにあるのだろう。

「地獄の見取り図」を見ると色彩豊かであるが、現存92枚の内に、彩色されたものは4枚しかなく、ボッティチェッリが何らかの理由で完成できなかったというのも、ミステリーだと思った。

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