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ヨーロッパ文化教養講座(2024年3月13日「リアルショパン」@アクロス福岡 鑑賞記)

2024/03/14
一度生演奏を聴きたいと思っていた、ユリアンナ・アヴデーエワ、トマシュ・リッテル、川口成彦、3氏が一同に会するコンサートということで、福岡まで聴きに行った。

日時:2024/03/13 開場:18時半 開演:19時
会場:福岡シンフォニーホール(アクロス福岡)
出演者:
ユリアンナ・アヴデーエワ: 2010年ショパンコンクール第1位
トマシュ・リッテル: 2018年ショパンピリオド楽器コンクール第1位
川口成彦: 2018年ショパンピリオド楽器コンクール第2位
18世紀オーケストラ

プログラム:
1) モーツァルト: 交響曲第40番 ト短調 K.550
2) 藤倉大: Bridging Realms for fortepiano
(第2回ショパン国際ピリオド楽器コンクール委嘱作品/日本初演)
*川口成彦(ピアノ)
3) ショパン: ポーランドの歌による幻想曲 op.13
*川口成彦(ピアノ)
4) ショパン: 演奏会用ロンド「クラコヴィアク」 op.14
*トマシュ・リッテル(ピアノ)
5) アンコール:
メンデルスゾーン「無言歌」より、「羊飼いの嘆き」op.67-5
*トマシュ・リッテル(ピアノ)

休憩
6) ショパン: ピアノ協奏曲第1番 ホ短調 op.11
*ユリアンナ・アヴデーエワ(ピアノ)

コメントと感想:
1.独奏者は豪華メンバーだが、古楽器の演奏会ということもあり、敷居が高かったのか、観客は約半分ほどだった。

2.1)のモーツァルトの40番は、ヴァイオリンとヴィオラ奏者は立って演奏。
(バッハ・コレギウム・ジャパンのコンサートマスター若松夏美さんが、金髪に染めているのに気がついた。)
(すでにフォルテピアノは綿密に調律されピアニストの顔が正面を向く位置に設置してある。)

この時代は指揮者がいなかったということで、第1楽章の入りは、ヴィオラの首席と思われる男性(多分 Emilio Moreno氏)が指示を出した。
2楽章以降は主に、コンマス(コンミス)のKati Debretzeniさんが、入りの指示をしたり時々右手で指揮をしていた。
ショパンの時代はこのようにして、テンポを合わせていたのだろう。

演奏は、古楽器の弦の掠れるような倍音の多い音色と、音量とピッチのコントロールが難しいようで時々ビックリするような強音を出す金管楽器もほぼ安定していて、とても好きなモーツァルトの40番だった。

3.モーツァルトが終わって、オケが一度袖に戻ると、譜面台を低くして、椅子を運んで通常のオケの配置に戻るとオケが再入場、そして、テレビでは何度もお馴染みの川口成彦さんが登場。
2)の藤倉大氏の曲をソロで弾いた。

曲は、小生には、通常の13弦の琴と17弦の琴のアンサンブルを意識していると思った。
でも、解説書によると、藤倉大氏は、ガムランをイメージしたと言っている。
いずれにしても、フォルテピアノの音の特長を良く出した曲だと思った。

4.3)と トマシュ・リッテルさんが弾いた4)は、どちらも、オケとフォルテピアノの曲だが感じがかなり違う。

川口成彦さんが弾いた、3)ポーランドの歌による幻想曲は、比較的短い曲なのに、曲想がハッキリと移り変わり、ピアノの柔らかい音も生かしながら、最後はフォルテのプレストで盛り上がって終わる。

トマシュ・リッテルさんが弾いた、4)演奏用ロンド「クラヴィアク」は、最初から最後までオケが豊かな音を出し、ピアノも超絶技巧で弾きまくって終わる感じがする。

両方とも初めて聞いた曲だが、ショパンの曲でオケが付いているというと、ピアノ協奏曲第1番、2番、反田恭平+JNRコンサート@東大寺で聞いたアンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズくらいしか、知らなかったので、とても新鮮だった。

5.5)盛り沢山のプログラムなので、アンコールはないだろうと思っていたら、トマシュ・リッテルさんが、一番出番が短いからか、メンデルスゾーンの曲をアンコールで弾いた。

6.休憩20分をはさんで、時間はすでに、20時40分。
後半はいよいよアヴデーエワさんの協奏曲第1番。
先ずは、どんな服装で登場するか? いつもの黒ずくめのパンタロン姿か?
正解は、確かに黒ずくめのスーツにパンタロン姿と黒いヒールだが、全身が夜空の星の様にキラキラ光ってとても素敵だった。

6)プレイエルに座って、オケの長い序奏を待ち、そしてフォルテで鍵盤を叩く。アヴデーエワさんの演奏スタイルの特徴は、体を左右に大きく揺らすことだと気がついた。
特に、今回は指揮者がいないので、コンミスに顔を向けたり、管楽器との掛け合いでは、顔を大きく動かしたりして、テンポを慎重にコントロールしているのが、良くわかった。
演奏技術はもちろん素晴らしいが、フォルテピアノの綺麗な弱音を丁寧に出しているのを実感した。
スタインウェイなどを弾くときと、比べてどのようなところが違うのか、是非知りたいと思った。

あっという間に、感動のフィナーレとなり、充実したピリオド楽器のコンサートは幕を下ろした。

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