12のアルバイトから得た知見  其の一

アルバイト、時間と引き換えにわずかな小遣いをもらう。

時間対効率は悪いかもしれないけど、実地体験しながらお金がもらえると思えば、得をしてるような気分になる。

僕は(もちろんお金が必要だという理由もあったけど)その体験が好きで色んな店に乗り込んでは面接を申し込んだ。そして数ヶ月後には辞めていた。

そんなことを繰り返しながら、気づけば12のアルバイトを経ていた。少しは経験則で話せるようになったと思う。最初はどんなバイトが楽でどんなアルバイトが面白いかなんてさっぱりわからなかった。「アルバイトのコツ」を調べたりもしたが、なかなか参考になる記事も見当たらなかった。

そんな、過去の僕が読みたかった記事を、せっかくだから今自分で書いてみようと思う。一度に全部書くなんてことはできないから、週一回、少しづつ。

結局やってみなきゃわからないんだけど、参考程度にはなると思う。

僕が初めてアルバイトをしたのは高校2年生の時、大手ファストフードチェーン店だった。とりあえず最初だし、大手は間違えないだろうという考えでインターネットから応募した。結論から言うと、この選択は正しかった。次項ではその選択がなぜ正しかったのかを、順を追って説明する。


目次

・大手チェーン店でアルバイトするメリット

・大学生の後輩

・「良いバイト」たる3つの指標


大手チェーン店でアルバイトするメリット


アルバイトを経験したことがない人には、スターバックスやマクドナルドなど、大手フードチェーン店も有益な選択肢であると伝えたい。なぜならそれらの店は「広く売れている」からだ。

「広く売れている」と何が良いか。

まず、マニュアル整備と研修環境が整っているため初心者でも他の人との差が付きにくい。小規模経営のお店だとそうした環境が手薄なことが多く、アルバイト未経験者が入り口でつまずき辞めるということが多々ある。

次に、大手フードチェーンで働くと基本的な社会的マナーは一通り身につく。なぜなら、商品は美味しいだけでは売れないからだ。

例えば、スターバックス。スターバックスはテーマパークである。Short,Tall,Grande,Ventiなど多様なサイズで売られているドリンクはいわば入場券、そして軽やかな口調と手つきでコミュニケーションをとり入場券を渡してくれるスタッフこそが、私たちアルバイトというわけだ。

売れている店はその多くが上記のような、店の「世界観」に重点を置いている。世界観の構築においてお客に快適に過ごしてもらえるよう、スタッフの教育は必要不可欠である。そのため、前提条件として自分達アルバイトには社会的なマナーは身につけさせねばならないのだ。

以上の理由により、僕は最初のアルバイト先を大手フードチェーン店にしてよかったと感じている。


大学生の後輩


アルバイトを始めて2ヶ月と経たないうちに後輩ができた。大学3年生だった。

高校生の僕はもちろん、タメ口で先輩ぶるようなことはしなかったけれど、困っているのは大学生(以下渡辺さん)の方だった。敬語とタメ口が入り混じった口調で話しかけてきたり、作業手順を教えてる最中に関係無い器具をいじってみたり。

次の日出勤してきた渡辺さんは僕が教えた全てのことを忘れていた。ということが5回ほど続いた。

オーダーがきたら「ポン」と鳴るからそこでオーダー表を確認といっても音に反応しない。そうした姿をみて、年齢関係なくそもそも「できない人」という説は濃厚になっていたのだけど、とあることでその思いは確信に変わり、ついでに知見も得ることができた。


数回の出勤を経て少しづつ仕事ができるようになってきた時のこと。お客が少なく手が空いている時は近辺掃除をしましょうと言っていたのだけど、その人はしれっとムーンウォークやパントマイムをし始めた。ああ、この人はそういうことをしてしまう人なのかと思って眺めていたのだが、その時にふと、気付いたことがあった。

渡辺さんは僕に凄いと思って欲しかったのかもしれない。年上として、年下に認められないと素直に話を聞けない恥ずかしさがあったのかもしれない。

僕はムーンウォークもパントマイムもできるので1ミリも感動なんてしなかったけれど、「年上」という恥ずかしさは時が生むものだから取り返しはつかない。何事も早いに越したことはないのだと、改めて気づくことができた。

結局渡辺さんは2週間でアルバイトを辞めたけど、その人のおかげで「パフォーマンスはしていいタイミングとしてはいけないタイミングがある」という知見を得ることができた。

「良いバイト」たる3つの指標

良いバイトには様々な良い要因があるわけだけど、僕の中ではすでに、「良いバイト」たる3つの指標が確立している。

①良い仲間 ②良いお客 ③おいしいまかない

前提条件として僕はアルバイトが好きで人が好きだということがあるが、この指標を満たしている店は総じて仕事の質が高い。僕の体験を踏まえて説明する。

僕の場合、上記3つの指標がすべて揃っているバイト先は「鮨屋」だった。もちろん、回らない方の。

そこはアルバイト募集をネットでかけるようなことはしておらず、店頭に小さく募集中と書いてあるだけだった。「まかない有り」の表記を見た僕はすぐさま乗り込んだ。その時間はたまたま空いている時間だったらしく店長がすぐに面接の手はずを整えてくれた。優しい方だった。

面接を経て無事働き始めたのだが、初日で驚かされた。僕以外皆、同じ大学なのだ。その鮨屋の近くには知名度の高い国立大学があり、その店は代々その大学の生徒で受け継がれていた。知名度の高い国立大学である。皆んな最低限のマナーは心得ているし頭も良い。仕事が素早い。そうした人逹と仕事をすると自然と自分も頭が良い、「できる人」になった気分になる。

そして皆同じ大学だ。士気が強い。チームとしての連携があると仕事が格段に早くなる。仕事が早いとお客の満足度が高まる。結果、常に良くなり続ける循環が生まれるのだ。

また、回らない鮨屋で食事をするとなると安く収まることは無い。そのため来店するお客は綺麗なお嬢とお金持そうな男性という組み合わせや、祝い事、デートで来ている客など、ある程度層が絞られる。そうした人々は総じて行儀がいい。しかもほとんどの人が幸せそうな顔をしている。運んだお寿司をみて「わあ、綺麗」なんて言われると作ってもいないのにこっちまで嬉くて飛び跳ねたくなる。

そして、まかないがおいしい。鮨屋のまかないだ、毎回海鮮丼。も最高なんだけど、うちの店はなんと、まかない用の食材を別で発注していた。さすがにいつも海鮮丼は飽きが来るからと鮨職人の方々が提案したらしい。ハンバーグ、まぜそば、カレー、鮨職人が気まぐれで作ったまかないはどれもおいしかった。週末は海鮮丼。いそがしいからと乱雑にギッシリ詰めこまれた海鮮が本当においしかった。

良い仲間、良いお客、おいしいまかない。この三つが揃った店にはもはや死角など存在しないのではなかろうか。

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こんなことを毎週続けてみる。過去、未来の備忘録。













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