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ネットスラングに踊らされるな!~上級国民~

 4月20日、ツイッター上で「上級国民」というワードがトレンドに上がっていた。
 調べてみると19日に池袋で死亡事故を引き起こした男性を容疑者としてではなく「さん」付けで呼称した記事が出回った事が発端との事。
 そして、その事故の加害者が官僚より天下った元大手機器メーカー副社長で、受勲歴もあった事から「上級国民は特別扱い」などと囁かれた。
 さらに、21日に神戸の市営バス運転手が事故を引き起こし、現行犯逮捕された事から「この運転手は上級国民じゃないから逮捕」などと騒がれ始めている。
 結論から言うと『上級国民説』は全くのデタラメだ。
 なぜなら、刑法上、入院中などで逃亡や証拠隠滅の恐れのない加害者は逮捕出来ないからだ。
 そして、メディアも逮捕されていない人物を容疑者と呼ぶ事はない。
 だからこそ、容疑者ではなく「さん」付け報道がなされたのだ。
 一方で、神戸の事故は加害者が入院せず、通報によって駆けつけた警察官によって現行犯逮捕がなされたため、容疑者として報道された。
 だから、上級国民云々とはまるで関係ない。

 最も懸念すべきなのは、政治に関心のない人の中にも加害者の経歴への嫉妬からか、僻むようなツイートをし、日本の法治主義に疑念を抱くような意見が出始めている事。
 さらに「さん」付け報道をした新聞社の中に、特に保守層に受けの悪い社があったためか、本来日本の法治を一番信頼しているはずの彼ら保守層の中にも、この動きが見られる事だ。
 彼らの中には「退院後にどうなるか見もの」と、暗に逮捕されない事に含みを持たせた言い方をする者がいる。
 だが、基礎知識として入院や高齢等で長期の勾留に耐えられないと裁判所が判断した場合、勾留や逮捕の請求が却下される事がある点を押さえておいて頂きたい。
 そして、逮捕されず在宅捜査が進む中で、書類送検がなされ起訴後に初めて裁判所で有罪か無罪か判決が下る事になる。
 逮捕=有罪ではない。ましてや、上級国民だから逮捕勾留がなされない訳ではないのだ。

 今回の一件で、フェイクニュースが目の前で造られていく状況を目の当たりにし、私は戦慄を覚えた。
 そもそも、上級国民なる言葉は誰が言い始めたのだろう?
 私は、日本の法治体制に疑念を抱かせたい一部の偏った左翼革命論者達が、この造語を作り出し、あえてこの事件を利用している節もあると見ている。
 上級国民と言う発想自体がいかにも旧態然とした階級闘争主義を匂わせるのがその証左だ。
 このハッシュタグで上級国民説を肯定しているアカウントは、概ねフォロワー数の少ないサブアカウントなのも気になる所。

 どうか、あなただけは、このようなネットスラングに踊らされないで欲しい。
 SNSの良さは、自分で調べる事が出来る事。
私のような法律の素人でも、これぐらい調べられるのだ。
 今、この文章を見ているあなたにも決して不可能ではない。
 トレンドワードが常に正しいとは限らない。
 どうか、一度立ち止まり、自分で調べて考える事を止めないで頂きたい。

 最後に、情報提供を頂いたネットユーザー様に感謝と、この事故の被害者に対して哀悼の意を表し、本稿の結びとしたい。

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