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「知っている」という無知

人間は、生きている限り、すべてのものを知ることも経験することもできない。ごく限られた時間と場所と人間関係の中で、得られるもので世界を認識し、行動や生活をしていく。それは生まれながらにして「バイアス」がかかったようなもの。だから、常に「知らない」という見方を片隅におきながらいるのがちょうどよいのだ。

1、「知っている」とは何だろう

生活や仕事、あるいは趣味などで「知っている」とはどういう状況だろう。物事の状態や形状を認知し、それを言葉や数字、あるいは記憶として止め置かれている世界のある一瞬、それは時間を写真で切り取ったようなものかもしれない。

毎日はずっと流れている時間の中で、一瞬や一片が残る、ということはそれだけ印象が強く、そして何かの「関連性」や気付きがあることでしょう。

そうして「知っている」という領域を広げていくことが「視野」にもつながり、「考える」という思考の深さにもつながっていく。

もちろん、ただ「視野」や「思考」が広く、深ければいいわけでもない。相手に適した形で「思い出す」ことや、タイミングよく「伝える」ということもなければ、そんな知識は「無用」なこともあるし「傷つける」ことだってある。

ただ「認知」し「記憶」すればいいというわけでもないのです。

そうやって、人生を歩みながら蓄えられたことを通して、社会や世界を見渡すとき、ぼんやりと、あるいは急にうかびあがるものを、「問題」というのかもしれない。

2、「世の中」とは都合がいい言葉だ

よくある話に「世の中が」という枕詞がある。社会あるいは目の前に立ちはだかる壁や課題を包含するようなまとめの役割を担う言葉、それが「世の中」というフレーズなのだろう。

それを使うとなんだか「すべてを一括に捉えた」ような気分になる。でも、本当のところはわからない。まとめられているかもしれないし、知らない世界がそこにあるのかもしれない。

例えば、このコロナ禍で婚姻の数がこれまでの下降トレンドよりさらに減少し、将来のこどもの出生数に大きな影響を与えるだろうという推計。

失われた約11万件の婚姻によって、その先の21万人もの出生が失われるだろうというもの。ただでさえ、少子化が課題にもかかわらず、この減少というより、喪失が大きなインパクトを将来のことになるだろう。

出生が下がれば、親となる分母も減る。それはもっと先のこどもの数を、出生数が自然減等の影響をなしにしても2.0以上にならなければ、プラスには転じない。維持もできない。

外出制限ばかりが続いた制作は、「今の世代」を大切にする代わりに、「将来の世代」にその犠牲を強いた、というものです。

「世の中」の「今」はたしかに高齢化。ただし将来をつくるのは「将来」の「世の中」の人たち。私達は無意識に「世の中」という言葉を使って、自分たちの都合のいい切り口で切り取り、もしかしたら「誰か」に犠牲を追ってるかもしれないとすれば、恐ろしい「無知」な姿勢かもしれないのです。

3、「海外では」は、当事者意識を書く

また、同じように使われる言葉で「海外では」という言葉もあり、これも「日本」の今の状況と問題の根っこや根幹を切り離して、考えがちな言葉。もちろん、都合よく「海外と日本」を結びつける場合にも使われたりするから、厄介なものです。

「海外では」という例を出して日本を批判する

「海外では」という例を使うことで、日本は現状維持を支持する

大抵、この言葉が前に来るときは「都合の良い結論」が後にくるというのが定説。やっぱり「前提条件」を置くときは、他人や他者や遠い存在ではなく「自分」は「自分の周り」など、目の範囲における身近なところからスタートしたほうが、課題に向き合えると自社意識が生まれるのかもしれません。

4、「世界」とは「創造」である

この世界は、個々の幸せとは別な組織やグループ、集団同士で、「断絶」や「分断」が続いています。SNSを通して国や言語を超えてつながる一方で、所属や国籍、宗教や政治思考が人々の間に大きな亀裂をもたらしています。

「中央集権的」な社会から「個」の社会への転換期ゆえかもしれませんが、これ以上亀裂が進むと、せっかくの希望と幸せの「個」までも押しつぶされていしまうことでしょう。

「自律分散型」と言われる信頼を安定をもたらす社会には、すべての人が「当事者」である必要があります。誰かに託してではなく、自分が、自分の関わる世界に責任と貢献を持って接する。それはギブアンドテイクの精神かもしれないし、いや、一方的にギブし続ける総和が「分散型全体の幸せ」になるのかもしれません。

どんな世界が訪れようとも、あなたという存在は変わらない。さあ、「世界」への関わり方を考え直してみましょうか。一歩の総和で社会も世界も変えられるのですから。

日本と世界を飛び回った各地域の経験と、小論文全国1位の言語化力を活かし、デジタル社会への一歩を踏み出す人を応援します!