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【感想#3】小さな小さなコンパクトにこめられた、素敵なひみつ

「いい言葉が思いつかないわ」

そうぽつりと呟きながらも、砂浜で寄り添う姿や言葉にこめられた想いは劇場のシートひとつひとつにしっかりと届いて。心が抱きしめられてしまったなぁとしばし放心した。

『ひみつのなっちゃん。』(2023)
監督:田中和次朗


観てきました。
実は1月公開の中で個人的に一番楽しみにしていた作品。
それはもうなんと言いますか、ぼんやりとSNSを眺めていた時に突然現れた美しい黒髪の艶やかな方に一目惚れしてしまって……!

モリリン

…………おかっぱ!

普段なかなかお目にかかる機会が無いけれど、ショーダンサーなどをされている方に多い気がする黒髪ボブ(おかっぱ)の美女&美少年にとても弱すぎるのでもう、チケット予約した段階からウキウキだった。

ある日突然、伝説のドラァグクイーン・なっちゃんが亡くなった。なっちゃんの素性が家族や故郷の皆に知られない様、親友のバージン、モリリン、ズブ子の三人はドラァグクイーンではなく「ふつうのおじさん」として葬儀に参列することに……

こんな素敵なあらすじまで知ってしまったらもう、ウキウキも最高潮ですよ。そんな浮き足たつ気持ちのまま映画館に身を投じたわけですが。いろんなシーンに共感するし、気づかされるしで。コミカルながらも穏やかで優しく進んでいく物語の中で感情は大忙しでした。
わたしが亡くなっても、たぶん誰もわたしのひみつを守る為に家に侵入なんかしてくれないよ、すごい……って冒頭で既に感動していた。
人間誰しもひみつがあると思うので、それを分かち合い絆を深めた相手にはせめて、自分がいなくなった後どうして欲しいか伝えようかなと思ったりした。でも、亡くなった後の事はわたしには分からないので、のこされた人たちがやりたいことをやってくれたらいいとも思いました。……恥ずかしいひみつなどを暴露されるのはかなしいので、なんか、上手い感じに生きていきたいし健康に長生きもしたいですね。

話が逸れましたが。
もうとにかく登場人物皆が素敵なんですよ、愛嬌があると言いますか。表情や間に宿る演技と言いますか。そのひとつを取ってはその人の人となりを勝手に想像して、なんかどれも最終的にほっこりしてしまうんです。そんな中でもやはり主役の三人は本当に格別で。作品の中で三者三様の感情爆発を目の当たりにしたのですが、みんなキャラクター性が出ていて「これが内側から出る輝きか!」と膝を打ちました。
冒頭にも記した台詞ですが、このシーン本当にすきなんですよね。カミングアウトの事を巡るモリリンの告白を聞いて受け止めて、バージンさんが口にする言葉なのですが。
出来ない時は無理に励まさなくていい……!と言いきることは出来ないけれど、バージンさんの誠実さ、モリリンを想う気持ちが現れていて心にじんわりと届きました。
素敵すぎる。
大切な人たちが悩んだり落ち込んでしまっている時、励ましたくてもいい言葉が思いつかなくて。そんな時でも寄り添って、少しでもホッとできる空間を提供できるようになりたいな……ただただそう思いました。
仕草、特に手の動きが美しくて愛らしくて。思い描く“女っぽさ”が丁寧に意識された演技だなと感じてすきなのですが。それとは逆に、バージンさんが会社のパソコンで岐阜県の郡上八幡調べているシーンの女性のかしましさ、バージンさん含めてすごく現実感あって解像度が高くて、そこもすごくすきなシーンです。会社の仕事仲間の女性同士がしゃべるって本当にこんな感じ。テンポが良くて心地よくて、自分の一番すきな温度の湯船に肩までつかって「あ~」ってなっている感覚がしました。

ラストはなんとなく想像をしていたけれど、このしめくくりにたどり着くまで笑いあり涙あり、そして気づきありのころころ心地よく転がっていく盛りだくさんなストーリー、とても良かったです!

ほんとうの美しさを探す旅
それにたどり着いた時、彼女たちの内側の輝きはさらに増して、キラキラと輝いて見えました。


新宿ピカデリー
ポスターに大きな垂幕まで!



このポップコーンおいしすぎた

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