不安に対処するにはどうすればいいか――著書『あやうく、未来に不幸にされるとこだった』のご紹介

2024.2/16 TBSラジオ『Session』OA

Screenless Media Lab.は、音声をコミュニケーションメディアとして捉え直すことを目的としています。今回は、不安と音に関する研究、そして不安に関する書籍について紹介します。

◾不安と声の研究

当ラボではこれまで、不安に関する研究等をご紹介してきました。

例えばコロナ禍においては、様々な音声配信プラットフォームを利用することで、気軽に声だけで音声配信をはじめる配信者に注目が集まりました。声を出すことが、精神的な安定、つまり不安の抑制につながったのです。

また、声はやすらぎを与えることを示した2012年の論文もあります。ウィスコンシン大学の研究者が行った実験では、子ども(7.5歳から12歳まで(10歳前後)の 68 人の女児)を対象に、まず数学の問題を解くといったストレスを与えます。その後4つにグループを分け

①一人で休む
②母親とインスタントメッセージ(LINEのようなメッセージツール)でやりとりする
③母親と電話で話す
④母親と直接会って交流する

の4パターンで実験を行いました。結果、③と④、つまり声や対面でのコミュニケーションは、幸せホルモンであるオキシトシンが増え、ストレスホルモンであるコルチゾールが下がったのです。

このように、不安を抑制するための方法は、日々様々な角度から考えられているのです。

◾不安にどう対処するか。『あやうく、未来に不幸にされるとこだった』

不安は、いつの時代にも私たちにつきまとう問題です。そんな中、不安との付き合い方に関する著書『あやうく、将来に不幸にされるとこだった』(東洋経済新報社)が2024年1月31日に発売されました。本書は当ラボの吉岡を中心に執筆されたものです。

様々な調査から分かる通り、日本人の多くは幸せだと思っておらず、不安を感じている人も多くいます。私たちは日々、これからの出来事に対するあれやこれやとした不安が心を占めてしまい、気がつけば時間だけが過ぎ去っていることがあります。

ところが本書が言及する研究によれば、そうした不安は91.4%もの高い割合で実現しないのです。にもかかわらず、私たちはともすれば、「自分で不安を作り出して」しまうと言えるでしょう。

本書はそのような不安の理由として、根拠のない思い込みを指摘し、そうしたことを手放すことの重要性を説いています。例えば、他人を羨んだり自信のなさの多くは、自分に対する過度な厳しさから来ています。

「成長しなければならない」や「失敗できない」といった思い込みは不安を惹起します。いわば、完璧を求めすぎ、未来を考えすぎてしまうのです。本書のタイトル『あやうく、未来に不幸にされるところだった』とは、こうした意味です。

そこで本書では、今の気分を大事にし、今にフォーカスすること、そして自分に素直になることの重要性を説きます。また人の心の状態を「リラックス」「チャレンジ」「ストレス」の3つのゾーンに分けて考える方法などを紹介し、完璧の追求をやめ、不安の手放し方を提案します。

本書は事例も豊富です。日常生きていれば誰にでも生じる人間関係の摩擦や、必要以上に他人の反応を気にしてしまうことは、誰にでもあることでしょう。今加入している「サブスク」をやめるべきかどうかを考えたり、「ペットボトルを捨てること」など、ちょっとしたことからできる不安との向き合いかたのコツが述べられています。

このように、本書では多くの思い込みと、その手放し方が提案されています。気になった方は、ぜひ本書をお読みください。

また不安に関しては、音の有効性に関する研究も盛んに続けられています。当ラボは今後も、不安について調査を続けて参ります。

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