男女で最適な音量が異なるーー「音の感性」を考える

放送の様子はこちら(下記サイトでは音声配信も行っています)。
「男女で最適な音量が異なる〜『音の感性』を考える」(Screenless Media Lab.ウィークリー・リポート)
2019.8/02 TBSラジオ『Session-22』OA

Screenless Media Labは、音声をコミュニケーションメディアとして捉え直すことを目的としています。今回は私たちが音を感じる「音の感性」ついて紹介したいと思います。

◾音と色の関係

 音には、大きさ、高さ、音色の3要素がありますが、それ以外にも様々な要因で成り立っています。今回は音に関して様々な研究をされている、九州大学名誉教授で、日本大学芸術学部特任教授の岩宮眞一郎氏の著書『音のチカラ』から、以下私たちと音に関する、いくつかの研究を紹介したいと思います。

 まず、音と色の関係です。色は視覚情報ですが、これが音にも影響を及ぼしているというのです。岩宮さんの研究室の実験では、被験者が(パワーが周波数に反比例する、ピンクノイズと呼ばれる)雑音をプロジェクタに投影した色と一緒に聞きます。すると、赤がもっとも音を大きく感じ、青が一番音を小さく感じるという結果が出ました。青の次は緑ですが、色によって音の強さに影響があることがわかります。ここからわかることは、騒音を軽減させたいものは青や緑を利用した方がよく、逆にスポーツカーのように派手な音が好まれるものには、赤が好ましいということです。


 以前、「音象徴」について紹介した際は、強さを感じる音には濁音とモーラ数が関係していました。これらに加えて、色も音に影響をもたらすということがわかります。

◾マスキング効果

 次に、音が放つ騒音に対して、別の音を被せることでもともとの音を聞こえにくくする「マスキング」という現象についても紹介します。喫茶店で流れるBGMは、周辺の人達の会話内容を聞きにくくしてプライバシーを確保します。また昨今のイヤホンやヘッドホンには、そもそもの音をカットするノイズキャンセリングではなく、ヒーリングサウンドといった別の音を被せるマスキングによって、快眠を目指すためのものもあります。

 このマスキング機能を利用して、道路の騒音を軽減する実験も、岩宮氏の研究室で行われました。BGMと自然音を組み合わせた環境音を流したところ、75%以上の割合で、通常の交通騒音よりも環境音付与した交通騒音の方が、音を小さく感じた被験者が多かったのです。音が別の音をかき消すというこのマスキングも、様々なところで利用されています。

◾男女で異なる音の感覚

 さらに興味深いことに、男女で最適な音の「音量」が異なる、という実験も岩宮氏の研究室で行われました。被験者は音楽を聞き、「丁度いいと感じられる大きさ(最適聴取レベル)」になるまで、音量を操作するものです。その結果、平均で女性の方が男性に比べて最適な音量が小さいことがわかりました。つまり、一緒に音楽を聞いたりテレビをみている時も、女性が「大きい」と感じても、男性は「丁度いい」と感じることがあり、また男性が「小さい」と感じていても、女性は「最適だ」と感じているケースがあるということです。性別によって音量が異なって聞こえているという点は、私たちが社会を生きる上で、知っておくべき知識であると思われます。

 このように、音をどのように感じるかについては、まだまだ多くの論点がありそうです。とりわけ男女間での差異など、良い悪いではなく、私たちが社会を生きる中で知るべき知識です。音から私たち自身を知るために、研究はまだまだ続けられる必要があるのです。

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