スムーズな会話、しまじろうが話し出す――「会話型AI」の最前線

2024.3/15 TBSラジオ『Session』OA

Screenless Media Lab.は、音声をコミュニケーションメディアとして捉え直すことを目的としています。今回は、昨今注目を浴びている会話型AIについて紹介します。

◾おしゃべりAIアプリ「Cotomo」

AIを利用した会話型アプリは数多くありますが、AIのスタートアップ企業「Starley(スターレー)」が2月21日に公開した無料の音声会話型おしゃべりAIアプリ「 Cotomo (コトモ)」が話題になっています。

Cotomoは日常会話が得意で、実際に使ってみると、AIの返事が非常にはやく、違和感を最小限に抑えています。音声も4種類から選べ、AIの名前も変えられます。

会話では「そうなんだ~」「そっかそっか」と相槌を入れながら、適切なタイミングで言葉を返します。声に若干の違和感はありますが、これまでの会話内容を覚えているので、ユーザーに最適化されたものになっています。

一方、男性の声は女性の声に比べると精度が低い、といった指摘をするユーザーもいます。このあたりは、初期設定が女性のキャラクターになっているなど、以前も紹介した声とジェンダーの問題を考えることもできるでしょう。

いずれにせよ、cotomoとの会話は、内容の正確性よりも、会話そのものを楽しむためのものであり、「相槌」や「傾聴」なども多く、大きな驚きをもたれています。まだまだ会話に満足できないというユーザーもいます。とはいえ今後の技術発展を考えると、会話によるコミュニケーションをAIが担う領域は、確実に広がっていくでしょう。

◾しまじろうとも会話できる?

もうひとつは、ベネッセとソフトバンクロボティクスが2月27日に発表した、生成AIを使って有名キャラクターの「しまじろう」と会話ができる、幼児向けのAI「しまじろう」です。こちらは現在は無料のモニターを募って試験を行う段階ですが、注目を浴びています。

AIしまじろうは、スマホと専用アプリ、そこにスマホに取り付けられるしまじろうのぬいぐるみを合わせて使用します。しまじろうと会話するだけでなく、「ごっこ遊び」「うた」「おはなし」といった機能のほか、英語にも対応しているとのこと。

また、3,4歳の幼児に知っておいてほしい言葉のデータが入っており(逆に子どもに不適切な表現、しまじろうが言わなそうな表現は除外)、子どもから話しかけなくても、良い生活習慣になりそうな声かけをすることも特徴のひとつでしょう。自然にしまじろうから呼びかけられることで、楽しみながら習慣を身につけることが可能になります。その他、AIしまじろうを体験した親子によれば、「つたない語彙(ごい)や発音にも反応してくれるのがすごい」とのことです。

家事や仕事などで時間が取れない中、どうしても子どもにスマホやタブレットを与えて動画などを観せる機会もあります。それ自体は悪くありませんが、どうしても情報が一方通行で、子どもが受け身になりがちです。その点、AIとの会話で自然なコミュニケーションを行うことができれば、子どもの発達にも有益でしょう。

ただし、子どもの質問に何でもしまじろうが答えてしまうと、子どもが考える時間を奪ってしまいかねないので、なんでも質問する場合は使用時間を区切ったり、あるいは考える力を養う会話AIの登場も待たれるでしょう。

◾声のセキュリティは今後ますます重要に

気になるのは会話内容やセキュリティです。AIが子どもにふさわしくない声がけをしていないか
AIしまじろうに限らず、子どもが家庭の重要な情報をAIに話してしまうこともあるでしょう。

生成AIによる不適切な表現は、以前に比べれば減少しつつありますが、バイアスのかかった表現など、依然として課題です。またセキュリティについては、いわゆる大手の企業であれば慎重になる傾向がありますが、海外では恋人のように振る舞う会話型AIチャットボット11種類を調べたところ、セキュリティ基準を満たしていたのはたったの1つだった、という研究者の警告もあります。(無論、大企業だから安心、というわけではありません。)

今後も会話型AIは様々なサービスが登場しますが、どういった企業がどういったポリシーで運営しているか等も考慮する必要があるでしょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?