【声劇台本】070「グチグチ・ジャグリング」

「グチグチ・ジャグリング」

《人物》
志賀晴海(17)
大原夏彦(17)

《本編》
夏彦のMO「ジャグリングの自主練をする。ワザの名前はカスケード。3つのボールをくるくる回す、基本中の基本の手品だ。だけど、俺はまだ一度も成功したことがない、くそう……」

晴海のMO「高校の中庭で夏彦を見つけた、また例の手品を練習しているようだ。これは絶好の一眼レフ・ターゲット! 私は彼をフレームに納めて連写した」

夏彦「っちょ! 晴海、撮るな。寄るな。近づくな!」
晴海「成功したら、かっこよかったのになあ」
夏彦「うわ。うぜえー」
晴海「夏彦。今日の私の被写体だからよろしく」
夏彦「それ、いつもじゃね?」
晴海「今日こそ、決定的瞬間を納めたいモノですなあ」
夏彦「やっぱりうぜえー」
晴海「さあ、さあ、もう1回やってよ」
夏彦「言われなくても」

夏彦のMO「俺は、もう一度トライする。1つ目のボールを投げて、2つ目、そして、キャッチする前に3つ目を……! ぬわっ! だめだ!」

晴海「夏彦。それさ、一番基本っていうか、簡単なワザなんじゃないの?」
夏彦「晴海はできるのかよ」
晴海「できるかも」

夏彦のMO「そういって、晴海は。俺から3つのボールを受け取ると、見事なジャグリング、カスケードを決めた」

晴海「ほら。やっぱ簡単じゃん」
夏彦「なんで一発でできんだよ」
晴海「お手玉の要領だね。くるくるって」
夏彦「あーうぜー」
晴海「グチってないで。はい。練習!」

夏彦のMO「晴海から返されたボールを持って俺は、リベンジした! ワン・ツー・スリー!」

夏彦「お! できた! 1回でできた!」
晴海「あ。ごめん。カメラ調整してた」
夏彦「んだよ! 見てなかったのかよ!」
晴海「じゃあ、確認」
夏彦「いくぞ! ワン・ツー、ああああああ!」
晴海「やっぱりダメじゃん」
夏彦「くそう。今日はできるまで絶対あきらめねえ!」

晴海のMO「そう言って練習を続ける夏彦のバカな横顔を撮るの、実は結構楽しかったりする。頑張れ、グチグチ・ジャグリング!」

(おわり)

今後の執筆と制作の糧にしてまいりたいと思います。