至近距離プリズム(モノローグドラマ003)

「至近距離プリズム」

■人物
男子

■本編
男子のMO「俺はペットボトルの水をゴクリと飲んだ。真夏の自主勉強会には水分補給は欠かせない。ボーっとした頭に渇を入れる!」

男子のMO「それにしても。君は、勉強会の発起人のクセして、さっきから目の周りを指でこすってばかりいる。そんなに眠いのだろうか?」

男子「眠いの?」

男子のMO「思わず俺は自分の思いが言葉になっていることに焦った。君は、俺を難しい顔で観ながら、『コンタクトがゴロゴロするんだよ』と答えた。そして、いそいそとコンタクトを外した君は、『世界がぼやけている』と言って笑った。ぼけているのは世界じゃなくてお前だろ……と俺は思った」

男子「あのさ。さっきから、この二次関数の問題がとけないんだよ……」

男子のMO「俺は君に問題を見せる。すると、君は眉間にしわを寄せながら、問題に顔を近づけてきた。んっ!? いつもより、なんだか距離が近いっ!」

男子のMO「真剣に問題を読む君。無駄に緊張する俺。無駄に緊張! なんなんだ!」

男子のMO「『これは解の公式を使うんだよ』と君は言いながら、元の距離に戻り、鞄からメガネを取り出した」

男子「メガネあるのかよ!」

男子のMO「思わずツッコミを入れた俺に、『あるよ』と君は微笑んだ。なんだよ。無駄に緊張して損した! 俺はようやくいつもの状態を取り戻していた」

男子のMO「ああ、暑くてやっぱりボーっとする。それにしても、さっきの緊張は一体何だったんだろう……。俺はその答えを回らない頭で考えることをやめにして、もう一度、水を飲んだ」

              (おしまい)

今後の執筆と制作の糧にしてまいりたいと思います。