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【0369】発酵から世界を見る本がヤバイ②

発酵デザイナーを名乗る小倉ヒラクさんの発酵文化人類学というヤバイ本。
どうヤバかったかを読み返してみました。

その①はこちら

発酵の道は「生命工学と社会学の交差点」

お酒が発酵する現象は、化学式に変換できる=生命工学。けれども、どうして人それぞれ好きなお酒が違うのかは、化学式にできない=社会学。
文化人類学も同じような構造だそうで、歴史や美術や文化を情報工学として分解はすれども、なんでそんな文化が生み出しえたのか、については想像力を働かせるしかない社会学の領域だそう。
文化人類学的に発酵を見つめていくと、色々語れるぞ。ということ。

つまりは、発酵を通じて人類の謎を紐解く。これがこの本のテーマだ!

という壮大なまえがきでしたが、読み終わってみると、まさにその通りです。

そもそも発酵ってなんだ?

そもそも発酵ってなんや?ということもこの本においては非常に大事。
本に書いてることそのまま全部書くのもな。。と思ったら、WEBに御本人がPDFをあげてくれていました。

http://hirakuogura.com/wordpress/wp-content/uploads/2018/07/f8ff6e9917f769395dee44e8f707b52b.pdf

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人間の役に立てば「発酵」
人間の役に立たなければ「腐敗」

だけど、起こっている現象自体は、カビ・酵母・細菌といった微生物の活動による消化であり、それがたまたま人間に良いことづくめになっているのが発酵だそう。その中で、
・腐らない
・栄養満点になる
・美味しくなる
ということが起こっちゃうのだそうです。

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https://www.felissimo.co.jp/shopping/I180782/I280783/GCD222254/ より

↑こんな本も出されているそうで、より「発酵」についてレシピ等も含めて知りたい人はぜひ。

この発酵にまつわるミクロの世界で起こっている現象が色んなことに示唆があるし、先端技術とも関わりがあり、発酵を取り入れている文化や歴史を紐解いていくと、原点に返ってみての再解釈など、持続可能性へのヒントまで見えてくる。そんな「あれれ、発酵って何、おいしいだけじゃないの?」なお話が後半になるとどんどこ出てきます。

発酵の歴史は古い

これは別の本で読んで知ったことですが、馬乳酒は馬の乳という人間が消化しづらいものをなんとか飲めないか工夫していた方法の中で、「かき混ぜまくってみっか」とひたすらかき混ぜていたら、なんだか飲めるようになってきたんじゃない?というのが始まりだったように、古くからあの手この手の工夫によって人間の文化に取り入れられてきたそうです。

歴史の証拠でいうと、古代エジプトの壁画にはすでにワインを作ったり、魚を塩漬けにして熟成させている様子が描かれているそうですし、日本でいうと、ヤマタノオロチの退治の物語に「酒を用意して酔わせてしまう」という話が出てくるくらい、偶然の産物としてではなく、技術を伴ってお酒づくりがなされていたという文化が垣間見えるものがあるそう。

発酵(微生物)が文化や人を規定してきたかもしれない

先程の発酵ってそもそも何?の中にも書かれているんですが、発酵には「カビ・酵母・細菌」という微生物によって色々な種類があるそう。

その中で古くから日本で取り入れられてきたのは「カビ」。糀などがそれにあたるそう。ニホンコウジカビというのがあるそうで、これが単体での発酵だけでなく、酵母や乳酸菌の発酵ともコラボしてそれぞれの良さを引き立たせてくれるタモリさん的存在だそうです。

カビ

酵母

細菌

の順に小さくなっていくこともあり、酵母や細菌が発酵しやすい形にカビが発酵をしておいてくれる(たぶん、そんなことを書いていたと思う)。

で、発酵が文化や人を規定してきたかもしれない。という話で言うと、この糀ひとつとっても、日本と中国ではその発酵の仕方が違うそうです。カビの種類が違って発育環境が異なるからだそうですが、

日本の場合はお米一つ一つにカビが発育する感じ。
中国の場合は、お餅になった塊に深く発育する感じ。

それが何だという話なんですが、こういったことの延長で、

かろやかでフレッシュな日本酒
どっしり重厚な紹興酒

という作れるお酒も変わるし、そのお酒をつくる過程にかける手間や時間も変わってくるのだそう。

それによって、日本の文化では「デリケートさ・繊細さ」が育っていき、中国では「100年スパンで熟成させた歴史」という文化が育っていきやすくなるとのこと。つまりは、そこに住む人が「良い」とする価値観の形成にも一役担っていることに。

あとの章でも出てくる話ですが、人間が技術を身に着け自然を支配している側面もありながら、実は野生の中にあった微生物や植物といった自然の方が人間の行動や価値観を規定してきたかもしれない。

自然を豊かな恵みとして利活用する対象と見る側面もあれば、自然が自分たちを支配しているという畏怖の対象でもあるという構図は、ちょっと飛躍かもしれないけど、経済成長を促すと環境に影響があり、環境からの災害によって、人の営みが破壊されることへの警鐘、つまりはサステナビリティとか大事だねという考え方と近いかもなと感じた次第です。

本日はここまでにしときます。

第1章:ホモファーメンタム〜発酵する、ゆえに我あり〜

からのお話でした。

2020.7.16その③を書きました。


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