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【0371】発酵から世界を見る本がヤバイ④

発酵デザイナーを名乗る小倉ヒラクさんの発酵文化人類学というヤバイ本。
どうヤバかったかを読み返してみました。

その③はこちら

制限から生まれる多様性〜マイナスをプラスに醸すデザイン術〜

タイトルだけ見たら、デザインの本かな?と思うくらい、マーケティングとかクリエイティブとかデザインの話に通じそうな予感がぷんぷんですが、第3章のタイトルです。

そして予想を裏切らず、発酵をテーマに、「制限から生まれる多様性」という話を紹介してくれています。

◯すんき

普通、発酵というのは長持ちさせるための方法なので、「塩」を入れるのが通常なのだそうですが(そういえばパンにも塩入れる!)、すんきは長野県の山奥で育った文化だそうですが、この通常なら入れるはずの「塩」が海の無い場所では貴重品になってしまうため、「塩」を入れない発酵食品で長持ちさせる方法はないか!と工夫を重ねられたのが、このすんきだそう。

◯碁石茶

中国では結構あるそうな「発酵茶」が日本では根付きにくかったそうですが、この碁石茶はその「発酵茶」にあたるものだそう。お茶とは思えないようなユニークな味だそうです。一度は中国からやってきて、根付きにくかったこのお茶、高知の山奥で今も作られているそうですが、地域の人には飲まれず、瀬戸内海や広島など他の地域で消費される特産品として成長しているそう※最後の一軒だけで作られているそうです。
このエリアで特産品が無い。という状況の打破から周辺に受け入れられるものとして生き残ったのがこの碁石茶なのだそう。

◯くさや

変な発酵食品といえば、臭さで有名な「くさや」。信じられんくらい臭いけど美味しいらしいということは自分も聞いたことがありますが、これも制限から生まれたものだそう。くさやは漁業の街で作られているものなので、「塩」はたんまりありそうなんですが、ここでの制限は「税金」だそう。税金として取り立てられてしまうので、魚の「塩漬け・干物」などの発酵食品を作ったあと、漬け汁を捨てずにリサイクルしようという思考にたどり着いたことが「くさや液」の誕生だそうです。はじまりはそんな、もったいない精神でのはじまりですが、それが継ぎ足し継ぎ足しで成長していくことで、珍味好きの間で話題になり、さらには抗菌作用まで強力化していったのだそう。

この章のタイトルがまさに納得できる事例。デザインやマーケティングなど、あらゆるクリエイティブなシーンにも通ずる話でした。

また、この章のまとめのコメントも秀逸で、そのままご紹介したいくらいですが、

「他に真似できない個性」は外のトレンドから取り入れた方法論ではなく、歴史の起源や土地の微細な気候風土、微生物の生物多様性をじっくり掘り下げるのが正解。
そしてそれは、人間の肉眼の解像度では足りなく、顕微鏡で微生物を見るように何百倍も解像度をあげて「自分の足元」を観察するのだ大事。

という考えさせられる示唆までいただけます。
人間の脳の構造をミクロに研究して調べていったら、コンピュータ・サイエンスの分野で大活躍中のディープラーニングという手法が生み出されちゃった。というお話もこういう示唆に近いものを感じますし、社会を良くするデザインとは、あれやこれやと外の事例を参考にするのも大事ですが、足元を深く深く見つめて解像度をあげまくるということの方が、実は大事なんだなと改めて感じさせてくれます。

次回は、「贈与経済」について。一回にまとめようかなとも思ったんですが、このテーマも「うお!!」感情が巻き起こったので、一回分にしたいと思います。

2020.7.18その⑤を書きました。


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