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【0370】発酵から世界を見る本がヤバイ③

発酵デザイナーを名乗る小倉ヒラクさんの発酵文化人類学というヤバイ本。
どうヤバかったかを読み返してみました。

その②はこちら

ブリコラージュとエンジニアリング

著者の小倉ヒラクさんが崇拝する文化人類学者レヴィ=ストロースの概念に「ブリコラージュ(器用仕事)」というものがあるそうです。

あらかじめ計画を立てて、しっかりと設計に基づいてモノづくりを行う「エンジニアリング」と対比した言葉として、その場にあるものでガンガンつくっていくDIY的なモノづくりを「ブリコラージュ」と呼ぶそう。

このブリコラージュ、発酵とか味噌作りの文化がそういう形なのだとか。

言われてみれば、飛行機を発明した人、電気を発明した人みたいな歴史を変えてきた技術には、「この人」が想像がつくものの、「お味噌を発明した人」というのは聞き馴染みがありません(いるのかもしれないけど)。

「手前みそ」という形で、各家庭がそれぞれに自前で作ってきたものが成長していき、地域特有のお味噌に育っていったのだとか。住んでいる地域の周辺で取れる素材と、そのエリアに住む微生物の掛け合わせ、つまりはその場にある組み合わせでガンガン「ブリコラージュ」で成長していったのが発酵・味噌の文化だそうです。これは日本酒やワインなど、他の発酵食品にも言えること。

なんだか、シリアルアントレプレナーの行動様式である「エフェクチュエーション」にも近い考えだなと思えちゃいますね。

手前みそワークショップと手前みそのうた

著者のヒラクさん、そんな手前みそを作れるワークショップというものも開催されているそうです。

また、このワークショップを一緒にやっている五味醤油さん(醤油は作ってない)と「手前みそのうた」というものも作られているそうで、

このうた、まさかのグッドデザイン賞まで受賞していますw

情報過多現代へのカウンター

味噌の話から急になんや?なんですが、こういった、手前みそや発酵はブリコラージュ的に作っていく、その「プロセス」に楽しみがあるのだそう。それが、情報過多な現代へのカウンターにもなる価値観とも言えるそうです。

世界中の情報がオープンに手に入るこの時代特有の苦しみは「自分が自分である特別さ」を感じることの困難さだ。SNSのタイムラインや、各種メディアで目立つ「最先端の成功者」と自分をついつい見比べてしまう。

グーグルで検索してみれば、自分だけのアイデアだと思っていることが、地球の裏側の誰かがすでに考えついていたことだとわかってしまう。そんな状況の中で、社会で認められるために「サムシング・ニュー」を追い求めなければならない。自分らしさを証明しなければならない。

こういう、何か素晴らしい「結果」をすごいスピード感で求められ続けることに疲れるのは「プロセス」を重視する・楽しむ視点が軽んじられているからかもしれない。ブリコラージュの「プロセス」を重視・楽しみ思考はこの価値観へのカウンターになるのだ!という、あ、これ発酵の話なんですけどね、そう、ここまで広がるんです。

発酵文化はインターネット的

発酵をメタファーにどんどこ色んな話に広がりますが、今度はその広がり方、文化の成長の仕方が「インターネット的」であるというお話。

インターネットの中でもその「オープンソース志向」がそれに当たるのだそう。ブリコラージュ的に誰かが作ったもの、レシピといった作り方も、他の人がどんどんマネしたりアレンジしたりということを繰り返すことで成長していく。

「産業をつくる。」という視点では、自社の技術を流出させずに市場に製品を出していくというのが正しいんだけど、それを例えば味噌とか醤油の分野でやり続けて極めていくと何が起こるかというと、「だいたいどこのメーカーも同じ味」で、「安いものを買う」という、競争力を作ろうとやってきたことが、逆にコモディティ化に進んでいくという現象だそう。
ブリコラージュ的に考えるとこの視点は「文化をつくる。」になり、つくり方もみんなでどんどん色々試していって、色んなやり方が生まれていく、オープンソース志向で成長していくそう。そうやって、「あの人の家の手前みそは美味しい」が育ち、その家のお味噌が作り継がれて、地域の味噌の味になっていく。みたいな感じ。

先ほどの、「手前みそのうた」もグッドデザイン賞まで受賞しているのに、アレンジや利用もフリーだそうで、これでダンスを踊ってみたり、テクノアレンジをかけてみたい、色んな人が現れたそうです。

んー、もはやマーケティングとか広告コミュニケーションの話にまで広がってきた。

という、

第2章:風土と菌のブリコラージュ〜手前味噌とDIYムーブメント〜

からのお話でした。
※全章は書きません。ぜひ本をご購入ください。

2020.7.17その④を書きました。


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