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怪しい車屋に搾取されないための、自動車基礎構造スクール1

車離れが進んでいる現在ですが、車って、ただの乗り物と分類してしまうには、あまりにももったいない、とても魅力的で楽しい存在だと思います。
そんな車も、所有や使用する上で、全くリスクが無いわけではありません。
今乗っているあなたの車、これから乗りたい車、考えたくないことですが、全く故障しない車は存在しません。
例えば、タイヤが減ったり、オイルが漏れたり、水が漏れたり、経年の劣化というのは、避けようがありません。
しかし、これらは、自分の目でも確認できるので、理解できますよね。
理解できれば、納得もできます。

でも、車の故障とはそのようなことだけではありませんよね。
走行中に、なんだか解らない、赤や黄色に光るランプが、何の前触れも無く、無情にも光ることもあるでしょう。

ここでは、この無情に光る、赤や黄色のランプは、なぜ光るのか、車に何が起きると光るのかを解説していきます。

そして、この内容が理解できれば、町の怪しい修理屋さんに、なんだか解らずに、あなたの大事なお金を支払う、ということが無くなります。
また、将来的に、このお店は本当に信頼できる、という安心感も持つことができる。
反対にこの店は全く信頼できない、という判断ができるようになって、あなた自身の知識も増大すること間違いなしです。
一度に、全てを理解することは、プロのメカニックでも難しいので、パートごとに症状や対処方法も交えて解説をしていきますので、お楽しみください。


あなたは、車を運転するには、必ず運転席に座ります。
次に取る行動は、イグニッションをONにします。
このとき、車内では様々なランプが点灯します。
これは、作動を確認し、全ての電球に不具合がないか試験的に点灯させます。
いつも通りのルーティーンですので、ここまでは何の問題もありません。

ところが、しばらく走っていると、メーターの中で、赤や黄色のランプが、アピールしてきました。
このとき、走行中にいつもと違う違和感を感じるときや、全く違和感を感じないときがあると思います。
あなたは、自分の車に何が起きているのか解らず不安になることでしょう。

この、やたらとアピールしてくる赤や黄色のランプは、なぜ装備されているのでしょう。
簡単にいうと、走行中の車に不具合が発生していることを、ドライバーに知らせるためについているのです。

不具合の内容は、様々で、走行することができなくなってしまう不具合や、走行するには問題ないが注意が必要な不具合、または、同乗者の安全を確保するために点灯するものもあります。

ここでは、何が起きると赤や黄色のランプの警告灯が点灯するのか、車で、何がおきているのかを解説していきます。

車両電装の基本

ここから、少し専門的な話になりますが、車両電装の基本を解説していきます。
まずは、警告灯を点灯させるために必要な、車両モジュールの入力、出力回路の種類と作動を理解することから始めましょう。

これが理解できると、今後のカーライフを、とても楽しめるようになること間違いなしですので、時間を掛けてゆっくりと何度も何度も繰り返しながら、理解していってください。

デジタルインプットとアナログインプット

最初は、デジタルインプットとアナログインプットという、2種類の入力方法についてお話しします。
この、デジタルインプットとアナログインプットという言葉は、聞いたことありますか。
デジタル、アナログ、インプットというそれぞれの単語は聞いたことがあると思います。
察しのいい方は、何かの入力方法なんじゃないの?
と、思われるでしょう。正解です。

デジタルインプットとは、スイッチなどを使用して、0か1、または、オンか、オフ、で入力されることを指します。

アナログインプットは、可変抵抗器を使用して、途切れることなく入力信号を変動させて入力されることを指します。
可変抵抗器とは、文字通り抵抗を変化させるもので、例えば0Ωから1kΩまでの間を、途切れることなく、抵抗ちを変化させることができるものです。

ここまでは、理解できますか。


よろしければ、進めていきます。

モジュールの直接入力は、デジタルインプットとアナログインプットに分けることができます。
ここでいうモジュールとは、車両に使われているコンピューターのことです。

デジタルインプット

デジタルインプットには、モジュールへの入力信号に2種類の電圧を使用します。
一般的には、12Vか0V、または5Vか0Vが使用されます。

デジタルインプット01

図の回路を使用したインプットでは、スイッチがOFFの時のモジュールインプット電圧は12Vになりますが、スイッチがONになると、モジュールのインプットは0Vになります。
このように、モジュールの入力信号電圧が2種類のものをデジタルインプットと呼びます。
これは、モジュールが、現在のスイッチの状態、ONなのかOFFなのか、を確認するのに使用されます。
モジュールのデジタルインプットは、通常、故障診断機器(スキャンツール)で確認することができて、入力状態によりON、OFF、または、Hi、Lo、オープン、クローズというように表示されます。
また、このデジタルインプットは、回路の故障診断にも使用されています。

この表は、診断機に表示される例です。

標示例

では、このデジタルインプットを使って、どのようにして故障を判断しているかイラストを使用して解説していきましょう。

リレードライバオフ正常

イラストは、リレーを作動させる回路図です。
モジュールはリレードライバを作動させていない時に、Aの入力を確認します。
リレーコントロール回路が正常であれば、Aにはバッテリ電圧が入力されます。

リレーコントロール断線

リレーコントロール回路、リレーのコイルに断線があれば、この時、バッテリ電圧が入力され無いので故障していると判断します。

モジュールはリレードライバを作動させた後、Bの入力も確認します。
リレーアウトプット回路が正常であれば、Bにもバッテリ電圧が入力されます。

リレーセンス正常

リレーアウトプット回路にトラブルがあれば、 この時、バッテリ電圧が入力され無いので故障していると判断するのです。

リレーセンス断線

では、具体的に、どんな故障が起きるか、2つ紹介しておきます。
1つ目は、特に違和感無く走行しているときに点灯する場合は、O2センサーのヒーター回路の不具合。
P0135 ラムダ・センサー・ヒーター回路の異常(バンク1、センサー1)
P1102 ラムダ・センサー・ヒーター回路(バンク 1、センサー1)の B+へのショート
P1132 ラムダ・センサー・ヒーター回路(バンク 1+2、センサー1)が高すぎる
などのDTCが入力されます。

2つ目は、これも特に違和感は感じないと思いますが、排気ガスに空気を送り込む、2次エアポンプという装置の不具合があります。
P0410 二次空気導入システムの異常

などのDTCが入力されます。

この2つは、いずれもリレー回路を使用していて、排気ガスの制御を目的にしているため、エンジンを始動した直後からの冷間時に、検出されます。
そして、これには、もうひとつ警告灯を点灯させる理由があります。
それは、先ほど触れた、排気ガスの問題です。
先ほど2つの例にだした、O2センサーと2次エアポンプは排気ガスを制御しているということをお伝えしました。
この、排気ガスを制御している装置に不具合が発生することで、有害物質を多く含む排気ガスが、大気中に放出されてしまうので、早急に修復するよう促すために警告灯を点灯させるのです。

ちなみに、このリレー回路を使用しているものは多くあって、各種コンピュータ、燃料ポンプ、電動ファン、クラックション、各種ランプ類、ワイパー、セルモーターなどに使用されています。

ここまで、理解できましたか?

それでは続いて、アナログインプットを解説していきます。

アナログインプット

アナログインプットはモジュールの入力信号電圧が変動するものです。
温度や明るさ、ポジションなどにより抵抗値が変化するセンサやスイッチの監視、発生電圧の監視などに利用されています。

可変抵抗大

センサ又はポジションスイッチの抵抗値が大きいとモジュールの読み取り電圧は高くなります。

可変抵抗小

センサ又はポジションスイッチの抵抗値が小さくなるとモジュールの読み取り電圧は低くなります。
モジュールは、この読み取り電圧を利用することで、温度や明るさ、圧力、スイッチのポジションなどを判断しています。
このように、温度や明るさ、圧力、スイッチのポジションなどにより、電圧が徐々に変化するインプットをアナログインプットと呼びます。

モジュールのアナログインプットは、通常、故障診断機器、スキャンツールで確認することができ、入力電圧が表示されます。
またモジュールがその電圧からどのように判断しているか、温度ち、やスイッチのポジション等なども表示されます。

表は診断機で表示される例です。

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モジュールのインプット例

モジュールのインプット例としてA/Cの熱交換器エバポレータに使われる温度センサーとA/Cスイッチで解説していきましょう。
これは、デジタルとアナログインプットを併用している代表的なシステムです 。

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モジュールのインプットAは、アナログインプットです。
エバポレータの温度によって、温度センサの抵抗値が変化します。
それにより、読み取り電圧、Aが、約0Vから約5Vの間で変化するので、モジュールはその電圧からエバポレータの温度を判断します。

ここで疑問に思う方は、このような制御をするシステムについての、知識があるかただと思います。
読み取り電圧、Aのところで、なぜ0Vから5Vではなく、約0Vから約5Vとなっているのでしょうか?

それについても解説しましょう。

DTCの例


アナログインプットでは、最低電圧が0Vの状態は、アースへのショートと判断します。

つまり抵抗値が最大になっても 、正常な抵抗ならば0Vにはならないのです。
また、抵抗値が最小になっても、抵抗が正常であれば、5Vにはなりません。
そして、最高電圧が5V以上という状態は、回路がプラス側にショートして、バッテリー電圧の12Vになっている、又はセンサー回路が断線しているという判断をします。
このような理由から、約0Vから約5Vと説明しました。

具体的な故障例ですが、エンジンに使用されている水温センサーで解説します。

0Vを検知すると、入力されるトラブルコードは、P0117クーラントセンサー回路低、となってアースへのショートと判断します。
また、5V以上を検知するとP0118クーラントセンサー高、というDTCが入力されてプラスへのショート、又は回路の断線と判断しています。
症状は、エンジンの始動不良や、アイドリングの不調などが発生します。


そして、先ほどのエアコンの図に戻りますが、モジュールのインプットBはデジタルインプットです。

モジュールのインプット例


A/Cスイッチの状態により電圧が5V又は0Vに変化します。
モジュールは、このインプットにより、車内の人がエアコンを選択しているかを判断しているのです。

ここまで、理解していただけましたか?


それでは続いて、デジタルインプットとアナログインプットの特徴を解説しましょう。

デジタルインプットとアナログインプットの特徴

モジュールはデジタルインプットを受け取ると、直接データの計算、処理に使用することができます。
尚且つ、モジュールはアナログインプットを受け取ると、モジュールの内部で、デジタル信号に変換した後、データの計算、処理を行います。
その為、モジュール内部に、アナログインプットをデジタル信号に変換する装置である、アナログ、デジタルコンバータが必要になります。

eva01 SW断線

この図のような、デジタルインプットを使用したスイッチ回路で、スイッチとモジュールの間で配線が断線したとしましょう。
この時、モジュールの読み取り電圧は5Vになってしまいます。
この場合、モジュールは、スイッチがOFFになっていると判断してしまうのです。

もちろん、スイッチ回路に対する直接的なDTCをセットすることもありません。
これは、今解説した断線に限った事ではなく、スイッチ接点の接触不良、接続コネクタの外れや、接触不良が発生している場合でも同様の判断をしてしまいます。

eva01 SWアースショート

逆に、スイッチとモジュール間の配線がボディアースにショートした場合、スイッチがOFFでも、モジュールの読み取り電圧は0Vになってしまいます。
この場合、モジュールはスイッチがONになっていると判断してしまいます。
そのため、いくらスイッチを操作しても、OFFの状態にはならないのです。

eva01ACON - コピー


イラストのように、アナログプインプットを使用したセンサ回路で、センサ信号線とモジュール間の配線が断線した場合、モジュールの読み取り電圧は5Vになります。

eva01ACON - コピー (2)


また、センサ信号線とモジュール間の配線がアースにショートした場合、モジュールの読み取り電圧は0Vになります。
先ほども少し触れましたが、5Vや0Vは、センサ回路が正常な状態であれば発生しない電圧です。
この為、モジュールは回路に異常がある、と判断してトラブルコードをセットします。

トラブルコード、DTCがセットされると次のように診断機に表示されます。
○○センサー回路の電圧が高い。これは、読み取り電圧が5V以上になった場合に表示されます。
○○センサー回路の電圧が低い。これは、読み取り電圧が0Vになった場合の表示です。

ちなみに、この○○センサに含まれる代表的なものは、水温センサ、油温センサ、などの温度変化を感知するセンサがあります。


この表は、デジタルインプットとアナログインプットの良い点と、良くない点をまとめたものです。

良い点悪い点表

ここまで、よろしいでしょうか?

続いて、ワイパのスイッチやランプスイッチ、イグニッションスイッチなどに使われている、スイッチ回路からのアナログ入力を解説しましょう。

スイッチ回路からのアナログ入力

ON、OFFスイッチでもアナログ回路を使用する場合があります。

3)スイッチ回路からのアナログ入力

イラストのように、接点が開いている状態では、スイッチの抵抗はR1とR2の合成抵抗と呼ばれていて、直列接続で大きな抵抗になります。

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接点が閉じるスイッチがONのときスイッチの抵抗はR2の単体抵抗になり、小さな抵抗になります。

R1R2アースショート

この回路では、スイッチ信号線とモジュール間の配線が断線した場合、モジュールの読み取り電圧は5Vになります。
また、スイッチ信号線とモジュール間の配線がアースにショートした場合、モジュールの読み取り電圧は0Vになります。

読み取り電圧が5V又は0Vになると、モジュールはスイッチ回路に異常が発生している、という認識をしてトラブルコード、DTCをセットします。

ワイパのスイッチやランプスイッチ、イグニッションスイッチなどは、ポジションにより内部抵抗が変化するように作られています。
そしてモジュールは、その読み取り電圧から、現在のポジションを判断して、運転者のリクエストに対応しているのです。
このような回路にすることで、スイッチ回路に故障診断能力が備わり、またスイッチとモジュール間の配線も少なくすることもできたのです。

イグニッションスイッチ回路の例

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イラストは、イグニッションスイッチ回路の例です。

昔の回路は、配線が多く、故障診断能力がありませんでした。

近年の回路は、配線が少なく、故障診断能力があります

スイッチ回路からのアナログ入力は、ここまでになります。

ちょっと、難しく感じたかたもいるかもしれませんが、この知識があれば、その辺の怪しい修理屋さんを見抜くことができます。
この知識が、有るか無いかで、怪しいお店に、あなたの大切なお金を搾取されてしまうのです。
理解できれば、今まで以上に楽しいカーライフを送ることができるでしょう。
楽しみながら、理解していきましょう。

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わたしは、メカニック暦30年で、某外車メーカーのマイスター資格を所有しています。ディーラーに頼らない、町のマイスターを目指しませんか? ディーラーのメカにしか判らない情報って結構あるんです。 国家一級なんて、形だけの資格を目指すより、実際に役立つ情報、知識が欲しいですよね。町のメカニックでは、絶対に知りえないことを、マイスター資格を所有する私が、私の持っている全てをあなたに伝えます。 これを、逃すとあなたの大切な人生が、損する人生になりますよ。 それでもいいのですか?でも、全てはあなた次第です。

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