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忖度なき公正な行政・官僚体制を

(本党中央委員会議長 斯波家剛 寄稿)

 ドイツの社会学者、マックス・ウェーバーの著書に、『職業としての政治』(ドイツ語名:Politik als Beruf)というものがあります。
 
 ウェーバーは「公務員が『専門官吏』と『政治的』管理の二つの範疇に分かれてきた」と言い、フランスの官僚や知事が、特に前者に区分されるとのことです。このような方式の場合、たとえ行政府や立法府で、メンバーの交代が行われた場合に、官僚や地方首長の交代を要請されることなく、引続き職務を続けることができます。対して後者は、かつてのプロイセンの官僚が当てはまっていると言えるでしょう。
 
 プロイセンの官僚たち、特に内務行政に携わる者たちは、現存支配関係の維持を任務としていました。それが『政治的』官僚に区分される所以であり、「官吏には、『政府の政策の支持』が義務付けられ」、「選挙干渉のための『政府の道具』として利用された」、とウェーバーは言っています。
 
 官僚の操作方法は、政治家にとって長年の課題です。15年ほど前は、日本でも官僚の抵抗、圧力によって、マニフェストに入っていない政策を実行させられ、マニフェストに掲げた政策を実行できなくなってしまうこともありました。日本の官僚は、基本的に『専門官吏』に区分されると考えられています。官僚内での派閥の力関係や権益を鑑みながら、内閣は事務次官を任命しなければなりませんでした。ゆえに、日本の官僚は、内閣や国会から一定の距離があり、尚且つ好き勝手に内閣が都合よく官僚ポストに指名しにくかったと言えます。
 
 その当時、弊害は確実にあって、上述の通り、官僚は自らの権益を守るために、政治家の方針に反発することがありました。日本でのその一例として、社会保険庁の年金記録問題があります。この事件は、所謂『社会保険庁の自爆テロ』と呼ばれています。社会保険庁は、自らの不祥事をあえて国民に公表することで、政権転覆を狙ったともいわれています。これは結局、当時の第一次安倍政権の退陣の遠因にもなりました。つまるところ、官僚の『反抗』により、政界に混乱を起こすことができるのです。
 
 しかも、政界の混乱は、政界のみならず、経に影響を及ぼします。それで政治が浄化できたならまだしも、結局は変わらずじまいでした。

 ただ、それだけで官僚を単純に悪人扱いすることも難しいでしょう。2009年に発足した鳩山内閣は、事務次官会議を廃止し『政治主導』の体制に切り替えようとしましたが、『事業仕分け』などの政治的パフォーマンスを行っただけで、主要な改革は不成功に終わりました。結局一年半後の東日本大震災を機に、当時の菅直人内閣が事実上の事務次官会議を復活させ、その結果、民主党政権崩壊まで、政府が官僚勢力に頭が上がらない状況が続くことになりました。その後の野田内閣では、財務省の主導で消費税の8%への引き上げが強行されました。
 
 2012年12月、それまでの失政が糾弾されて民主党は政権を失い、自由民主党が政権に復帰しました。そこから2020年9月まで続いた第二次~第四次安倍内閣でも、財務省の主導で再度の消費税引き上げこそ行われたものの、その一方で内閣人事局を新設して、そこから官僚人事への干渉を強めました。内閣に都合の良い官僚を事務次官に任命したり、任期を延長させたりして、政権の安定化を図ったのですが、そこから生まれたのは、官僚の政府への忖度でした。特に、森友学園問題では文書の改ざんが行われ、それを実際に行った官僚が良心の呵責から自殺に追い込まれる事態になりました。
 
 官僚が自制能力と自浄能力を身につけなければ国家の腐敗が進みます。自らの権益を守るために、行政府、立法府に反抗することで、国民生活の安定、政治の安定と公正さが損なわれ、無用の混乱を引き起こすことが多々あります。とはいえ、政治家も官僚を締め付けすぎても良くありません。両者が互いに損しないよう、国益を伸長できるように努力しなければなりません。行政・立法・官吏の本分は、国益を維持・伸長し、国民生活を向上させ、公正な社会を担保することにあり、無用な足の引っ張り合いや忖度は、正に為政者の倫理にそぐわぬことです。
 
 互いの立場を尊重し、政治家は官僚勢力に、諸政策への協力や助言を要請し、官僚はそれに私心なく応えながら、時には時勢に応じた政策を立案し、その検討を行政・立法に働きかける。その体制を維持することこそが、どの国家においても重要視されるべきであると私は考えています。
 
斯波 家剛(しば いえたか)
本党中央委員会議長・倫理委員長
新国民同盟中央委員会議長


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