見出し画像

多次元の朝

小さな宇宙には朝があった
全ての始まりの刻印として

空気の振動が停止した
一世一代の計りの朝

燃える恋でもしているのか
ダムが決壊したような期待があふれ出す朝

悪夢の続きを目覚めてなお見るような
冷暗室の悲鳴の朝

異邦の床で目覚めた
いつもとは違う朝と、いつもとは違う自分

仮宿の友人と迎えた
喧騒の残滓が漂っている朝


しかし、
これらの朝の中には確かに殺人犯が紛れ込んでいるのだ
それを忘れてはならない

並ならぬ情念と衝動に突き動かされていた朝、
僕は嫌悪する彼と同じことをしていたのかもしれない

沢山の朝を決して忘れたくないと刻みこんだ朝、
無数の思い出せないが確かに存在した朝も、重ね合わせて


(終)


ご案内:初めての方へおすすめ

オフィスに転がった万全な死体』(詩)
こっちの世界と、あっちの世界』(詩)

偽りの注射と、廊下の残像』(小説)

twitter:https://twitter.com/sdw_konoha
blog「影絵の木の葉」:http://fgr-konoha.blog.jp/

#詩 #音楽 #小説 #言葉

頂いたサポートは無駄遣いします。 修学旅行先で買って、以後ほこりをかぶっている木刀くらいのものに使いたい。でもその木刀を3年くらい経ってから夜の公園で素振りしてみたい。そしたらまた詩が生まれそうだ。 ツイッター → https://twitter.com/sdw_konoha