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生物分類技能検定2級動物部門 合格体験記

セアカ(@seakasan)といいます。2022年度の生物分類技能検定2級動物部門に合格しました。なんと合格までに3年を要しました。この検定に関してはテキストの販売がなく、またネット上に合格体験記が少ないため、勉強されている方、これから勉強される方に向けて、私も合格体験記を書いていこうと思います。なお、勉強を楽しみながらもかなり遠回りした勉強法ですので、参考にされる際はその点にご留意ください。


決意編

生物分類技能検定とは

おさらいですが、生物分類技能検定は野生生物の分類や種の識別 (同定) 能力を問う検定試験です。1級から4級まであり、各級のレベルは以下のようになっています。

  • 4級:ビギナー

  • 3級:準プロ

  • 2級:プロ

  • 1級:プロ上級

2級の試験区分としては動物部門・植物部門・水圏生物部門に分かれていて、1年に1部門だけ受験可能です。1級は各部門がさらに複数の専門分野に分かれています。3級・4級は部門に分かれていませんが、動物・植物・水圏生物の全てが試験範囲になるイメージです。

1級・2級は自然環境調査業務の入札資格として活用されており、業界内でプロ資格として認知されているようです。1級受験には業務経験が必要ですので、アマチュアとしての最高位は2級です。2級以下に受験資格はありません。

生物分類技能検定2級動物部門とは

生物分類技能検定2級動物部門は毎年10月下旬から11月上旬の特定の日が試験日に設定され、CBT形式、120分で実施されます。最寄りのテストセンターにて受験可能です。2020年以前は試験会場が限られていました。実は2020年以前と2021年以降では試験形式が変化しています。

2020年以前の試験内容
2020年以前は会場試験スタイルで、いくつかの都市に試験会場がありました。試験問題を持ち帰ることができ、解答は公式サイトにて公表されたので、自己採点をすることができました。2020年以前は以下の配点で出題されていました。

  • 共通問題:選択式20問 (20点)
    動物に限らず、植物や水圏生物、微生物、学名に関する命名ルール、標本作成など広く生物分類に関して出題されます。

  • 専門問題:選択式60問 (60点) +写真問題 (記述式) 10問 (10点)
    以下は専門問題選択式の内訳です。

    • 哺乳類:10問

    • 両生類・爬虫類:10問

    • 鳥類:10問

    • 魚類:10問

    • 昆虫類&陸上節足動物他:20問

  • 実物を用いた問題:選択式&記述式5問 (5点) +スケッチ問題1問 (5点)
    昆虫の抜け殻の問題しか見たことがありません。

2021年以降の試験内容
2021年以降はCBT形式になり、試験問題の持ち帰りが不可能になりました。また、実物問題が観察問題に改められ、スケッチ問題がなくなり、配点が5点になりました。100点満点を維持するためか、専門問題選択式に5問追加されました。2021年は以下の配点で出題されていました。太字部分が変更箇所です。

  • 共通問題:選択式20問 (20点)
    変更なし

  • 専門問題:選択式65問 (65点)+写真問題 (記述式) 10問 (10点)
    以下は2021年における専門問題選択式の内訳です。

    • 哺乳類:10問

    • 両生類・爬虫類:10問

    • 鳥類:10問

    • 魚類:11問 (+1問)

    • 昆虫類&陸上節足動物他:24問 (+4問)

  • 観察問題:選択式&記述式5問 (5点)
    2020年度の実物問題と同様、昆虫の抜け殻がテーマ

2022年は観察問題の出題傾向が変わっていました。専門問題の出題配分も変更があったのかもしれませんが、手元に試験問題がないので確認のしようがなく、出題傾向の変化は来年発売されるであろう2023年度版の過去問から読み取る必要があります。

なお、公式サイトに過去問の正誤表が掲載されていますが、誤記部分が2級動物部門専門問題の一部ですので、2問だけですが、出題レベルを垣間見ることができます。

合格者層や合格率は公式サイトで公表されています。合格者層は関連業務従事者と学生が70%以上、合格率は5.0~16.1%です。年によって振れが大きいです。素人・初学者が合格するのは結構難しそうです。

私のスペック

  • 子どもの頃から生き物が好きで、よく昆虫採集をしたり図鑑を見たりしていた

  • 大学は理工系(化学系)。高校では物理と化学を履修していたため、高校生物の知識さえない

  • 大学を卒業してから20年間ずっとITエンジニアで、自然環境調査とは無縁の業界で働いている

  • 2児の父で、今でも子どもと昆虫類やトカゲを採集したり、飼育したりしている。釣り経験はなし

  • 資格試験は結構受けていて、試験慣れしている。ただし生物分野の資格試験は受けたことがない

以上のように、生き物についてまったくの無知ではないが、試験に通用するレベルではなく、あくまでも素人の延長上の知識しか持っていませんでした。特に鳥類・魚類・植物はまったく知識がない状況でした。

受験の動機

資格試験を結構受けていて、よく情報収集をしていました。そのため、生物分類技能検定については以前から知っていて、気になっていた資格試験の1つでした。2020年2月にIT資格を取得した後、IT資格はもういらないし、気分転換に何かをやってみたいと考えていました。また、ちょうどその頃(2020年春頃)はコロナ禍でおうち時間が長くなり、毎日のように子どもと散歩をしていました。そこで、気分転換に生き物に関するボランティア活動をしてみたい、散歩をより楽しみたい、この2点を動機として独学による勉強を開始しました。

まずは2級動物部門の過去問、3級・4級の解説集、過去問を購入しました。2級どころか3級の問題も解けないレベルでしたが、3級・4級は当時まったく興味のなかった植物が多く出題されており、最初から2級動物部門を受験することを決意しました。

受験編その1:最初の受験の年 (2020年)

他の方の合格体験記などを見て、共通問題や学名問題、特定分野を捨てる、何年も受験してやっと合格するなど、いろいろな情報があふれていましたが、実際の問題をみてもどれが捨て問かも分からないレベルだったので、以下のように勉強を進めていきました。

  • 図鑑を揃える

  • 3級・4級の解説集と過去問のうち動物部分をざっと理解する

  • 2級動物部門の過去問を分析、出題傾向をつかむ

  • 共通問題や学名問題、特定分野などを捨てない

図鑑を揃える

図鑑は過去問に掲載された種を理解するために必須です。クワガタムシ・カブトムシ図鑑と両生類・爬虫類図鑑はもともと自宅にあったので、それらはそのまま使用しました。追加で簡易な哺乳類図鑑、鳥類図鑑、魚類図鑑、昆虫図鑑を購入して、勉強に活用しました。

3級・4級の解説集と過去問のうち動物部分をざっと理解する

3級・4級では目・科を意識した問題があります。2級では属を意識した問題が多く出題されるので、3級・4級の解説集と過去問をざっと確認する感じで大丈夫かと思いますが、知らない生物種は調べました。写真問題は種レベルの問題ですので、その点は2級と同じであり、とても参考になります。

2級動物部門の過去問を分析、出題傾向をつかむ

2020年度版の過去問は過去5年分の掲載があり (現在は過去4年分ですね)、それらをすべてジャンル毎に並べ替えました。例えば哺乳類なら食虫目 (日本の種は現:真無盲腸目) の問題、翼手目の問題、齧歯目の問題のようにグルーピングし、さらに食虫目ならばトガリネズミの問題、ジネズミの問題、ヒミズの問題、モグラの問題のようにグルーピングし、さらに出題テーマ毎に並べ替えました。それからテーマや掲載種について図鑑やネットで調べました。このとき正解肢だけでなく、他の選択肢も調査しました。また簡易な図鑑に掲載されていて、選択肢には出ていない種 (出題されていない種) も同時に調べていきました。並び替えた問題や調べた内容はノートにまとめました (以下このノートのことを『まとめノート』と書きます) 。このような作業によりおのずと出題されやすいテーマやジャンル、種をつかむことができます。

まとめノートと構成

共通問題や学名問題、特定分野などを捨てない

ある特定のジャンルを捨てるほどの自信や余裕がなく、基本的にすべての問題を対象に、まとめノートを作成していきました。問題を捨てることをしないため、この時点では共通問題や学名問題もキチンと調べあげました。この検定にはテキストが存在しないため、まとめノートが他の資格試験の基本書のように機能しました。ある程度学習が進んでからは、不足している図鑑等を購入し、調べた内容をまとめノートへ書き足していきました。

  • 昆虫図鑑にガの掲載が少ないため、ガの図鑑を購入

  • 昆虫の食草をテーマにした問題が多いため、昆虫の食草図鑑を購入

  • クモの問題に対応するため、クモ図鑑を購入

  • 外来種の問題に対応するため、外来種図鑑を購入

  • 共通問題に対応するため、理科年表を購入

  • 分類学の知識問題に対応するため、動物分類学の本 (読み物) を購入

  • スケッチ問題に対応するため、生物観察におけるスケッチのHow-To本を購入

他に環境省ホームページにある特定外来生物等一覧を参照しました。ただし写真が掲載されているわけではないため、上述のとおり外来種図鑑は購入しました。

ビオトープ管理士の受験

また、並行してビオトープ管理士の2級計画部門に取り組みました。ビオトープ管理士の科目として『生態系』があり、学習内容は生物分類技能検定に活かせます (特に共通問題)。ビオトープ管理士はテキストが販売されていて、過去問も無料で入手可能なため、勉強がしやすかったです。テキストをざっと読み、過去問を解き、小論文対策をしました。これまでの生物分類技能検定対策による知識ベースがあったため、勉強時間13時間程でビオトープ管理士に合格できました。生態学以外はギリギリでの合格でした。

ビオトープ管理士にぎりぎり合格

直前期

直前期にはPDF化したまとめノートやWeb資料をiPhone・iPad・Kindle Paperwhiteに入れて、スキマ時間も使ってよく目を通しました。他には写真問題に対応するため図鑑を眺めたり、実物問題対策としてスケッチの練習をしました。ただ、写真問題に関しては満足するほど勉強できないまま試験を迎えました。

2020年度試験結果

2020年度は試験が11月上旬で、生物分類技能検定に関する2020年の勉強時間は118時間程、58点で不合格となりました。自己採点の結果、スケッチが0点と判明、スケッチは自信があったので、結構ショックでした。写真問題はあまり分からなかったのですが、勘で書いたものが結構当たっていました。

2020年度は不合格

受験編その2:2回目の受験の年 (2021年)

2021年度の受験に向け勉強を再開したのは翌年7月頃でした。前年までに覚えたことはきれいさっぱり忘れていましたので、覚え直しました。基本的にはまとめノートを作成していく勉強スタイルはそのままに、まだ勉強していない部分や、自分の知識の弱いところを中心に勉強して、合格点 (例年65点) を目指す方針としました。

  • 2020年度試験問題の分析

  • 新しい試験を知る

  • メジャーな種の理解

  • 哺乳類は深追いしない

  • 鳥類などの知識の強化

  • 昆虫の抜け殻による同定能力の強化

  • 知識のアップデート

  • 共通問題対策

  • モチベーションの維持

2020年度試験問題の分析

2020年度の試験問題を分析し、まとめノートへ追記していきました。作業としては、前年のノートまとめ作業と同じです。

新しい試験を知る

試験方式がCBT形式に変わるとの情報がありました。スケッチ問題がどのように変化するか分かりませんでしたが、PCではスケッチができないことは確実なので、スケッチ問題に取り組むのはやめました。

メジャーな種の理解

写真問題で出題されるのはメジャーな種が中心ですが、どの生物種がメジャーか  (一般によく見られるか) は図鑑に載っていないので、散策向けの生き物図鑑を購入して、掲載/非掲載をメジャーであるか否かの指針として利用しました。また近所に川や田んぼや森があり、そこで実際に生物を観察して同定するようにしました。散歩や外出のお供として、双眼鏡とルーペを持っていくことを心がけました。特に鳥類は年中見られるし、時期によって見られる種が異なるので、散歩から学べることは多かったです。

哺乳類は深追いしない

日本の野生哺乳類は種数がそもそも少なく、相当に深い知識が問われることが多い印象でした。実際に2020年度の試験を受けたときに愕然としたことを覚えています。基本的に前年までに学習したことまでを勉強範囲とし、あまりにも深すぎる問題については過去問に回答できるレベルに留めるようにしました。難問を追いかけてはキリがないので、環境白書を読んだりはしませんでした。この頃には捨て問 (深すぎる問題) を感知できるようになっていました。

鳥類などの知識の強化

鳥類については、ただ分類がわかる、写真で識別できるだけでは足りず、『現在はどこどこで見られるようになった』など、最新の分布を把握する必要があるので、鳥類図鑑の解説を通読しました。また、手元の鳥類図鑑には~科や~類にどのような特徴があるかが記載されていないため、詳しめの鳥類図鑑を新たに購入しました。新たに購入した鳥類図鑑にはその種の見られる頻度 (つまりメジャーな種であるか否か) が記載されていたため、メジャーな種の理解にも役立ちました。

昆虫の抜け殻による同定能力の強化

実物問題では例年、昆虫の抜け殻を見て種を同定する問題が出ていましたが、手元の図鑑には幼虫の写真は載っていなかったため、ネット上の資料を活用して、特にトンボ類の幼虫の同定の仕方を学びました。

知識のアップデート

国内希少野生動植物種、環境省レッドリスト、特定外来生物はよく更新されます。過去問を解いているだけではこのあたりの知識が古いままなので、ネット上の資料を活用して学習を進めました。特に新種については環境省レッドリストに詳しい情報が載っていて、新種理解の参考にしました。

共通問題対策

共通問題は対策が難しいですが、割と単純な知識問題が多く、特に藻類や菌類、水圏生物の知識は試験対策として役に立ちます。理科年表プレミアム (サブスク) を契約したのですが、これが優秀で、過去の理科年表の情報を閲覧でき、さらにデータのダウンロードも可能です。ダウンロードしたデータを加工して図式化したものを勉強資料として利用しました。もちろん理科年表自体にも図表が多く、そのまま勉強資料としても活用しました。

モチベーションの維持

分類学、生態系、鳥類、昆虫などの本 (読み物) を購入し、楽しく読みながら、モチベーションを維持しました。結果としてこの年に生き物関連の本 (読み物) を6冊購入しました。また近くの科学館へ行き、散歩では見られないような哺乳類・両生類・爬虫類・鳥類・魚類などを観察し、解説を読み、知識を深めました。

直前期

直前期にはAnkiアプリを使用して暗記を進めました。AnkiアプリはiPhoneやAndroid、Kindle Fireで利用できるので、いつでもどこでも暗記に勤しみました。Ankiアプリ内のカードは341枚作成しました。試験前にはすべてのカードに正答できるようになっていたと思います。学名は属名だけを暗記するようにし、種小名は覚えませんでした。また、写真問題にフォーカスして、メジャーな種の写真を頭に入れました。こちらは主に目力に頼るほかありませんでした。

2021年度試験結果

2021年度の試験は10月下旬開催で、64点で不合格になりました。試験がPCになったことにより、写真問題もPCのディスプレイ越しで見るので、写真の色みに惑わされました。後1点だったので『ここをこう答えていればよかった』のような後悔が尽きない結果でしたが、合格レベルに達しつつあることは確認できました。生物分類技能検定に関する2021年の勉強時間は125時間程でした。

2021年度はギリギリ不合格

受験編その3:3回目の受験の年 (2022年)

2022年度試験に向け勉強を開始したのは翌年4月頃です。2021年度の試験から試験問題を持ち帰ることができなくなったため、2022年度版の過去問を購入しました。それよりも前、過去問安売り時期に、2021年度版植物部門・水圏生物部門の過去問も購入しておきました。2022年度は以下のように勉強を進めました。

  • 2021年度試験問題の分析と他部門過去問の参照

  • 3級の受験

  • 知識のアップデート

  • モチベーションの維持

2021年度試験問題の分析と他部門過去問の参照

2021年度の試験問題を分析し、まとめノートへ追記していきました。作業としては、前年までのノートまとめ作業と同じです。また、他部門過去問の中身を見ていきました。水圏生物部門専門問題では魚類が出題されるのですが、海水魚だけでなく淡水魚も出題され、また藻類も試験範囲ですので、相当に参考にしました。水圏生物部門は動物部門と同一の試験問題もある一方、動物部門では出題されなかった淡水魚問題 (あるいは淡水魚が選択肢にある問題) がありましたので、水圏生物部門の魚類問題は内容を確認して、まとめノートへ追記しました。植物部門専門問題には維管束植物だけでなく蘚苔類・菌類・藻類などが出題範囲にありますが、2022年度試験共通問題に向けた過去問活用はしませんでした。

3級の受験

これまでの2級対策によって、3級は合格できるのではと思い、模擬試験的に3級を受験することにしました。動物だけでなく植物についても知っておきたかったというのもあります。そこで、新たに2022年度版3級・4級過去問を入手し、試験対策を行いました。植物については野草や樹木の知識がゼロ、植物分類の知識もないため、野草と樹木の図鑑をそれぞれ購入して学習しました。8月 (試験開始初日) に3級を受験し、無事81点で合格しました。3級では過去問と同じ問題もしくは類題が出題されることがあるので、3級に関しては過去問をやりこむことが重要であると感じました。

3級は合格

知識のアップデート

過去問分析において、手持ちの図鑑では対処できないものがあり、小型の鳥類図鑑、昆虫図鑑(2冊)、淡水魚図鑑を購入しました。メイン利用する図鑑には付箋を貼りまくっていたので、基本は最初の1冊を利用し続け、追加購入した図鑑は単にリファレンス用や外出時学習用として活用しました。また国内希少野生動植物種、環境省レッドリスト、特定外来生物については更新を確認し、差分理解に努めました。

図鑑に貼られたたくさんの付箋たち

モチベーションの維持

引き続き読み物を購入したり、前に買った読み物を読んだり、楽しくモチベーションを維持しました。

自然観察指導員講習会

なお、5月頃に自然観察指導員講習会を受講しました。もともと生物系ボランティアなどが出来ればと思っていたので、それが動機です。講習では近年の生態系についての説明があり、知識のアップデートに役立ちました。講習会には植物が好きな方が多い印象でしたが、私のような動物系の方もいました。講習を通して植物にも興味がわきました。

自然観察指導員として無事に登録

直前期

前年と同様、直前期にはAnkiアプリを使用して、必要事項を暗記しました。目力を頼りに写真問題対策をしたことも変わりありません。また、鳥類の写真問題については、ネット上のクイズサイトを使って対策しました。

2022年度試験結果

2022年度の試験は10月下旬開催で、結果として、わりとギリギリですが、66点で合格となりました。生物分類技能検定に関する2022年の勉強時間は161時間程でした。

2022年度はギリギリ合格

感想編

生物分類技能検定2級動物部門は、過去問を用いて対策できることが40~50%程度、おそらく半分以下です。とはいえ、勉強を進めていれば選択肢の絞り込みも可能になります。あとは過去問をヒントにして、過去に出題されていない種やテーマをどれだけカバーしたか、元々知っていたことがどれだけ出題されるか、それと運に頼ることになります。つまり、その年の試験との相性は大事だと思います。素人・初学者の私が完全独学で勉強に費やした時間は合計404時間程でした。効率よく勉強し、試験との相性が良ければ、半分以下の勉強時間で合格できると思います。大学や専門学校等で関連する勉強経験のある方や、そもそも自然環境調査業務などで業務経験のある方であれば、短期合格も可能かもしれません。

以外と役立つこと

生物関連以外で試験対策に役に立つスキルなどを3点挙げます。

ITスキル
正規表現を駆使したテキスト加工、Excelの関数や集計機能、マインドマップツールなどを使用した分類や出題傾向の可視化、Ankiアプリによる暗記作業の効率化、ドキュメント電子化、iPadやKindleの活用など、ITスキルにより効率的な学習が可能になります。こういったスキルを活用して作成した図表は、25~30はあると思います。

日本地理の知識
島の位置を理解することは重要です。利尻・奥尻や隠岐・壱岐、五島列島、南西諸島など、島の位置関係に混同がないようにすると良いと思います。位置関係に理解がないと『福江島』『トカラ列島』『徳之島』ってどこ?ってなります。さらに『サキシマ』『ヤエヤマ』を冠する種は多いですが、そもそも先島諸島や八重山諸島の範囲を正確に知っておくと分布に関する理解が早いです。私は地図を見るのが好きなので、これらの知識は最初からありました。

日本列島成立の歴史 (地学?)
日本列島が現在の形になるまでに、どの島がいつ頃他の大陸や島から切り離されたかによって、島々での種の分布が異なるのですが、記憶を定着させるため、それがこじつけであったとしても、イメージすることが有用だったりします。例えば隠岐は過去に島根と陸続きでした。日本列島の成り立ちをはっきりと知っているわけではないですが、Wikipediaなどを見ておくと、ツキノワグマとヒグマの分布とか、モグラの分布、両生類の分布などをイメージする際に役立つかもしれません。

注意点

生物分類の世界では分類が見直されたり、規制が変化したりなど、相当に変化が激しいです。近年でも植物・鳥類に多くの見直しが入ったり、両生類や魚類に新種認定 (従来1つの種とされていたものを複数の種に再分類することが多い) があったりします。そもそも日本は生物多様性ホットスポットで、たとえば世界的なサンショウウオの宝庫でもありますが、この10年程で種数がすごいことになりました。古いネット記事や図鑑はそういった最新の知識をもって参照するのが吉です。各学会作成の目録から最新の分類や追加種を把握すると安全かと思います。またシノニム (別名) も多いので図鑑参照時に注意が必要です。あとは、中学生の頃 (30年程前) 『界門綱目科属種』や5界説を学びましたが、現在は上界やスーパーグループが使われるケースもあります。昔の知識はアップデートが必要です。

他資格との難易度比較

完全に主観ですが、取得済みの資格試験を難易度順に並べてみました。

生物分類技能検定2級動物部門生物分類技能検定3級2級ビオトープ計画管理士環境社会検定 (eco検定)

また自己の経験から、生物分類技能検定2級動物部門と他分野の資格試験も難易度順に並べてみました。こちらも私の実感によるものです。

弁理士 (*1) > 行政書士 (*2) > 生物分類技能検定2級動物部門TOEIC500点後半から600点後半へ100点程度アップさせる努力 (*3)

(*1) 複数回の不合格経験あり。他の資格試験は独学ですが、これだけは通信講座を受けました。
(*2) 行政書士は2022年度から学習を開始しました。勉強時間243時間程で、2022年度試験は記述抜き148点でした。たぶん不合格。
(*3) TOEICのHow-To本を使用してスコアアップさせたときの勉強時間と比較しました。

勉強のしにくさで言えば、生物分類技能検定2級動物部門はテキストがないため、他の資格試験とは比較にならないほど難解です。販売されているテキストや解説付き過去問を使った学習に慣れているとつらいです。

勉強を通じて得られたもの

散歩の解像度が大幅アップ
鳥類に関して言えば、スズメ・小鳥・カラス・カモ・シロサギ・・・のような粒度でしか認知してませんでしたが、たとえば身近な種ならばムクドリ・ハクセキレイ・シジュウカラ・ハシブトガラス・マガモ・コガモ・コサギ・アオサギ・・・のように、ハッキリと分かります。それは昆虫だったり植物だったり他の動植物でも同様で、散歩中にいちいち気になるため、散歩の歩みは遅くなりました。ジャコウアゲハが飛んでいるだけでウマノスズクサを探したくなったり、アオオサムシを触ると臭くてなぜかそれが嬉しかったり、日向ぼっこをしているアオダイショウを見かけて写真を撮りまくったり、クリハラリスやアカボシゴマダラを見つけて環境に憂慮したりなど。

動物園・水族館が楽しい
動物園・水族館では身近では見られない野生生物を近くで観察できます。それだけでテンションがあがります。海外の生物種であっても、~目~科~属などが分かるとフムフム・・・となります。例えばマントヒヒはオナガザル科ヒヒ属ですが、ニホンザルは同科別属ですので、近からず遠からずの関係性が分かります。

無知の知
これは生物に関してですが、知らないということを知っているのが重要で、例えばカラスを単に『カラス』として認知するのではなく『ハシブトガラス』『ハシボソガラス』のように認知して、その種に違いがあることが分かっていれば、生態の違い (例えば人間の身近に出現する時期が異なっていたり、彼らの勢力争いを知るなど) を調べることができます。これはカラスに限ったことではなくどのような生物種にもいえることです。別分野ですが鉱物なんかも同じかと思います。『石ころ』『岩』ではなく名前があり、同じ名前でも産地の違いや生成の過程で化学成分が異なったりして、見た目すら違う場合があります。無知の知を悟れば少なくとも調べるきっかけになります。『あのカラスは何ガラスだろうか』と。少なくとも生物種に関しては、無知の知を認知できるようになりました。

まとめ

長かったですが、ここまで合格体験記を書いてきました。基本路線として、具体的に使用した本や資料、実際の出題傾向、まとめノートの具体的な内容に触れないように記載しました (さすがにまとめノートを公開する訳にはいきません) 。生物分類技能検定2級動物部門は素人・初学者の完全独学でも合格できます。生物愛と、ある程度の努力があれば合格できます。たぶん植物部門や水圏生物部門も同じでしょう。興味のある方はチャレンジされてはいかがでしょうか。

Web記事のセオリーやSEO、マネタイズは完全に無視したため、ここまで長くなってしまいました。最後までお読み頂いた方、本当にありがとうございます。本記事がお役に立てたならば、それが初めてのボランティア活動ということで、この上ない幸せです。



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