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古文書解読検定2級/準2級/3級 合格体験記 (独学)

セアカ(@seakasan)といいます。2023年9月に古文書解読検定2級に合格しました。古文書解読検定の合格体験記はネット上に少ないため、勉強されている方、これから勉強される方に向けて、私も3級から2級までの合格体験記を書いていこうと思います。


古文書解読検定とは

古文書解読検定は、古文書解読検定協会が実施している民間の検定試験です。江戸〜明治期の古文書の一部が問題となり、その解読文を作成する試験になっています。ここに例題と解答がありますが、解読文をまるっと解答します。事前に例題を見ておかないと、最初の受験の際に面食らうことになります。現代語訳は求められません。

等級は3級から1級までの5段階があります。上位の級を直接受けることはできず、3級から順に合格する必要があります。現在は師範認定制度もあります。各等級と合格ラインの目安は以下のとおりです。

  • 3級:上位8割

  • 準2級:上位7割

  • 2級:上位6割

  • 準1級:上位5割

  • 1級:上位3割

  • 師範認定:1級合格後に1級を受験して、準1級受験者の1級合格3位以内を2回

3級〜2級は郵送試験で、自宅で参考書を見ながら数週間かけて解くことができます。準1級からは会場試験です。

受験の動機と私のスペック

私は下のページに記載のとおり、ライフワークとして、我が家の家系を調査しています。

家系調査を進めていくと、戸籍に読めない文字が出てきたり、語彙が理解できなかったり、さらには古文書まで読むことになります。もともと古文書解読検定の存在は知っていたのですが、当初は受けるつもりがありませんでした。しかし家系調査自体に興味を持ち始めてしまい、行政書士試験と古文書解読検定への挑戦を始めました。

受験決意前のスペックは以下のとおりです。

古文書解読検定3級受験

3級を受けたのは2022年の7月頃です。受験前に以下の本を読了しました (勉強ではなく単に読了です)。

古文書解読検定3級に申し込むと特典として『ワンランクアップ 漢字くずし字375』が貰えることになっていたので、これで準備は十分かと甘くみていました。自宅でじっくり解読できることもあり、これ以上の対策はしませんでした。しかし、実際に試験問題を見ると、問題の難しさに愕然としました。変体仮名が読める程度では、まったく歯が立ちませんでした。そこで、

を買いました。結局ほぼ1か月かけて何とか解読して提出しました。

結果は20点満点中16点で合格しました。この回の合格ラインは5点でした。3級の結果通知とともに試験の解答が送付されたので、しっかりと復習しました。

古文書解読検定準2級受験

準2級を受けたのは2023年1月頃です。前回と同様の試験であれば、前回と同様に対応することで合格できるであろうという目論見で、特段の準備をしませんでした。しかし、実際に試験問題を見ると、またもや問題の難しさに愕然としました。少なくとも前回の3級の問題よりも難易度が高く感じました。しかし『ワンランクアップ 漢字くずし字375』と『くずし字解読辞典 普及版』を片手に諦めずに取り組み、前回同様ほぼ1か月かけて何とか解読して提出しました。最後までわからなかった部分もあり、合格するのかは正直不安でした。

結果は20点満中11点で合格しました。この回の合格ラインは11点でしたので、ボーダーギリギリでした。その後試験問題はしっかりと復習しました。

古文書解読検定2級受験

2級を受けたのは2023年7月頃です。準2級受験の際には3級からの難易度上昇に驚いたので、以下の本を購入して、今度はしっかりと対策しました。

『基礎 古文書のよみかた』を基本書・字典として活用、『おさらい 古文書の基礎 文例と語彙』で文例に慣れるようにしました。また候文の文法書として『近世史を学ぶための古文書「候文」入門』を参考にしました。2級の問題は準2級よりさらに難易度が高かったです。2級もほぼ1か月かけて何とか解読しました。出来具合としては、少しわからない部分もありましたが、準2級の時よりかはマシに感じていました。

結果は、20点満点中15点で合格しました。この回の合格ラインは14点でした。解答と自分の答案控えを突き合わせると1か所ケアレスミスがあり、そこで1点落としていたので、正直危ないところでした。

感想と考察

難易度

合格率だけをみると簡単そうにみえますが、難易度の高い試験だと感じました。古文書解読検定3級から2級にかけて、徐々に難易度が増していきました。文章は長くなり、癖のある字や読みにくい字も増えました。候文の文法や江戸期の語彙も理解する必要性が増していきます。独学ではあったものの、私は2級合格だけでも大変でした。準1級からは会場受験のため、難易度がさらに増します。準1級はしばらく控えます。

学習メリット

学習後に感じたメリットを、以下に列挙します。

  • 家系調査のために古文書を読む際に学んだことがだいぶ役に立ちました。

  • 博物館・資料館で古文書をみるのが楽しくなりました。

  • 生前に祖母がくれた手紙を解読できました。時間を超えた感動がありました。※なお祖母は書道の先生でした。

地味に役に立つ知識

古文書解読のために役立った知識を以下に列挙します。

  • 中国語簡体字:くずし字は時として中国語簡体字に似ています。私には少しだけ中国語学習経験がありました。

  • 漢字旧字体と語彙:明治~昭和初期の本を読書していると身に付きます。現代語訳では身につかないので、オリジナルの読書をお勧めします。青空文庫でも読めます。

  • 漢字異字体:古い戸籍を見ていると多々登場します。家系調査経験から少しだけ身に付いていました。

おすすめ勉強法

まずは変体仮名に慣れる必要があります。『これなら読める! くずし字・古文書入門』から始めるとよいと思います。

変体仮名になれたら、次は『基礎 古文書のよみかた』を強くお勧めします。『基礎 古文書のよみかた』では文法とくずし字をセットで学ぶことができます。『基礎 古文書のよみかた』にはもう少し早く出会いたかった。余力があれば『おさらい 古文書の基礎 文例と語彙』をお勧めします。

リファレンスとしては『くずし字解読辞典 普及版』が必須級の本でした。

古文書解読検定の過去問や復習、その他古文書の解読もよいと思います。私はその他古文書として、偶然手に入った『かてもの』を読みました。

備考:AI vs 人間

古文書解読をされている方はご存じの方が多いと思いますが、『みを』というスマホアプリがあります。古文書用OCRアプリです。同様のアプリは他にもあります。これらのアプリを使うと、くずし字の字形から簡易的な解読ができます。普段の古文書解読ではとても役にたちます。

しかし、古文書・古文書解読には以下の特性があります。

  • 同じような字形になるくずし字が多くある

  • 手書きである

  • そのため、内容から判断して最適な解読を検討する必要がある (超重要)

したがって、現段階の古文書OCRでは、古文書解読検定に合格するのは難しいです (もしかしたら3級は合格できるかもしれませんが、3級であっても問題文を正確に解読することはできません)。

もっとも、AIの進化は早いので、そのうち古文書OCRだけで古文書解読ができる時代が来るかもしれません (しかし現在でも日本語⇔英語翻訳をITだけに頼れないように、古文書解読もしばらくは人間優勢かな)。 今後のAIの進化に期待ですね。

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