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【キャリコン事例】「行動して後悔する」キャリア・ドリフトの活かし方

「キャリア・ドリフト」。あまり馴染みのない言葉かもしれません。金井壽宏教授が提唱した「キャリア・ドリフト」について、その定義だけではなく、キャリア・ドリフトの視点で自身に起きたキャリアにおけるできごとをどのように捉えて、どのように活かすのか事例を元にお伝えします。みなさんのキャリア・ドリフトを考えるうえでのヒントになれば幸いです。



「キャリア・ドリフト」とは?

「キャリア・ドリフト」は、金井教授の著書「働くひとのためのキャリアデザイン」のなかで語られています。
『キャリアがドリフトするとは、クラゲのように生きること』
『ドリフトする。つまり流されていってしまうこと』
と書かれています。

クラゲは遊泳能力が低く、通常は水の流れに身を任せて浮遊して生活していることから、キャリアに当てはめたようです。クラゲのように流れに身を任せて流されるままに働いていくこと、これが「キャリア・ドリフト」です。

そんな風に『多少流れに身を任せる(ドリフトする)のもいいでしょう』とおっしゃっているのです。
 
引用:金井壽宏著. 働くひとのためのキャリアデザイン (PHP新書)


キャリア・ドリフトの事例紹介6例

6つのキャリアに関する事例を、「キャリアデザイン」と「キャリア・ドリフト」の2つの視点でお伝えしていきます。

  • キャリアデザイン視点
    自身のキャリアを設計すること。「いつ、何を、どのようにするのか」を元にキャリアの計画を立てる視点のこと。

  • キャリア・ドリフト視点
    流されているキャリアの今をどう捉えて、どう感じているかという視点のこと。

【事例1】新卒で興味のない仕事に就く

キャリアデザイン:就職氷河期、とにかく就職をすることが優先であったため、自身の将来なんて一切考えていない。自己理解、棚卸、自分の夢、もちろんまったく考えていない。
キャリア・ドリフト:紹介で入社できた衣料の小売会社。販売がしたいわけではなかった。初めての経理、買い付け、接客販売、遠方への運転(搬入)、なんでも言われるがままやっていたけど、度重なるピンチ体験を通して度胸がついた。経理の経験をしたことで、数字が苦手であることを知る。
 

【事例2】アルバイトで入社した企業で初の営業職

キャリアデザイン:何としても出版業界に入りたいという意思を持ち、アルバイトでも良いという強い気持ちで潜り込んだことは、ひとつの成功体験。ただ、出版業界に入りたい理由を掘り下げると、ある「夢」が関係していた。夢については本筋から離れるため、ここでは触れない。
キャリア・ドリフト:営業職になるとは思っていなかった。自分には営業職は向いていない、できない、と思い込んでいたが、いざやってみると、「できた」。数字も「取ってこれた」。数字のヨミも、上司に“澤田のヨミは根拠が分からないけど当たる”と「信じてもらえた」。周囲にも営業が向いていると「言ってもらえた」。など、実はできる、という自信が持てた。
 

【事例3】派遣会社からの紹介で入社した会社がIT企業

キャリアデザイン:IT業界を希望していたわけではなく、たまたま派遣会社から紹介されて入社した。将来のデザインどころか、セミナージプシーになるなど、自分の将来を憂うる時期を過ごした。何をやっていくべきか、どう生きるべきか、周りの人たちが素晴らしい人に見え、自分自身が何も持っていない、何もできない非力な社会人に思えた。
キャリア・ドリフト:ITサービスの新事業部門への異動によりIT職種(Webディレクター、Webコンサルタント)での業務がスタート。やりたい職種ではなかったが、ここでITスキルと知識を身につけられたことは、来たるIT時代の波にうまく乗れた。根本の仕組みから理解しているITスキルや知識は、ひとつの強みにもなっている。
 

【事例4】断り続けていたマネージャーへの昇格

キャリアデザイン:未来のことは全く考えておらず、いかにマネージャーをやらずに仕事に取り組めるか、という後ろ向き思考しかなかった。むしろ自分のキャリアデザインに「管理職」というルートは無かった。
キャリア・ドリフト:自分に管理職は向いていない、そのような振る舞いさえできないからやりたくないと考えていた。いざやってみると、その考えは当たっていたが、ここで体験した「部下との関わり」「他部署との連携」「相当な心的負担」は、自分の視野を広げ、視座を高めてくれるものになった。得たものに対する代償も大きかったが、それがあるからこそ今がある。
 

【事例5】未経験プロジェクトの主導者として白羽の矢が立つ

キャリアデザイン:これが自分のキャリアデザインの大きな転機になるとは思っておらず、依頼されたから取り組んだ。
キャリア・ドリフト:コミュニケーションスタイルについて学んだことが活かせると思い進めてきたが、現場は期待を裏切る結果が多かった。その「現場体験」が自分の今後のネタに繋がることとなった。多様な人財(性別、年代、ポジション、価値観すべてが異なる人)との関わり方を知り、コミュニケーションスキルが格段に上がった。
 

【事例6】独立という選択肢を取る

キャリアデザイン:40代半ばでようやくデザインを意識し始める。この年で独立しようと決めていなかった。なんとなく方向性は決めてはいるが、明確なデザインにはなっていない。
キャリア・ドリフト:周囲にフリーランスや起業家の女性たちが存在していた。今が退職して独立するタイミングかもしれないと感じ、その風に乗る。デザインは明確ではなくとも、流れに乗って大きな決断をした。振り返れば、これは大成功となる。

それから今後

「こうしてみよう」
「あれをやってみよう」
 
と思うと同時に思い浮かぶのがネガティブな思考です。
 
「ダメかもしれない」
「できないかもしれない」
「周りは“え~!?”って言うかもしれない」
「細かい部分が詰め切れてなくて、粗すぎるかもしれない」
「本当にこれをやりたいわけじゃない」
「失敗するかもしれない」
「やっぱり向いていないかもしれない」
「この方針は違っているかもしれない」
「やっぱりダメかもしれない」(無限ループ)
 
事前に考えて準備することは必要ですが、そこに時間ばかり取られて、行動できなくなることはもったいないです。

前述のキャリア・ドリフト例のように、目の前に来たことに対して、「とりあえず」やってみることで、新しい発見と意外な特技が見つかるかもしれません。実際、私は見つけることができて、今の方向に舵を切り直しすことができています。

今、目の前のできごとは、自分に役立つのか分からない、自分が望んでいたことではない、とちょっと悲観的になりたくなる気持ちも出てきます。

でも、将来自分にとって、その「悲観的な点」は必ず「意味のある線」につながります。
 
「悲観的な点」が邪魔して実践できなかったこともありますが、「行動しなかった後悔」と「行動した後悔」とでは、やはり比べ物にならないほどに、「行動しなかった後悔」が大きいのです。
 
私には、独立してから(独立する前もですが)「行動しなかった後悔」が数多くあります。そして気が付けば独立して5年経過(2023年時点)していたことに、大切な時間を失ってしまったと後悔しています。
 
後悔しても何も変わりません。変わるなら今から、ですね。

ただし注意すること

「キャリア・ドリフト」で流れに身を任せるだけではなく、『節目と節目の間は、多少流れに身を任せる(ドリフトする)のもいいでしょう』と金井教授が語られているように、「節目」には、しっかりとキャリアデザインを考えることを怠けてはいけません。
 
キャリア・ドリフトだけでは、クラゲのように漂い、ただの漂流者になってしまいます。
そうならないために、皆さんの節目が来た時に、改めて過去と未来を見直して、未来はこちらの方向で良いのか?果たして自分はどこへ行きたいのか?を、一旦立ち止まって考えて「キャリアデザイン」をしてみてください。
 
「デザインしなきゃ!」「強みを見つけなきゃ!」「将来を考えなきゃ!」という思考に縛られず、無ければ無いで良いですし、その時点から得られるものがあります。
キャリア・ドリフトから、キャリアデザインをしても、まったく遅いことはありません。

参考のことば

心理学者ジョン・D・クランボルツの提唱したことば。
人生(キャリア)のターニングポイントの8割は偶然によって成り立っている。


最後までお読みいただきありがとうございました。
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株式会社シールズ


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