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【感想まとめ】GARO ハガネを継ぐ者

「GARO ハガネを継ぐ者」を見た。
 道外流牙が前面に押し出されたキービジュアルから予想していた展開とはちょっと異なり、どちらかというと若い未熟な騎士をメンターとして流牙が導いていくようなお話であった。黄金騎士の堂々たる貫禄と、それに甘えぬ一本筋の通った礼儀正しさが清々しい。さらなる強さを求めて他の騎士に教えを乞う貪欲さも、自分の名声に胡坐をかかない流牙の性格が真っすぐに反映されていて嬉しくなってしまう。
 以下各話感想。


第一話「創(はじまり)」

 サブタイトルの「創」を「はじまり」と読ませるのはなんだか見慣れない感じだが、手元の辞書を引くと確かに「初めて作る」と意味が載っている。だが、これはあくまでも二番目の意味だ。

【創】サウ ①きず。→瘡 (用例略) ②初めて作る。(用例略)

新明解国語辞典 第五版より

 創の字を名前に持つ青年、創磨。少年時代の魂に初めて負った傷口を、あえて磨き上げることで己の強みに変えていくような、そんなイメージを感じさせる名前である。


第二話「兆(きざし)」

『ゴドーを待ちながら』、ふわっと概要だけは知っているが、いつかちゃんと履修したい作品の一つである。


第三話「鋼(はがね)」

 対ホラーのアクロバティックな実戦ではなく、稽古だからこその対人間殺陣もまたよいものである。目を見張るような派手さはないが、それでもはらはら見つめてしまう緊張感。


第四話「傷」

 ロンが好きになる回。流牙のような二つ名持ちでなくとも「守りし者」は「守りし者」だし、そこに誇りと生きがいを見出してはいけないわけではないのである。


第五話「悟(さとる)」

 決戦ゾンビビル・バリケードデスマッチの乱。ありあわせの机やなにかで簡易闘技場のような部屋をこしらえ、自分たちに有利なステージに引きずり込んでからホラーを滅する冷静な作戦判断が光る。


第六話「眼(まなこ)」

 今回のシリーズで一番印象的だったホラーとその被害者である。ナオミは自らの闇を募らせ、誘惑者の罠に落ちてしまう。自らをみじめに感じる彼女の牙は、隣で眩しく輝くマリーに向けられている。だが、マリーこそ(そしてもしかするとマリーだけが)、ナオミが再び輝けると信じ、明るい場所へナオミを導こうとしていた存在なのだ。


第七話「惨(いたみ)」

 恐るべきはガエラの能力である。並の人間では持ち上げることすら敵わないはずのソウルメタルの剣を、イグスを取り込んだ彼女は軽々と振るって見せた。ガエラ自身の力もあろうし、あるいはその依り代となったナオミの陰我の強さも関係しているのだろうか。
 イグスを悼む面々の前で、あえて憎まれ役のようなセリフを口にする流牙。冷静な視点には、何度も修羅場をくぐってきた黄金騎士だからこその重みがある。


第八話「閃(ひらめき)」

 牙狼=流牙は黄金の鎧をすでに手にしているのに、なぜタイトルが「GARO ハガネを継ぐ者」なのだろう、と不思議に思っていた。ジンガやゼロのように、「ガロ」の名を冠さなかった作品は過去にも存在する。まして今回の流牙はコヨリに招かれただけの来訪者で、主人公はどちらかというと創磨の方に思える。
 だが、ここでゴドウの話を受け、タイトルの「GARO」が「牙狼」と旧魔戒語「ガロ」のダブルミーニングだと考えると納得。ふたりの「ガロ」が、「ハガネ」の意思(鎧自体ではなく、精神的なもの)を継承する物語、というわけである。


第九話「門(もん)」

 とうとう破滅ノ門へたどり着いた流牙たち。誘惑者の言葉は巧みで、ムツギや創磨の心の隙間へするすると入り込んでいってしまう。それと戦うことができるのは、心の持ち主である自分自身だけだ。


第十話「惑(まどう)」

 選出されないオビよ……。


第十一話「誘(いざない)」

 父親の相棒だった魔導輪は、きっと創磨にとっても良い導き手になってくれることだろう。ザルバで実証済みである。


第十二話「継(つなぐ)」

 アゴラの三剣士のうち、ロンとオビはいざというときのため街に残ったが、創磨は門前へこっそりイグスの剣を持参していた。ゴドウの真実を見届けるときには、ゴドウの友であったイグスの魂もともにあるべきだ、という判断か。結果的にはそれが勝負の決め手となる。

 まさか道外流牙が黄金以外の鎧を身にまとうとは! サプライズタイトル回収その2である。イグスのハガネの鎧を(一時的にではあるが)受け継ぎ、剣を振るう流牙。はたから見れば、まるでイグスがこの世へ再び蘇ったかのような状況である。ハガネ流牙の身体から黄金騎士の姿が浮かび上がるように顕現した様子を見ると、本当にイグスの魂が流牙の肉体を借りてハガネの鎧を着こみ、ともに戦ってくれたのかもしれない。はるか昔から続く「守りし者」の系譜に連なるもの同士として、イグスと流牙の間にももちろん強い意思の継承は存在しているのだ。

 流牙たちは破滅ノ門へ渾身の閃光剣舞を繰り出したが、その一閃はあくまでも門の外郭、先人たちが門を封じるために利用した、竜の首のごときホラーを退治しただけにとどまる。白い繭のような門の本体は、彼らの眼前で静かに輝いたままである。
 最古のゲートである破滅ノ門は、おいそれと破壊できるような代物ではない。多大な犠牲の末に、先人たちは門を破壊せず、封印して共存していくことを選んだ。あるいは、そうせざるを得なかった。
 門を封じていた竜たちは流牙と創磨の手によって排除された。身を挺して門を閉めようとしたゴドウも、そのくびきを離れて今は柔らかな陽の下に眠っている。門がそこに存在している以上、クレアシティは今まで通りホラーの脅威にさらされることになるだろう。
 だがこの街には、頼もしい魔戒法師と三剣士がいる。先達から受け継いだ心と磨き上げた技で互いを支え合い、頑強な鋼のごとき守りを街に与える存在たち。

 エンディング曲と映像も大変格好良く、またアクターさんのお名前が大きくクレジットされているのも嬉しいところ。
 最後に流牙が手にしていたもふもふ、何かと思ったら莉杏の髪飾りか! 「フッ」と思わず笑みを漏らして、足取りも軽く歩いていくのが何とも嬉しい。問題ごとが収まれば、来訪者は家路を急ぐのみだ。


 というわけで、大変楽しく視聴させていただきました。面白かった!


 余談。
 ヘッダー画像は「牙狼展―守りし者の記憶―」に遠征したとき舐めるように横から下から眺めたハガネ。鎧もそうだがお衣装やホラーの造形、小道具なんかもたくさん展示されていて大変見ごたえがあった。パチンコ台の演出も物珍しくてついつい足を止めて見入ってしまった。
 遠征ついでにコラボメニューも食べることができました。満足。

牙狼〈GARO〉月見肉そば(温) かっこいいステッカーもいただいた

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