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選挙の開票所を見学した話

はじめに


去る2022年7月10日、参議院選挙が行われた。ここでは選挙の結果等については述べない。開票所を見学した話を備忘録として書いておく。

開票所とは、文字通り、各投票所で投じられた票を集約する場所である。

公職選挙法には以下のように定められている。

第六十四条 市町村の選挙管理委員会は、予め開票の場所及び日時を告示しなければならない。

第六十九条 選挙人は、その開票所につき、開票の参観を求めることができる。

要するに「開票所の場所は事前告知され、誰でも見学できる」という事である。

概ね各自治体のホームページに一覧で掲載されており(自治体名 開票所)などで調べられる。ただし、開票所の場所が毎回同じとは限らないため、必ずその回の選挙である事を確認すること。

注意しなければならないのは、第69条で「選挙人」と明記されている点である。つまり、自分が票を投じた選挙区の開票所しか見学できないという事である。どこの開票所でも自由に見学できるという訳では無いのである。

結論

この後は見学した時のメモの羅列なので、読みたい人だけ読んで頂ければ幸いである。結論から言えば

・開票所見学に来る人は極めて少ない
・必ず来る報道関係者の数だけを考えて見学場所・見学体制が設定されているように見受けられる
・もう少し開票作業を見学する人が増えるといいと思う
・開票作業開始は投票終了(20時)から30分~1時間ほど後となるため、実作業だけ眺める場合は必ずしも20時に来なくてもよさそう(※注)。また地域によるが、完全終了は深夜となる事もしばしばある。つまり最初から最後まで見ていると終電がなくなったり、翌朝に支障がでる可能性もある。見学時間には注意する。

(※注)後述するが、開票所見学自体が極めて認知度が低いため、諸々のトラブルを避けるためには、慣れないうちは20時前に来た方がよさそう

見学メモ

「開票場見物」にやってきた。会場は一般的な体育館をイメージして頂ければよい
入口付近に人が大勢(20人前後)おり、投票箱を運ぶ人員や、駐車場整理の人員と思われる。ひとまず見学についての動線を聞いてみるが、やはり「分からない」そう。
ひとまず、入口付近に居た担当者のような人に話しかけ「案内するまで待っててね」と言われたので待機する。

会場の外で整理にあたる人員は役目がひと目でわかるようにデカい名札(ゼッケンと言ったほうが近いかも)を付けている。しかしまだ投票時間内なのでやることがあまりないらしく、スマホ弄ったり時間を潰している姿も見える。

20時。急に動きが慌ただしくなる。係の人が来、見学の要件を満たしているか聞かれたので身分証を提示する。諸注意が説明の後案内されるのだが。

  • 写真撮影は控えて欲しい

との事であった。よって写真はない。

この時点で一緒に案内されたのは、新聞社の腕章をつけた報道関係者のみ。

会場内は100人を有に超える人々が三々五々待機している。

15分ほどすると最初の投票箱が到着。続々と箱がやってくる。箱と一緒に重そうな紙袋が運ばれ会場に並べられてくが詳細不明。後にコレは使用済投票権の束と判明した。

それと同じくらい。NHKの腕章をつけた人が10人くらい入ってくる。三脚を担いだ姿はまるで撮り鉄のような装備であるが、引率者一人を除けば女性であった。


その間にも投票箱は続々と運び込まれるので観察すると、紙が2枚張られて「封印」がされている。

場内について。黒い布が敷かれた卓球台ほどの机の上に、投票箱が2~3つ置かれており、それが幾つもブロックとして配置されている。
また卓上にはイチゴパック(の透明容器と全く同じ小さいかご)がたくさん置かれており、「白」「疑問」「他」などと書かれた紙が入っている。他には100円ショップで見かけるような大きいかごがあり、これはイチゴパックが丁度4つ並べて入る大きさ。

開票ブロック(メモ)



待っていると、マイクを通じて場内全体への説明がはじまり、開票開始後の諸注意が改めて提示された。主な内容としては・・・・

・ケータイ電話の通話禁止(マナーモードは可)
・筆記用具は指定物以外使用禁止
・ポケットに手をつっこむなど、誤解を招く行為をしてはいけない
など

諸注意のあと、担当者が10人くらいで投票箱に鍵がかかっているか確認をする。まるでドラクエのパーティみたいにゾロゾロと練り歩く姿が面白い。確認が終わると、別の場所に着席して待機していた「開票係」が移動する。各ブロックごとに10人前後。

合図その1、投票箱の鍵が一つ開けられる。しかし二重なのでこの時点ではまだ開かない。鍵回収。指示待ち。


時報が場内に流れはじめ、規定の開票時間となる。
合図とともに、開票箱を開けて表を卓上に広げる。ドバーッと、かなり雑な出し方であるが人間の数が多いので許される作業だ。投票箱はカラ確認のため外に出されてゆく。
しかし卓上に広がる票の数は、想像よりもかなり多く圧倒される。

近くではNHKのウォッチャーによるカウント(サンプル収集)が行われている。一人が脚立の上から双眼鏡で票を眺めながら名前を読み上げ、もう一人がそれを紙に書き起こす。紙には四角いマス目の表と候補者名が並び、読み上げごとにペンで斜線がしかれていく。表の中で、一人でも一定のカウント数に達したらを集計係に提出し、また数えてゆく。

放送局のウォッチャーの様子(メモ)



仕分けの様子。A3ほどのサイズの紙に名前が枠に囲まれて書かれており、そこに票を置いていく。諸注意もあり誰でも作業できるよう最適化されている。しかしなかなか票の数が減らない。。。むっちゃ多い、これで投票率低いのか…と思う。

仕分けセットのイメージ。大判の台紙を敷いて効率化していた

一定の数貯まると係の人が持っていく。しかし票の山が全然減らない。ところで、神奈川は「あさか」と「あさお」で名前がややこしいようで、「疑問」がそこそこな数積み上がっていた。

20分経過。まだまだ票は山になっている。ほぼ無言で黙々と作業してるのでザワザワザワと紙の動く音が支配する。NHKの双眼鏡読み上げの声がかなり聞こえる。

さらに少し経つと票はだいぶ整理されてきたが、今度は回収する方が間に合っていない。票が換気の扇風機で動かないくらいまで重なってた様は壮観である。ここで各ブロックから数人が離脱していく。点検?要員らしい。ある程度が束になった票を、座りながら数えていくような作業のようだ(遠くてあまり見えず)

ここからしばらく経過すると、票の山は仕分けられた。しかしこれは大まかな選別だけなので、ここから次の作業にまわされる。座りながら票を仕分けたりする様子が見えるが、やや遠くて分かりづらい。双眼鏡が必要。

最初の分類で「他」に分類された票のさらなる区分が始まる。いわゆる当選の見込みが薄そうな方々だろうか。こんどは枠の数は多いが全体の票数は少なく、わりとすぐ終わる。

場内の人数がかなり多いため、冷房は全く追いついていない。扇風機などが置かれているものの、持ち込んだ500mlのスポーツドリンクが1時間ほどでなくなるほどの環境。過酷である。一番近いのは「夏のコミケ」

作業自体はまだまだ続くようだが、明日の事もあるのでここで会場を離脱した。入退場は自由であった。

票のあれこれ

幸いにも肉眼で仕分けられる票の様子をみる事ができたので、気になったものを幾つか

▼白票が思ったより多い
何も書かれていない票を入れる人が思ったより多い。翌日、開票結果を確認し「投票者数-得票数」で計算すると、無効票は2.2~2.5%ほどであった(神奈川県の場合)
要するに100人居たら2人くらいは「白票」「候補者名以外を書いてしまう」等様々な理由で無効となっている。

▼二重線で訂正
これは見学してて一票だけ見る事ができた。用紙の枠内に候補者名が2人書かれており、片方に二重線が引かれているものである。この場合、二重線が引かれていない方が有効となる。

訂正イメージ


俄には信じられない話だが、投じる前の票をスマホなどで撮影し「~~さんに投票しました」と周囲に宣言する材料とする事があるらしい(そもそも、投票所内でのスマホ撮影自体が問題視される行為ではないのか……?)
これが自分の本意でない場合は、二重線を引いて書き直す事ができる。


▼何らかの介入が発生する余地はあるのか(私見)

一番発生しそうなものは「束ねた票が行方不明になる」というものであるが、投じられた数と合わなくなるので、実際に発生したら大騒ぎだろう。現に選挙後はミスがあった事が各地で報道されている。

おわりに


結局、この様子を見に来た、一般人は自分を含めて4~5人。他の方々はどこかの党の(?)開票監視の人々と思われるので、純粋な興味本位で来ていたのは自分ひとりという事であった。

そもそも「見学エリア」自体が必ず来る「報道関係者」のみを念頭に置いた作りと思われ、大人数が見学に押し寄せる事は全く想定されていなかった。もう少し興味をもつ人が増えればいいと思う。

会場内の人員の数を思うと「作業に関わった事がある人」の方が多いように思うが、自由な立場で見て損はないように思う。


最後に、当日の投開票作業に従事された皆様。大変お疲れ様でした。


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