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起泡のキホン

植物由来の洗剤 (非石油系・石鹸フリー) の奥ゆかしすぎる泡立ち。
その解決に一役買うのがアブラだなんて、ダークホースもいいところだった。



∥そもそも泡とは


洗浄の主戦力というより、汚れを浮かせ、洗剤のムダ使いを抑える補助効果が大きい。
なにより、むくむく起きてくる泡がもたらす本能レベルの至福ときたら…

不可欠じゃないけど、不必要ではない。
そんな狭間のスタンスで、植物由来の泡を究めていく次第であります。


∥泡の素は脂肪酸


泡のカギは油脂に含まれる脂肪酸にある。

$$
\begin{array}{l:c:c:c:l} 脂肪酸&泡立ち&泡持ち&泡質&洗浄力\\\hline\hline
\textbf{ラウリン酸}&◎&✕&大きい&冷水〜\\
\textbf{ミリスチン酸}&◎&△&細かい&温水\\
\textbf{パルミチン酸}&△&◯&細かい&50℃〜\\
\textbf{ステアリン酸}&✕&◯&‐&60℃〜\\\hdashline
\textbf{オレイン酸}&◯&◎&細かい&冷水〜\\
\textbf{リノール酸}&◯&◯&細かい&冷水~\\
\textbf{リシノール酸}&◎&◯&大きい&なし\\
\end {array}
$$

$$
\begin{array}{r}※上部:飽和脂肪酸,下部:不飽和脂肪酸
\end{array}
$$


実際にさまざまなオイルで試した結果、『ココナツ洗剤』には不飽和脂肪酸の方が合うような感触。

【参考】
毎日使うセッケン、泡立ちや汚れ落ちに影響を与えるものは?

汚れを味方に? 肌にやさしい“賢すぎる洗浄剤”の正体


∥推しオイル


◼️米油

$$
\begin{array}{l:r:c:c:c:l}脂肪酸&\%&泡立ち&泡持ち&泡質&洗浄性\\\hline\hline
ミリスチン酸&0.3\\
パルミチン酸&16.2\\
ステアリン酸&1.8&\\\hdashline
\textbf{オレイン酸}&\textbf{41.4}&◯&◎&細かい&冷水〜\\
\textbf{リノール酸}&\textbf{37.5}&◯&◯&普通&冷水〜\\
\end {array}
$$

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胚芽ぬか油、玄米油も同じもの。
ほどよくサッパリと洗う泡
他のオレイン系オイルに比べ、芯のある泡を作る。
組成バランスがいいのか、あるいは脂肪酸以外の成分が関係するのか…?


◼️白ごま油

$$
\begin{array}{l:r:c:c:c:l}脂肪酸&\%&泡立ち&泡持ち&泡質&洗浄性\\\hline\hline
パルミチン酸&8.8\\
ステアリン酸&5.3&\\\hdashline
\textbf{オレイン酸}&\textbf{39.2}&◯&◎&細かい&冷水〜\\
\textbf{リノール酸}&\textbf{45.8}&◯&◯&普通&冷水〜\\
\end {array}
$$

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焙煎されてない無色透明のオイルで、セサミオイルとも呼ばれたり。
しっとり感を残して洗う泡で、芯もある。
米油といい、土着のものを見直すマクロビオティック身土不二はあるのかも。


◼️キャスターオイル (ひまし油)

$$
\begin{array}{l:r:c:c:c:l}脂肪酸&\%&泡立ち&泡持ち&泡質&洗浄性\\\hline\hline
パルミチン酸&1.0&\\
ステアリン酸&0.7&\\ \hdashline
オレイン酸&3.1\\
\textbf{リシノール酸}&\textbf{89.6}&◎&◯&大きい&なし\\
\end {array}
$$

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洗浄力はない代わり、大きな泡と保水ベールで肌を包む潤す泡
ただし、入りすぎるとまとわりつくので注意。


∥敬遠オイル


『あわとむし』が目指す泡には不向きな油脂たち。


◼️ココナッツオイル

$$
\begin{array}{l:r:c:c:c:l}脂肪酸&\%&泡立ち&泡持ち&泡質&洗浄性\\\hline\hline
カプリル酸・カプリン酸&13.9\\
\textbf{ラウリン酸}&\textbf{47.0}&◎&✕&大きい&冷水〜\\
\textbf{ミリスチン酸}&\textbf{18.0}&◎&△&細かい&温水\\
パルミチン酸&9.5\\
ステアリン酸&2.9&\\\hdashline
オレイン酸&6.9\\
\end {array}
$$

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儚く刺激的で打ち上げ花火みたいな泡。
その上、オイル自体が夏に液状化して洗剤のトロみもろとも奪うし、冬はバター並みに固まって融かす手間が出るし…
気候さえ合えば、引く手あまたの才なのに。



■オリーブオイル

$$
\begin{array}{l:r:c:c:c:l}脂肪酸&\%&泡立ち&泡持ち&泡質&洗浄性\\\hline\hline
パルミチン酸&9.8\\
ステアリン酸&3.2&\\\hdashline
\textbf{オレイン酸}&\textbf{73.8}&◯&◎&細かい&冷水〜\\
リノール酸&11.1\\
\end {array}
$$

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オレインに振り切りすぎなのか、かぼそく終わる線香花火の泡。
石鹸界では他のオイルとのシナジーもあるにせよ、もっと実力発揮できてるような…



■植物バター
シア、カカオなど。総じてステアリン酸が多く、起泡には貢献しない。

そもそも、リッチな保湿力のバターが最も真価を発揮するのは、リンスオフ洗い流すものよりリーブオン肌に留まるものじゃないかと思っている。

【参考】
  素材ショップ『オレンジフラワー』


∥どのように使う?


もともと泡ヂカラの強い石油系や石鹸系の洗剤には要らぬお世話かと。

ココナツ洗剤』 (界面活性率15%) と類似の製品であれば、総量の2%までのオイルを加えると、何かしらの変化はあると思う。

経験上、洗浄力と肌への優しさを両立できるのは17%前後と感じていて、オイル+2%の範囲なら洗浄力を落とすことはないはず。
ものすごーく雑な理論。


∥ちなみに脂肪酸以外では…


界面活性成分とタッグを組む脂肪酸ほどの泡ヂカラはないけれど、水のみで泡立つサポニンがある。
ウールやシルクなどの動物繊維も洗える優しげ泡。

サポニンの単体入手は難しいため、含有豊富な植物ごと用いる。
ムクロジ (別名ソープナッツ)、シカカイ(ソープポッド)、サイカチの乾燥果実をまるごとだったり、パウダー化したものだったり。

ただ 、サポニンは魚毒成分でもあり、乱用には注意。

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