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振り返る視点 多摩川の風景

赤駒を 山野に放し 捕りかにて
多摩の横山 徒歩ゆか遣らん

万葉集 防人椋橋部荒虫の妻宇遅部黒女の作


多摩川を越えて少し行くと多摩ニュータウンまで続く多摩丘陵がある。
最近ではよみうりランド付近の宅地化が進み、多摩川から見える景色が変わりつつある。

多摩丘陵には防人の見返りの峠という場所がある。
東国から防人として太宰府へ送られる兵士は、多摩川を越えて多摩丘陵を越えると来た道を振り返っても自らの故郷を見ることができなくなる。
関東平野の西側に横たわる最初の高地が多摩丘陵であり、歌に詠まれる多摩の横山だ。

多摩川を眺める時、僕は川の西側から東京を眺めることが多い。
川を隔てることで少し落ち着いて東京を見ることができるし、そもそも西側から見た風景の方が写真映えするからということもある。
でもやっぱり心のどこかに遥か昔の防人の気持ちに感じるところがあって、“振り返る視点”というものを意識してしまっているんだろう。





そんな多摩川をアイスコーヒーを飲みながら眺めている。
最高気温が25度を越え、自転車を走らせてきたシャツに汗が滲む。
平日の昼間に川沿いのサイクリングロードを走る人たちは普段どんな仕事をしているんだろう。
有給休暇かな、それとも平日公休の仕事だろうか。




新しく加わった家族がまだ外出できないので、自然と室内撮りが多くなる。
部屋の中でシャッターを切るには50mmでは画角が狭すぎるので、新たに35mmのレンズを手に入れた。

SIGMA 35mm f2 DG DN | Contemporary

適度な開放f値とコンパクトなボディ。そしてIシリーズのやり過ぎな程のビルドクオリティ。
窓から入る光をシルキーに捉えるレンズは、まさに今の僕に必要な画を見せてくれる。


さて、息抜きもできたし、そろそろ家に戻ろう。

帰ろうと思えば帰れる今の世を当時の防人たちは想像できたろうか。
少し寄り道してベーグルを買って帰った平日の昼下がりの話。

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