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終業式ミッション

何月だ?

やけに天気が良くてお日様カンカン照り。
たしか麦わら帽子に半袖で幼稚園バスから降りた記憶があるから夏だったと思う。

幼稚園バスから降りて家までは、大人で徒歩7分くらいの距離。幼稚園生であれば10分くらいかな?
坂道が急なので15分はかかるだろうか。

朝、母に『今日はひとりで帰ってこれる?おかあさんむかえに行かなくて大丈夫?』と聞かれた気がする。

『だいじょうぶ!』

最近、なんでもひとりでやってみたい時期だった。
ひとりで帰るというミッションを任され
ワクワクドキドキ。
ひとりで帰るのは初めてだ。

道はわかるよきっと!だいじょうぶ!

ワクワク。

ついに帰り時間。

終業式は今まで作った作品、お絵描きした絵、お道具箱やら冊子やら覚えてないがやたらと沢山の荷物を持たされる。
この日、いつもの式後よりも荷物が重たく感じていた。

こんなにたくさんだったっけー?

だが今日はひとり。

身体よりも大きな荷物を引きずらないように
かろうじて持ち上げながら歩いてく。

おてんきいいなー。

開けた道に出てから母が歩いてきていたのが見えた。母は私を見つけると1度立ち止まり
にこっとしてまた歩き出したのが、遠くからもわかる。

あー! おかあさん、きちゃったよー。。

と、ミッション遂行が出来ずちょっとがっかりした。

母と合流し、『荷物多くてたいへんでしょう』
とまたにこにこして私から荷物を取り、右手が空いた。

空いた手が寂しくて、母の手を掴み、手を繋いだ。
私はいつも自分から手を繋ぎに行く。
働き者の、痩せているけれど大きい母の手がすきだった。

左手の幼稚園バッグを見て思い出す。

『あのねー、今日せんせいが幼稚園バッグ、おかあさん作ってくれたの凄いねー!ってほめてくれたの』

喜んで欲しくて今日あったことをお話しした。
母は刺繍が趣味で、上手だ。
幼い私でも上手なのがわかる。
裁縫物は作って欲しいと言えばなんでも作ってくれた。

幼稚園バッグは黒地の布に、3種類のチューリップの刺繍がびっちりとしてある。たしか赤、黄、オレンジのチューリップだったと思う。

黒がバッグのベースのため大人っぽく
わたしはちょっぴりそれが恥ずかしかった。

だけれど褒められ、お気に入りになった。

にこにこしている母。
手を繋いでくれる母。

迎えにきてくれた時がっかりしたのが後ろめたくなった。

黒くて刺繍の入った幼稚園バッグ。


春。北海道の空が青くなる頃
いつも思い出す夏の風物詩。



あの刺繍バッグがまだ残ってるのか聞いたことがあるけれどもう捨てちゃったみたいで、貰っておけば良かった〜んと思ったことがある。
わがまま娘でやんちゃだが外では引っ込み思案で控えめ、
輪に入るのが苦手だった。
その分家では元気いっぱい、お話し大好きっ子。
4人兄弟で。私は兄弟の中で1番の愛を母から貰っていたと思う。上3人の幼い頃を知らないけどね。
今日もありがとうございます!

追伸

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