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風船とばす(3/11)

2024年3月11日14時46分、荒浜にて黙祷。

はっきり言って、"Hope for project" に呼んでもらわなければ、なんだかんだと忙しさにかまけて3月11日に仙台の地にいることはなかなか叶わなかったと思う。こうやって書きながら、結局は行動していないだけの自分を本当に恥ずかしく思っている。後ろめたさがすごい。「世間に対して善行をしていない」みたいな見栄のようなそれではなくて、自分自身の問題としての後ろめたさ。

得体の知れないSNSでの突発的遭遇事故を除けば、私の知る人々は推し並べて優しく「いやいや、世武さんは忙しいから」とフォローを入れてくれるであろう。でも、行動しなかった事に正統な理由なんて本当はなくて、ただ「やらなかったことを選択しただけ」なのだ。こういうのは、自分が一番よくわかっている。自分のことだから。

そんな私の背中を押してくれたのがHope for project(首謀は髙山氏)であり、去年初めて参加させてもらって今年も呼んでもらった。元々津波被害に遭う前の荒浜小学校にあったピアノは、現在、隣の小学校の転校生だ。その転校していった荒浜小学校の音楽室のグランドピアノが、今年の3月11日も荒浜小学校に戻ってきた。「戻ってきた」と言ったらお手軽なものだが、正確には、髙山氏の熱意と努力と各所への対話が、沢山の時間をかけてピアノを母校に連れてきてくれた。

つねまる(恒岡章)が急逝した直後の混乱の中で迎えた2023年3月11日から一年。時間経過の中で、私にとってこの日の「音楽の時間」(と名付けられている)の存在は結構変化していた。

最初に断っておくと、私は行動と決断スピードがかなり速いタイプなので、これは私だけの一年の心境の変化であり、人の数だけ歩みが違って当たり前。加えて、同じ人でも大きく考えが変わる一年もあるし、"我慢の時"な一年もあるだろう。それから、速いから遅いから良い悪いみたいな、そんなスピードによる評価は取るに足りなくて、自分が確実に一歩進めるやり方で、自分の声をちゃんと聴いてあげることが大切だと思う。

さて、そんなわけで。

「皆んなで小さく抱きしめあって、相手の鼓動を自分の身体で確認して、誰も置いてきぼりにしないことを近くで確認して、全員で困難を乗り越えたい」という気持ちで望んだ2023年。

でも今年は、「同じ場所で小さく抱き合うことから、もしかしたら少しずつ皆んな巣立って行くのかも知れない。ある人はこの場所を守る人、ある人は近くから見守る人、ある人は遠くへ行ったけれどこの場所がずっと好きな人、ある人はまだまだ小さく抱き合いたい人。物理的な繋がりに依存しない強い何かを、この場所で確かに感じたい。」そういう風に、最初に強く思った。

何度も何度もこの気持ちの是非を自分に問うたけれども、考えは変わらなかった。小さく抱き合って近くで確認したかったのは不安だったからだ。でも、私は自分がやらなければならないことを明確に持っている。それをやり遂げたいとも思っている。この変化をとても誇りに思う。「誰も置いてきぼりにしないことを近くで確認して、全員で困難を乗り越えたい」だったものが、「誰も置いてきぼりにしない社会を作れる力をつけて、全員で困難を乗り越えたい」に変化したことを実感した。

その為にも、今年(今日)荒浜小学校に私は絶対にいたかった。それが間違っていないことを、自分があの場所で、あの場所に帰ってくる人たちの中で、あのピアノで演奏して確認したかったんだと思う。

下手な説明からは汲み取るのが難しい切実な想いを、この文章の長さから感じ取ってもらえたら嬉しい。(質より量かよ、すみません)

「相変わらず大袈裟だな」と言われそうだが、本当にそんな気持ちでいたので、最後の最後まで演奏曲も悩んでいた。(本来、本番のセットリストで何日間かは通し練習をしたいので、数日前には揃っていることが多い)

結果的に、あの音楽室に立った時「私は、この場所に自分の音楽を寄せていくのではなく、この場所と対等に自分の音楽を鳴らすタームにきている」と確信したので、そういう演奏の時間にした。(通し練習していなかったせいで、持ち時間は少し伸びてしまったが)

最後には、あいごんさん、きよしさん、ハンガーさんと「風船とばす」という曲ができて、これは主催の髙山さんへのプレゼントとしてやりたかったことだが、結局一番嬉しかったのは私かもしれないなと思った。同じ業界なのに普段すれ違うことすらなかなかない先輩ミュージシャンたちだけれど、演奏が始まればそんなのは関係なかった。音楽ってすごいよな。あいごんさん、きよしさん、ハンガーさん、ありがとうございました。

これからまだまだ生きていくつもりだ。死ぬのは怖い。
だから、誰も置いてきぼりにしない社会を作れる力をつけて、全員で困難を乗り越えたい。世界の色々な困難に。(残念ながら、私自身が困難の原因を作っているものも少なくないが)その為に私は修行の旅に出たいと、改めて強く思った。

ありがとう、荒浜小学校!あんた、最高だぜ!

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